平成に犬吠埼に行った女子旅の思い出
女子だけ四人で犬吠埼へ
36歳のお盆の時期に、女子だけ四人で犬吠埼に行ったことがあります。ガラケーの時代で、もう15年くらい前のことです。
若い頃の私は、クセが強いブティックの販売員さんの先輩から可愛がられるタイプでした。
20代からお付き合いがある私にとっては、36歳になってもブティックのお姉様方は、怖い先輩。
お姉様たちが転職して、他のブランドに勤めても、たまに呼ばれては集まる。楽しいけれど、敬語を使うし、席は下座、注文、会計は私。
30代で、舎弟キャラの女
「グラス、空いてますよ、次はどうされます?」
「サラダ、取り分けますね」
「ここ禁煙なんですよ。お手洗いの先に、喫煙スペースがありますよ」
「赤ワインにします?ワインリストもらいますね」
一緒に食事に行くと、私は注文係と、取り分け係、そして会計係。ものすごい後輩ムーブになります。
一番後輩だけど、奢ってもらうことはなく、しっかり割り勘。たまに「経費にしてよ」とタカられそうになることも。
ガラケーの時代、PayPayなんて便利なものはないから、先輩方の小銭で財布が膨れたり、面倒くさかった記憶もあります。
キャラが強いブティックお姉様の舎弟のような存在が、あの頃の私でした。
Nokiaのガラケーに先輩女子からメールが来ると、びくん!としたものです。ずっと付き合わないといけない愚痴や、突然の集合が告げられるからです。集合は、私には出頭みたいな感覚でした。
36歳の夏、犬吠埼へ
36歳の夏は、お盆休み前に海外旅行をしていて、お盆は暇でした。
「遊ぼうよ」。
そのメールは、誘いというか強制です。
39歳のブティックのお姉さん女子と差しでクダを巻くのはキツイので、いつもの仲間を誘いました。新卒のときのミドフォー先輩と、同期だけど一つ年上のスノッブ女子。同じ会社で働いていたので、みんな知った仲間です。
この新卒先輩は怖くない。スノップ女子の同期を含めて家族のようなもの。
ブティックお姉さん女子が千葉の実家住まいなので、神奈川方面より千葉へ、ということで、行く先は犬吠埼に決まりました。
「みんなで吠えよう」
「海に沈む夕日に向かって吠えるよ!」
テーマは、「吠える旅」。
イメージは、犬吠埼の灯台での遠吠えです。
もちろんインスピレーションは、酒井順子さんの「負け犬の遠吠え」。
「30代・未婚・子なし」を負け犬と名づけ、既婚・勝ち犬との共存を指南した名著。30代の私の価値観になった本だけど、私を縛り付けた本でもありました。自分を「負け」と、ラベリングしてしまったから。本自体は、明るい負け犬論であり、生き方の指南書なんですけどね。
東京駅にあった、寒寒しい犬吠埼
ブティック先輩女子以外は都内に住んでいるので、東京駅に集合。総武線に乗って銚子に向かいます。
2010年をすぎた頃の東京駅は、大改修の前で、ところどころに昭和の風情がありました。今のきれいな東京駅にはない趣きがあったのです。
東京駅の総武地下ホーム(地下5階)へ降りる階段とエスカレーター付近にあった、白亜の犬吠埼灯台と海に「犬吠埼」と書かれた巨大な写真パネル。覚えていらっしゃいますか。
犬吠埼の毛筆風フォントが、風がびゅーびゅー吹いている感じで、もの寂しくて、なんだかサスペンス風味があり、地の果て感を演出していました。
このnoteをきっかけに、あの寒寒した看板を検索しまくったけれど、見つからない。AIにも聞いたし、Google検索でいろいろ探したけれど、ヒットせず。あれは、幻だったのかな。いや、みんな、犬吠埼で吠えるイメージがあったから、確実にあったはず。
独身女子四人で行く旅先としては、鎌倉や軽井沢じゃない犬吠埼はだいぶ異色。笑。
普通電車で約3時間。銚子は思いのほか遠かったです。ボックス席で、周りの景色が、都会から、ベッドタウンに変わり、蝉時雨が響き渡る山深い駅を通って、田舎に変わっていくのを眺めました。
途中の駅でブティック先輩女子が合流。意外に田舎住んでるのね。新しい発見です。
ちょっと久しぶりに会ったブティック先輩女子は、髪の毛を美香さん風の赤に染めていました。美香さんは、叶姉妹。ブティック先輩女子は、叶姉妹に憧れていたのです。平成半ば、叶姉妹の真似をする女子は一定数いました。
ブティックの規定ギリギリの赤の髪色は、迫力がありました。
銚子でレンタカーを借ります。
全員ペーパードライバーですが、一番歴が長い40代の新卒時代の先輩が運転してくれることになりました。
都内でレンタカーを借りて温泉に行くときには気にする車のグレード。
銚子から犬吠埼だから、軽自動車でいいよね。グレードになんて拘らない。安いし、小回り効くし、最高でしょう!
車種と色は選べず、借りたのは柴犬みたいな色の、豆柴みたいな車でした。
「豆柴号」と名付けました。
銚子で海鮮のランチを食べて、豆柴号でドライブして、かき氷を食べて、またドライブして。
車中ではずっとおしゃべり。
基本的には、ブティック先輩女子がずっと喋っています。助手席に座った私は、バックミラー越しに相槌を打ち続けて、だいぶ披露しました。
話題は、主に悪口と愚痴。
隣近所のブティックのスタッフの悪口。百貨店社員の噂話。愚痴をたくさん。愚痴のベテランで、噺家のように愚痴を重ねていきます。愚痴にも起承転結があり、愚痴を芸に昇華させていました。
千葉で「LOVE AFFAIR」を歌う
途中で、ラジオから流れるサザンを皆んなで熱唱しました。2009年から無期限の活動休止期間に入っていたサザンオールスターズの特集だった記憶です。豆柴号には、ずっとサザンが流れていました。
「LOVE AFFAIR」は、秘密の恋、すなわち不倫のスリルと切なさを描いた歌。独身四人で、熱唱します。
♪マリンルージュで愛されて
大黒埠頭で虹を見て
シーガーディアンで酔わされて
まだ離れたくない
早く去かなくちゃ
夜明けと共にこの首筋に夢の跡♫
「ここは千葉だよ、犬吠埼だよ」
「横浜じゃないけどね!」
と言いながら、皆んなで歌う。
一番若い私が36歳。全員アラフォーで、不倫が独身同士の恋愛よりも現実的に感じてしまう年齢でした。
恋をしたいから、秘密に道ならぬ恋を選ぶ女子も、周りにいました。
秘密の恋なんて存在しません。本人たち的には秘密の恋も、なぜか公然の秘密。
私は不倫旅行中の会社の男性と若い女が手を繋いで歩いているところをソウルで目撃して、すぐに言いふらしたし、
友だちは、千歳烏山に住んでた同僚と付き合っているっぽい課長を京王線のホームで見かけると、翌日には「京王線の新宿駅で、あいつを見たよ。あいつ、浦和に住んでるのに」と、報告する。
既婚の営業が、百貨店社員の若い子と道玄坂方面に歩いて行ってたのを見たとか、お局化していた経理女子が、絶対に社内の誰かと付き合ってるらしいという噂とか、みんな大好き。
道ならぬ恋も、噂話や、知り合いの知り合いの話として、広まっていました。
後編に続く。
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