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【実話日本不思議ばなしNo.6】――大切にされた車は、最後まで応えてくれたのかもしれない話――

これから書くことも、もちろん証明できる話ではありません。

そして今回ご紹介するお話も、私自身が直接体験したことではありません。

私の会社の後輩から、本人が実際に経験した出来事として聞かせてもらったお話です。

信じるかどうかは、これまでと同じように皆さんにお任せしたいと思います。

ただ私は、この話を聞いたあと、不思議というよりも、「物を大切にする」ということについて、改めて考えさせられました。

今回は、そんなお話です。


車好きの後輩

私の会社に、とても車が好きな後輩がいました。

高級車を何台も乗り継ぐような人ではありません。

むしろ、一台の車を長く大切に乗るタイプでした。

洗車もこまめに行い、小さな傷でも気に掛ける。

休日になると、意味もなく車を走らせることもあったそうです。

私から見ても、本当に車が好きなんだなと思える人物でした。

そんな彼が乗っていたのは、一台の軽自動車でした。

年式も決して新しくありません。

走行距離もかなり伸びていました。

周囲からは、

「そろそろ買い替えたら?」

と言われることもあったそうです。

でも彼は、いつも笑いながらこう答えていました。

「まだまだ元気だから。」

そして、少し照れくさそうに続けます。

「それでもいいんです。それがまた、かわいいんですよ。」

その言葉を聞いた私は、少し驚きました。

車に対して「かわいい」という表現を使う人を、女性ならまだしも、それまであまり見たことがなかったからです。

でも彼にとって、その軽自動車は単なる移動手段ではありませんでした。

長い時間を一緒に過ごしてきた、大切な存在だったのです。


ある日の帰り道

その日も、仕事を終えた彼はいつものように車へ乗り込みました。

エンジンを掛け、自宅へ向かいます。

特別な日ではありません。

道路もいつも通り。

信号も、流れる景色も変わりません。

ところが、しばらく走ったころでした。

車が突然、小さく震え始めたそうです。

「ブルッ……。」

今まで聞いたことのない音、そして振動。

同時に、アクセルを踏んでも思うように加速しません。

「おかしいなぁ」

彼はそう思いながらも、慎重に車を路肩へ寄せました。

エンジンを切り、もう一度始動してみます。

いつものように普通に掛かりました。

「何だったんだろう……。」

少し気になりましたが、そのまま自宅へ戻ったそうです。

翌日、念のため整備工場へ持ち込むことにしました。

長年付き合っている整備士さんが、丁寧に点検してくれます。

しばらくして、整備士さんが戻ってきました。

そして、少し不思議そうな表情でこう言ったそうです。

「特に異常は見当たりませんね。」

エンジンにも問題はない。

電気系統も正常。

足回りも異常なし。

どこを調べても、故障らしい故障は見つからなかったそうです。

彼は少し安心しました。

「じゃあ、気のせいだったのかな。」

そう思いながら、再びいつもの毎日が始まりました。


そして、あの日

それから数日後。

彼は休日を利用して、少し遠くまでドライブへ出掛けました。

青空の下を、愛車はいつものように走っています。

彼は窓を少し開け、心地よい風を感じながらハンドルを握っていました。

「まだまだ元気だな。」

そう思った、そのときでした。

車が再び、あの日と同じように小さく震えたそうです。

しかし今回は、その震えが前回よりも少しだけ強かったといいます。

彼は反射的にアクセルを緩め、ゆっくりと速度を落としました。

そして、安全な場所へ停車させようとした、その瞬間――。

そして、車が教えてくれたこと

彼が車を停めた、その数秒後でした。

突然、

「バンッ!」

という大きな、これまで聞いたことのない音が響いたそうです。

エンジンルームから白い煙が立ち上り、車は完全に動かなくなりました。

彼は慌てて車を降り、安全な場所へ避難します。

幸い周囲に他の車はなく、広々とした路肩に駐車することができ、事故になることもありませんでした。

その後、ロードサービスを呼び、いつもの整備工場へ運ばれました。

整備士さんは車を見て、驚いた表情を浮かべたそうです。

しばらく点検したあと、こう言いました。

「これは……。」

「あと少し走っていたら、大変なことになっていましたよ。」

エンジン内部の重要な部品が限界を迎え、完全に破損していたそうです。

もし高速道路を走っていたら・・・

もし交通量の多い交差点だったら・・・

もし速度を落とさず走り続けていたら・・・

そう考えると、彼は背筋が少し寒くなったと話していました。


「止まってくれた」のではないか

もちろん、これは機械です。

部品はいつか壊れます。

寿命が来れば動かなくなる。

それは当たり前のことです。

だから、この出来事も偶然だったのかもしれません。

でも彼は、最後までこう言っていました。

「この車、最後まで頑張ってくれた気がするんです。」

「危ない場所じゃなくて、安全な場所まで連れてきてから止まってくれたような気がして……。」

そう話す彼の表情には、悲しさよりも感謝の気持ちがあふれていました。

長年一緒に走り続けてきた相棒へ向けるような、そんな優しい笑顔でした。


「それでも、かわいい」

修理はできませんでした。

修理費用は、車を買い替えられるほどの金額になると言われたそうです。

悩んだ末、彼はその車と別れる決断をしました。

最後の日。

荷物を降ろし、車内をきれいに掃除しながら、

彼は何度も車に話しかけていたそうです。

「ありがとう。」

「本当にありがとう。」

誰かに見られたら少し照れくさい光景だったかもしれません。

でも、それが彼にとっては自然なことでした。

そして最後に、

ボンネットを軽くなでながら、小さく笑ってこう言ったそうです。

「最後まで、かわいかったな。」

私は、その話を聞いたとき、

胸が少し温かくなりました。


今になって思うこと

日本には昔から、

「長く大切に使った物には魂が宿る。」

そんな考え方があります。

もちろん、それを証明することはできません。

けれど、長年使った万年筆。

毎日使う湯のみ。

祖父から譲り受けた腕時計。

そして、一緒に何万キロ、何十万キロも走った車。

そうした物に対して、

私たちはいつの間にか「ありがとう」という気持ちを抱くことがあります。

それは、物に命があるからではなく、

そこに自分の時間や思い出が宿っているからなのかもしれません。

あるいは、本当に何かが宿るのかもしれません。

その答えは、私には分かりません。

ただ一つ言えるのは、

彼がその軽自動車を心から大切にしていたこと。

そして、その車も最後の最後まで、持ち主に応えようとしてくれたように思えたことです。

それが偶然だったとしても、

私は、このお話を聞いたあと、自分の車を見る目が少し変わりました。

そして今乗っている車も、これまで乗ってきた車も、

以前より少しだけ優しく接するようになった気がします。

もし読んでくださった皆さんにも、長年大切にしている物があるなら。

今日はほんの少しだけ、

「ありがとう。」

そう声を掛けてみるのも、悪くないのかもしれません。


このシリーズは、私の経験や見聞きした不思議な話をシリーズでご紹介していきます。

そのため定期的にご紹介するということは難しいですが、可能な限り多くのお話をご紹介していく予定ですので、今後ともよろしくお願いします。

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