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晩年夫婦――許していないまま隣にいる

長い時間を共に過ごしたからといって、
すべてが美しい思い出になるわけではない。

むしろ、最後まで残るのは――
飲み込んだままの、感情のほうだったりする。

晩年の夫婦には、歴史がある。


「お互いさま」
その一言では片づけられないのが歴史だ。

感謝もある。
確かに、この人がいたから乗り越えられた日もある。

けれど。

一緒に生きてきた時間の中で、

ひとりで泣いた夜が
一度もなかったとは言えわない。

隣にいるのに、孤独だった瞬間を、
体は覚えている。

何気なく言われた一言。
こちらは一生忘れないのに、
相手は、言ったことさえ覚えていない。

その程度の重さだったのかと
あのとき、知ってしまった。

それでも、時間は流れる。

怒り続けるには、人生は長すぎて
壊すには、人生はもう短い。

だから人は

何もなかったように振る舞うことを覚える。

許したわけではない。
忘れたわけでもない。

ただ

言わなくなっただけだ。

言ったところで、戻らないことを知ってしまったから。

晩年夫婦の静けさは

理解し合えた結果ではなく

踏み込まないことで守られている均衡なのかもしれない。

それは、諦めなのか。
それとも、優しさなのか。

自分でも、もうわからない。

それでも

隣にいる。

どうしてなのかと考えても
明確な答えは出ない。

愛情なのかもしれない。
情なのかもしれない。
それとも、

ここまで一緒に生きたという事実を
今さら無かったことにできないだけなのかもしれない。


晩年夫婦は、
すべてを許した者同士ではない。

許せなかった記憶を抱えたまま、
それでも隣にいることを選んだ者同士だ。

本音をすべてぶつければ
きっと壊れてしまうと知っているから・・・

今日も、

何も知らないふりをして、隣に座る。

それは、

愛の完成形ではなく、

壊さずに生き抜いた人間だけがたどり着く
ひとつの、静かな共存なのだと思う。

最後までお読みいただきありがとうございます。
あなたは――
最後に隣にいる相手に、
本当の気持ちを伝えますか。
それとも、伝えないまま隣にいますか。
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