#28 掘進時間8時~22時は、東京都環境確保条例違反?
善福寺公園は、桜吹雪が舞う3月下旬、4月上旬の週末、恒例の満開の桜の花見に多くの人々が訪れ、賑わっていました。



しかしながら、2026年4月7日の杉並区ホームページの「東京外かく環状道路(外環本線)」の「本線シールドトンネル工事の進捗状況・現在位置について」でシールドマシンの現在位置を確認してみますと、無情にも善福寺公園下の池の目と鼻の先にある八幡橋に着々と近づいていました。

八幡橋には、振動・計測機が設置してありました。計測機の監視員にどこをシールドマシンが掘進しているのか聞いてみましたが、すぐには回答できず、外環道工事に関する質問があった場合の連絡先が記載されたチラシを渡されました。

八幡橋の辺りは、近くには杉並区立桃井第四小学校や井草八幡宮、善福寺公園などがあり、家が密集している住宅街となっています。

シールドマシンの掘進時間帯が、午前8時から午後10時までになっています。住宅が密集するこの地域には、子どもや高齢者も当然のことながら暮らしています。就寝時間も、働き盛りの世代とは異なり、午後8時や9時という住民も含まれていると思われます。
この外環道の予定地のそばに40年以上暮らしている80代の杉並区の住民に、シールドマシンの掘進時間帯について聞いてみました。
「もう(シールドマシンが)来ているの。。。朝8時から夜10時まで? 遅いわね。。。この前、そこにいた人に聞いたら、20時までって言ってたけど。それでも遅いと思った。」
「せいぜい、遅くても20時。夜22時は、遅すぎるでしょ。普通、一般的な工事は、9時から午後5時まででしょ。なんか、急いでいるのかしら、、、」
地下40メートルより深いところにシールドマシンでトンネルを掘削することについては、
「地下を掘ること自体が、自然を破壊しているでしょ。。」
東京都の建設騒音・振動の規制等を定めた法律及び条例には、どのようなものがあるのでしょうか? 以下が、その法律及び条例になります。
・「騒音規制法」
・「振動規制法」
・「都民の健康と安全を確保する環境に関する条例」(以下、「環境確保条例」)
外環道工事は、この環境確保条例の適用対象となっています。
建設騒音・振動被害に係る条項について、確認してみました。
条例第123条 すべての建設工事に係る努力義務
すべての建設工事を行う者は、当該工事に伴い発生する騒音・振動・粉じん・汚水(公共用水域に排出するものに限る)により、人の健康または生活環境に障害を及ぼさないよう努めなければなりません。
条例第125条 指定建設作業
条例で規定された指定建設作業では、騒音・振動について勧告基準(作業時間の制限、騒音・振動の基準値)が定められています。勧告基準は、法律の指定地域内で指定建設作業を行う場合に適用されます。なお、指定建設作業について届出は必要ありません。
具体的に、どのようなルールが定められているでしょうか?
環境確保条例では、第136条において、作業時間・日数・曜日などの制限を課しています。
1号区域と2号区域で規制内容が少し違ってますが、杉並区の現在シールドマシントンネルのある場所は、第一種低層住居専用地域で、1号区域になります。1号区域の規制内容は、以下の通りです。
作業時間帯 7時から19時まで
音源の在する敷地と隣地との境界線における音量
6~8時 40デシベル
8~19時 45デシベル
19~23時 40デシベル
23~6時 40デシベル
振動源の在する敷地と隣地との境界線における地盤の振動の大きさ
8~19時 60デシベル
19時~8時 55デシベル
作業時間 1日あたり10時間以内
同一場所で連続6日以内
作業日 日曜日・休日でないこと
掘進時間が22時までというのは、明らかに条例が課している作業時間を違反していますね。
実は、環境確保条例では「指定建設作業について届出は必要ありません」(条例第123条)となっており、事業者の届出は義務にはなっていません。
この条例遵守の役割を担っているのが自治体になりますので、もし何かあったら、地元の自治体にすぐ問題を伝えて、解決してもらいましょう。
また、環境確保条例においては、事業者の周辺生活環境への配慮義務が課されています。
東京都は、事業所に対し、建設作業に伴って発生する騒音・振動に関する法律、条例の規制等のあらましに関するしおりを作成しています。
