南九州神話旅#9〜日本で唯一 海幸彦の小さな神社
鵜戸神宮を後にし、宮崎で最後に見ておきたかった潮嶽(うしおだけ)神社へ向かいました。
ここは日本で唯一、海幸彦を主祭神としてお祀りしている神社なんですが、豪華絢爛な山幸彦ゆかりの青島神社や鵜戸神宮と比べると、あまりにも小さくて質素です。

海幸彦と山幸彦の神話とはこうです。
海幸彦(兄)は魚や貝など海の幸をとることを生業とし、山幸彦(弟)はイノシシなどの山の幸をとっては暮らしていました。
ある日、山幸彦が兄に「たまには道具を交換しようよ」と持ち掛けます。兄は気が進まなかったが、弟の申し出を受け入れます。ところが、山幸彦は兄から借りた大切な釣り針を海でなくしてしまいます。山幸彦は代替物を返しますが、海幸彦は「貸したものを返してくれ」と突き返します。
海辺で途方にくれていた山幸彦は、海の神の使いの助言で、海底の宮殿に向かいます。そこで海神の娘である豊玉姫と結婚し、楽しく暮らした後、海底で釣り針をみつけ、地上に戻って、兄に釣り針を返すわけですが、そのとき、呪いのことばとともに返却するんです。さらに、兄を海でおぼれさせようとした後、助けるんですね。
最終的に、海幸彦は山幸彦に服従を誓い、自らは磐船で潮嶽の里に流れ着き、この地をおさめ、隼人の祖となったとされています。
隼人は朝廷で犬吠えの儀礼を行うとされますが、潮嶽神社の苔むした狛犬は、獅子ではなくて犬なんですね。

そもそも山幸彦が、しぶる海幸彦に道具を交換しようと無茶な主張をしたのに、兄が大切にしていた釣り針をなくすというとんでもない失態をおかした。なのに代替物を渡し、これでいいだろと。唯一無二の宝物の代わりなどあるはずがないのにです。
海幸彦が釣り針なしで魚もとれない状態にしておきながら、自分は海神の娘と懇ろになり、アハハオホホと楽しく暮らす。
挙句、釣り針を返す際に兄に呪いをかけるという暴挙に出る。
海幸彦は海で暮らせなくなり、山里でひっそりと余生を過ごしたんですよね。
自分が海幸彦だったら、こんな理不尽な仕打ちに納得できない。ひとを傷つけ、自分がしでかしたことの深刻さも理解せず、第三者の助けでぬくぬく暮らし、最後は自分が傷つけたその相手に詫びるのでなく呪いをかけるって意味不明です。
山幸彦の豪華な神社のあと、海幸彦の質素すぎる神社に来ると、あの神話の理不尽さがますます胸に迫り、もやもやした気持ちになりました。山幸彦って天皇の祖先ですよね。
海幸彦を慕う地元の方々に、今も大切にされているこの小さな神社が、どこよりも深く強烈に印象に残り、隣接する社務所兼神主さんのお宅で、海幸彦のお守りを購入したのでした。

海幸彦の神話を今に伝える神秘的な潮嶽神楽にも、いつかきっと、行ってみたいと思っています。
