踵のトゲは消えない。でも痛みは消えた。
朝の第一歩が、怖い。
そんな日が来るなんて、思ってもいませんでした。
布団から足を下ろした瞬間、
踵に針が刺さったような激痛。
声も出ない。
立てない。
ただ、怖い。
「このまま一生、治らなかったらどうしよう」
痛みよりも、その不安のほうが大きくなりました。
それが、一年前の二月です。
それから私は、朝が怖い人になりました。
布団の中で足首をそっと動かし、指を曲げ伸ばししてから、ゆっくり体を起こす。準備体操をしてからでないと立てない毎日。それでも、床に足をつける瞬間は緊張しました。
仕事は立ちっぱなし。
スタッフが辞め、仕事量も増えていました。
座る時間なんてありません。
「どうにかしなきゃ」
焦りばかりが募りました。
YouTubeで「足底筋膜炎」と検索しては、出てきた動画を片っ端から試しました。足底筋膜炎専用と書かれた商品を見つければすぐ購入。インソールだけで五万円以上は使ったと思います。
「これで治るかも」
「今度こそ大丈夫かも」
期待しては、落ち込む。その繰り返しでした。
整体にも通いました。先生はとても親切で、一生懸命施術してくれました。通ったあとは少し楽になる。でも、数日すると戻る。むしろ足裏が熱を持つような感覚が残ることもありました。
ある日、公営施設で入浴券を買おうとしたとき、足元の点字ブロックに悪い方の踵を強くぶつけました。
「痛い!」
その瞬間、嫌な予感がしました。
翌日から痛みは倍増し、数メートル歩くのもやっとになりました。
そこでようやく整形外科を受診しました。
「踵骨棘があります」
レントゲン写真を見せられ、そう言われました。
踵にトゲのような突起ができている。
頭が真っ白になりました。
トゲ。
骨にできたトゲ。
「もう治らないのでは?」
帰宅後、必死に調べました。
足底筋膜が長期間引っ張られることで、骨にカルシウムが沈着し、棘のような突起ができることがある。けれど、トゲがあっても痛くない人もいる。トゲがなくても痛い人もいる。痛みの多くは炎症によるものだと知りました。
トゲがある=一生痛い、ではない。
その言葉に、少しだけ救われました。
それから私は、やめることを決めました。
強く押すこと。
やりすぎること。
焦ること。
整体も、先生に申し訳ない気持ちはありましたが通うのをやめました。
「今は刺激しないほうがいい」
自分の感覚を信じることにしました。
そんなとき、YouTubeで「足底筋膜炎専門ちゃんねる」に出会いました。鍼灸師の稲村先生の動画です。最初は半信半疑でした。でも説明は理論的で、何より「全部やらなくていい」「痛いところだけが原因じゃない」と言ってくれたことに救われました。
私は動画の中から、自分に必要だと思うことだけを選びました。
全部やらない。
無理をしない。
強く押さない。
それまでの私は、早く治したい一心で、きっとやりすぎていたのだと思います。
靴も見直しました。幅広だから良いと思い込んで履いていたニューバランス。けれど、試しにアシックスのゲルファンウォーカーに変えてみると、足の安定感がまるで違いました。後日ニューバランスに戻すと、足裏がじわっと痛み、疲れました。
「みんなが良い」と言うものが、自分に合うとは限らない。
それも学びました。
整体をやめてから約四か月。私が続けたのは、とても小さな習慣です。
湯舟の中で、足をやさしく撫でる。
足裏をさする。
指を一本ずつ動かす。
ふくらはぎを揉まずに横に引っ張って刺激する。
片足五分ほど。痛い右足だけでなく、両足とも。
強く揉まない。
ただ、労わる。
それを、ほぼ毎日続けました。
気がつけば、朝の恐怖は少しずつ薄れていました。
そして今。
あの激痛が嘘のようになり、素足で歩けてます。
トゲは消えていません。一度、出来たものは消えないそうです。
でも、痛みは消えました。
もし今、朝の第一歩が怖いあなたがこれを読んでいるなら。
インソールを何個も買ってしまったあなたなら。
「このまま一生?」と不安でいっぱいのあなたなら。
焦らなくていい。
やりすぎなくていい。
炎症は落ち着くことがあります。
身体は回復する力を持っています。
私を救ったのは、
自分の感覚を信じること。
毎日少しだけ続けること。
そして、信頼できる情報に出会えたことでした。
踵のトゲは消えない。
でも、痛みは消えることがある。
あの頃の私のように、
朝を怖がっている誰かに、届きますように。
画像は、Gemini作成
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