平地の少ない山がちな国は農家に所得補償することが難しい
この動画、なんか私のツイートを紹介してくれてるようで。冒頭の指摘で、私のこと有名人と言ってるけど、あんまり自覚ない。
「米暴落で日本農業終了?」
https://youtu.be/zJKoI9ewtoM?si=kfBiLnXimJRNdiXL
さて、動画の12分20秒あたりで紹介されてる図に関し、興味深い指摘があったので、その点を少し言語化してみたい。
欧米先進国は小麦などの穀物価格がむっちゃ安いのに日本のコメはなんで高い?って話。動画でも紹介されてるように、欧米では政府が農家の収入を保障していて、小麦などの価格がどれだけ暴落しても平気の平左になるようになっている。
それに対して日本、アイスランド、スイス、韓国は農家の収入を補助金で支えることをせず、消費者に高く買ってもらうことで農家の生活を支えるというシステムを採用している。
なぜこれらの国は、他の欧米先進国のように農家の所得を補償しようとしないのか?それさえすればコメや小麦などの穀物の価格がどれだけ暴落しようと農家は生活が安定するし、消費者は安くコメや小麦を食べられるのに?
原因は恐らく「平地が少ない」こと。アイスランドの平地は陸地の20-25%、日本25%、韓国とスイスは30%程度で、他は山ばかり。
アイスランドはよく知らん(酪農が中心らしい)からちょっと措(お)くけど、日本、韓国、スイスはどちらも平地が少なく、他の欧米先進国のように農業を「超」大規模化することが難しい。もちろんこれらの国々も大規模化を進めているけど、平地が少ないから限界がある。
たとえば日本と同じような島国であるイギリスの平地は陸地面積の約70%を占める。日本の陸地面積はイギリスの1.5倍あるのに耕地面積はイギリスのほうが1.4倍広い。平地が広いから「超」大規模化が容易。
では、なぜ「超」大規模化すると農家の所得補償ができて、山がちな日本や韓国、スイスはそれができないのか?
農家が「小粒」で「たくさん」あるから。
「超」大規模化が進んでる欧米先進国は、農家数が少なくて一軒一軒の農家の栽培する面積がバカでかい。当然、一軒の農家が生産する小麦などの穀物も大量。たとえ穀物価格が超安値になっても、一軒あたりの農家の売り上げはそこそこ大きなものになる。となると、政府が農家の所得補償をするのでも、一軒あたりの補助額は少なめです済むし、農家の数も少なめだから補助の総額は小さくて済む。
ところが日本のような山がちな国だと、土地が足らないからどうしても斜面の多い「中山間地」でも農業をやらざるを得ない。実際、コメの3割は中山間地で作ってる。田んぼや畑は平らにしないと土が流れて失われるから、平らにする必要があるけど、斜面を削って平らにするのは大変だし、平らにした田畑一枚一枚はどうしても狭くなる。それを大きな一枚の田んぼにまとめることは、土木工事としては巨額にのぼりすぎて無理。このため、日本では小規模農家がどうしても多い。
日本では、平地だけの農業では十分な食料を作れない。日本の農地の4割は中山間地で、コメの3割を生産してる。ここがなくなると食料は足りなくなる。「中山間地の農家なんか小規模なんだから潰しちまえばいい」なんて言う人もいるけど、ここが失われると、そうでなくても農地の足らない日本でさらに農地が不足する。
というわけで、日本は小規模な農家がたくさんあって、その人たちの助けもないと十分な食料を確保できない。でも小規模ということは売り上げも小さい。もし所得補償するとなると、一軒あたりの補償額も巨大になる。しかも農家数が多いから、補償額総額もどえらく跳ね上がる。
韓国、スイスの事情は私は詳しくないから断言できないけど、どちらも日本と同様、平野部が少ないから、そうした地形的な理由から農家数を十分減らせず、小規模農家に頼らざるを得ない事情もあって、所得補償したくても補償額がデカすぎて実行できないのではないか。
日本も大規模化を進め、農家数(基幹農業従事者)もついに100万人を切った。けれど、フランスはその半分以下の40万人ほどで、日本の6倍以上(2700万ha()もの耕地を耕している。日本では規模を大きくするというのは限界がある。恐らくだが、韓国やスイスも同様の課題を抱えているのではないか。
冒頭の動画では、日本、韓国、スイス、アイスランドの4カ国は特殊だと指摘していたけれど、恐らく「平地が少ない」という「特殊」な共通点がこれらの国はあり、それが政府による所得補償を難しくする「特殊事情」の原因と思われる。
私も所得補償が望ましいと考えているが、約100万人の農家に100万円ずつ所得補償するにしても1兆円が必要。もちろん規模とか売り上げとかで金額は変わるにしても、日本の農家の手取りの少なさを考えると、せめてそのくらいの補償額を考えねばならないとなると、1兆円必要となってしまう。動画にもあったが、農水省の年間予算は約二兆円。予算額を50%アップしないといけない計算。かなり厳しい。
農家が多すぎるのが所得補償の実施を困難にしている。でも山がちだから必然的に農家は多め。厄介な宿命を日本は負う。
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