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7.それでも船を降りない理由

ここまで読んだら、

「じゃあ、そんなにキツいなら辞めればいいじゃん」

そう思うかもしれない。

実際、そうやって船を降りていく人はいる。

それでも、船を降りない人間もいる。

なぜか。

一番大きいのは、やっぱり金だ。

陸に降りれば、毎日家に帰れる。好きな時に飯を食べて、好きな時に寝られる。

当たり前の生活ができる。

でも、その代わりに給料が大きく下がることもある。

船に乗っている間は、確かに自由を失う。

その代わり、まとまった金を稼げる。

そして、まとまった休暇がある。

この「働く時は徹底的に働いて、休む時はまとめて休む」という生活が、自分に合っている人間もいる。

それに、一度船の世界に慣れてしまうと、陸の仕事が逆に窮屈に感じることもある。

毎朝決まった時間に起きて、毎日同じ場所へ行って、同じ時間に帰る。

それが普通の生活なのかもしれない。

でも船乗りからすると、

「毎日帰れることが、本当に自由なのか?」

と思うこともある。

そして、船には船にしかない感覚がある。

夜中の海。

誰もいない水平線。

何十キロ先まで街の明かりすらない海を、ただ船だけが進んでいく。

荒れた海を越えた時の安心感。

狭い水道を抜けた時の緊張感。

無事に港へ着いた時の、何とも言えない達成感。

これは陸の仕事では、なかなか味わえない。

もちろん、綺麗な部分だけじゃない。

眠い。疲れる。帰りたい。

時には、

「もう二度と船なんか乗るか」

と思う。

それでも、休暇で家に帰ってしばらくすると、

「そろそろ船に戻るか」

となる。

不思議なもんだ。

結局、船乗りという仕事は、

「楽だから続ける仕事」ではない。

キツいから辞める人もいる。

でも、キツいと分かっていても続ける人もいる。

金のため。

遊ぶため。

自分の目標のため。

そして、

「自分にはこの仕事が合っている」

という理由で。

船を降りない理由は、人それぞれだ。

ただ一つ言えるのは、

船乗りは「何も知らずに続けている人間」ばかりではない。

キツさも知っている。

孤独も知っている。

帰りたいと思ったこともある。

それでも今日も船に乗っている。

だからこそ、

船を降りない人間には、それぞれ降りない理由がある。

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