東京都環境局の「建設騒音・振動防止のしおり」によりますと、「建設作業騒音・振動公害の未然防止について」において、以下のように事業者に対して注意喚起をしています。
建設作業に伴う騒音・振動はレベルも高く、周辺への影響も大きいため、事前の対応をおこたるとトラブルに発展する場合もあります。
このため、施工業者及び工事発注者の方は、届出の実施、基準の遵守だけでなく、建設工事に伴い発生する騒音・振動により、人の健康または生活環境に障害を及ぼすことがないように、次の点に十分配慮して工事を行ってください。
また、東京都は、事業者に対して、周辺住民に対しての対応について重要な点を指摘しています。
・工事実施前に工事現場周辺の住民に対して、工事の概要、作業時間、防止対策などについて十分説明を行ってください。
・工事現場には、住民からの苦情の窓口となる工事現場担当者の氏名、連絡方法を表示するようにしてください。
・苦情が発生した場合は、速やかに誠意をもって対処して下さい。
また、東京都は、事業者に対して、事前の防止対策についても示しています。
・工事の実施に当たっては、工事現場の周辺状況を考慮し、適切な工法、機械を選定して下さい。
・極力低騒音・低振動工法を採用し、また低騒音型・低振動型建設機械及び排出ガス対策型建設機械を使用するようにして下さい。
・工事現場周辺の状況により、防音パネル、防音シート等の防音措置を講じて下さい。
この環境確保条例は、環境保護の世界的な潮流に合致しており、世界に誇れるものだと思われますが、しかし、法的拘束力は期待できないようです。東京都の条例ですが、運用は地元自治体となりますので、各自治体によりばらつきが生じる可能性もあります。競争にさらされている事業者の世界では、条例を遵守している誠実な事業者が競争に負ける、などという本末転倒な状況が生まれているかもしれません。
地元住民の生活や環境の保護の実現には、環境確保条例を遵守していない事業者に課税するなど、罰則規定を設けるといった措置も必要かもしれません。
東京都は、2018年2月に、「東京都環境基本条例」を公布し、以下のように謳っています。
私たちの住む東京では、歴史的地域的特性を生かしながら人間性豊かな都市と快適な都市環境をつくる努力が重ねられてきたが、人口の集中及び産業の集積が進み、都市活動が活発化したことに伴い、かつてない環境への負荷がもたらされてきている。
もとより、すべての都民は、良好な環境の下に、健康で安全かつ快適な生活を営む権利を有するとともに、恵み豊かな環境を将来の世代に引き継ぐことができるよう環境を保全する責務を担ている。
また、都民の福祉の向上を図ることを使命とする東京都は、現在及び将来の都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で欠くことのできない良好な環境を確保する責務を有するものである。
東京都は、これまで、環境行政の基本として、東京における公害を防止絶滅し、自然の破壊をくい止め、その回復を図るための施策を積極的に進めてきた。今後、さらに、環境への負荷の少ない都市を実現し、これを将来の世代に引き継ぐため、都民とともにより総合的計画的な取組を行うことが必要である。
このような認識の下に、人と自然とが共生することができる豊かな環境を保全し、創造するとともに、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な東京をつくりあげていくために、ここに、この条例を制定する。
※ 太字は引用者による。
この条約の基本理念及び目的は、第三条において、以下のように定められています。
①都民が健康で安全かつ快適な生活を営む上で必要とする良好な環境を確保
②この良好な環境を将来の世代に継承
③環境の保全は、人と自然とが共生し、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能な都市を構築すること
④地球環境の保全は、すべての事業活動及び日常生活において推進
大深度地下法によって住民の合意のないなか、日本一巨大なトンネルを子供や高齢者も多く暮らす、住宅密集地区の直下を掘削が行われ、その時間帯が、東京都の条例の定めている時間を違反しているとなると、この事業の公共性に疑問を抱かざるを得ません。
