『桜の花をみるたびに思い出す』 心が泣いてしまう瞬間
介護が教えてくれたこと
離婚をきっかけに、「どこでも、何歳になっても働ける仕事を」と思い、ヘルパー2級講座を受講しました
それから約20年。この仕事で出会った人たちが、私に数えきれないほどのやさしさを渡してくれました。
今、私は次のステージへ歩み出そうとしています。
もらったやさしさを、今度は別の場所で、私にできるかたちで届けていきたい。
そんな気持ちを持って。
介護職四年目、転居にともない新しい職場に変わりました。
知らない土地でしたが、仕事探しに困ることはありませんでした。介護の仕事は、いつもどこかで必要とされています。
その職場では、最初は少し居心地の悪さもありました。でも、時間が経つにつれて、一人ひとりの温かさが見えてきました。
当時、認知症の対応が十分とは言えない場面がありました。私は認知症実践者研修を修了していたので、対応について尋ねられることが増えました。特別なことをしたわけではありません。ただ、自分が大切にしている関わり方を伝えただけです。
ある日、主任との面談で言われました。
「居てくれるだけで助かっています。ありがとうございます。」
その言葉は、今でも心の奥にあたたかく残っています。
あの職場で出会えた人たちは、私の宝物です。
そして、その場所で出会ったYさんのことを、私はずっと。覚えています。
70代前半。左片麻痺があり、末期がんでした。
痛みが強く、時に暴言や手が出ることもあると聞いていました。
デイケアでは、入浴や食事以外はほとんどベッドで横になっていました。
ナースコールが鳴ると、私はすぐに駆けつけました。
ただそれだけのことです。トイレへ誘導し、何気ない会話をする。
タクシーの運転手をしていたこと。
若い頃、奥さんを寂しがらせてしまったこと。
そんな、どこにでもあるような話でした。
不思議と、私に対して荒れることは一度もありませんでした。
ある秋の日、Yさんが手招きをしました。
「もう長くないんだと思うんだ。今までここに来るだけで精一杯だったけど、今度の行事、ドライブに参加してみようと思うんだ。そのとき、一緒にいてくれないか?。」
担当の都合で難しいかもしれないと伝えましたが、
後日、「主任に頼んだから」と、少し照れたように言われました。
主任は静かにこう言いました。
「行ってあげてください。その日はずっと側にいてあげてください。誰のところにもいかなくていいから、Yさんだけについてあげてください。」
その日は、よく晴れていました。
初めて参加するドライブ。
マイクロバスの後ろに並んで座り、Yさんはずっと穏やかな笑顔でした。
途中で買ったアイスクリームを、なぜか私が食べさせました。
右手で持てることは知っていました。(左麻痺)
それでも、自然にそうしたいと思ったのです。
Yさんは、子どものように嬉しそうでした。
その後、Yさんの体調は次第に悪くなり、自宅療養となりました。
二か月ほど経った朝、主任から告げられました。
「今日、Yさんが来られます。最期の望みが、ここでお風呂に入ることだそうです。特浴を勧めましかが、どうしてもディのお風呂に入りたいそうです。」
職員全員で協力し、Yさんの最後の入浴介助が行われました。
湯船に浸かったとき、同僚が小さな声で言いました。
「行ってあげて。mimiさんに会いに来たのだから。」
そばに行くと、Yさんは穏やかな声で言いました。
「どうしても、最期はここに来たかったからね。」
その二日後、Yさんは旅立たれました。
最期の望みが「デイケアに来ること」という方は、きっと多くはありません。
そして、それを叶えようとする職場も多くはないかもしれません。
この仕事が好きでいられるのは、
これまで関わらせてもらった方々のおかげです。
介護は大変でしょう、とよく言われます。
汚い仕事だね、疲れるでしょう、と言われることもあります。
たしかに、楽な仕事ではありません。
体も使いますし、気持ちが揺れることもあります。
けれど、それ以上に、いただいているものの方が大きいのです。
「お世話になって、ありがとう」と言われることがあります。
でも、本当は私の方が、お世話になっています。
元気に働かせてもらっていること。
人生の話を聞かせてもらえること。
最期の時間にそばにいさせてもらえること。
どれも当たり前ではありません。
私は、たくさんの人に支えられ、育ててもらい、
癒されながらここまできました。
感謝しかありません。

ずっと、介護が好きでいられたのは、多くの人の支えがあったから。その中でもYさん、あなたに出会えたこと・・・忘れません。
「Yさんへ」
朝、玄関で装具をつけながら 「おはようございます」に「おう」と返してくれた。
車いすに乗って
奥さんに、後ろ姿でバイバイする手。 いつも、変わらなかった。
どんなに痛かっただろう。 私は知らなくて、ただ普通にしていた。 でも今わかる。 わからないなら普通にしてくれ、と あなたは思っていたのかもしれない。
「もう、長くないと思うんだよね。 一緒にいてくれないか。」
その言葉が、ぐっさり胸に刺さった。 命がわかってる。
それでも照れながら言う。
晴れた空の下、バスの後ろの席。
あなたの穏やかな笑顔が 窓の光の中にあった。
アイスクリームを、自然に食べさせたかった。
あなたが子どものように喜んでくれて、 私に、この仕事が好きだとわからせてくれた。
「どうしても、最期はここに来たかった。」 なんて返事していいかわからなかった。
でも、「ありがとう」が聞こえた。私も、ありがとう。
お世話したのは私じゃない。 あなたが教えてくれたのだ。
この仕事のやさしさを。
人と人が寄り添うことの意味を。
Yさん、ありがとう。
あなたに出会えたから、 私はずっと、ここにいられた。
こうして思い出すたび、泣いてばかりだよ。
「桜の花一緒に見たかったね」
いいなと思ったら応援しよう!
貰ったことが無いので、実感一度してみたいです。応援お願いします。頂いたチップはクリエーター活動費に使わせて頂きます。