コメ価格が暴落するとどうなるか?・・・消費者が日本の食料安全保障のカギを握っている

昨日は「コメが暴落するとどうなるか?」を論じようとして、令和の米騒動によるコメ高騰はなぜ起きたのか、その犯人探しだけで長文になってしまったので、そこまでで止まってしまった。

コメ高騰は誰が犯人か?|shinshinohara https://note.com/shinshinohara/n/nf1dee7bf0582?sub_rt=share_sb

今日は今度こそ、「コメが暴落するとどうなるか?」を論じることとしたい。

ところで、現状、コメは値下がりしてきたとはいえ、まだまだかつてのように5kgで2000円で買えていた時代と比べればまだまだ高い。とはいえ、一時は4000円を超えていたことを考えると、3000円以下で店に並びだしたのだから、だいぶ値下がりし始めたと言える。そしてこの値下がりはさらに続くだろう。コメが余りまくって困っているからだ。どのくらい困っているかというと、2025年産のコメと、政府が吐き出した備蓄米で倉庫がいっぱいになっており、新米が出てきてもそれを収容する倉庫がない、というありさま。

新米を何とか倉庫にしまおうとしたら、2025年産のコメや備蓄米をどうにか倉庫から出さなきゃいけない。となると、タダみたいな値段で「お願いだから買って」となる恐れもある。そんな安値がついたら、新米の価格にも大きな影響を与えるだろう。

ところで、なぜそんなにコメが余っているのだろう?主に3つの理由があるように思う。
・2025年に政府は60万トンを超える備蓄米を放出した。
・さらに2025年産のコメは豊作(748万トン)で、需要量(691万〜704万トン)を超える収量があった。つまり、44~57万トンが余分。
・さらにさらに、2025年以降、コメの価格が5kg4千円を超える高騰ぶりで、一般の消費者はコメに手が出せなくなり、パスタなどの安い代替品を買うようになり、コメ離れが加速、コメ消費が落ちた。

コメは安くはなってきたが、コメ消費は戻ってきていない様子。このままではコメがあふれかえっている状態なので、コメ価格がどれだけ値下がりするか分からない状況。

「それでもいいじゃないか、損切りというけれど、タダみたいな値段でも売れば売り切れるだろ」
という人がいたけれど、コメはそうはいかない。「胃袋のサイズが決まっている」からだ。

すでにお腹いっぱいの人に「おむすびをタダで上げるからもう2,3個食べて」といっても断られるだろう。コメはお腹を膨らますための基礎食糧で、命を支える重要なものでもあるけれど、お腹いっぱいになると頼まれてもいらないものでもある。「だったら保管しておいて後で食べたら?」と考えたくなるけれど、コメは保存がきく方だとはいえ、それでも室温で1か月以上放置すると品質が悪化してしまう。冷蔵保管するにはコストがかかる。コメも「生(なま)もの」だということ。消費期限前に食べきれない量は誰もいらない。消費期限が切れないようにするには冷蔵しなきゃだからコストがかかる。余っていると「タダでも要らない」となりかねないのが、コメという生ものが持つ宿命。

このままコメが余りまくった状況が続けば、新米が出てきても「いらない」と言われかねない。そうなると、一般の商社(商系)も売れる見込みが立たないからコメを必要以上買おうとしなくなる。農協は卸業者が購入済みのコメを冷蔵保管してあげて、注文があるとそれを倉庫から出してあげるサービスをしているのだけれど、卸業者が一向に倉庫からコメを引き出そうとしなくて困っている。卸業者は卸業者で、小売店でコメがいつまでたっても売れないからコメの注文が来ず、農協の冷蔵倉庫からコメを出せないでいる。その結果、農協には2025年産のコメが山積みになっていて、新米を入れるスペースがない。

このままだと、農協は、生産者からコメを買いつけようにも収容する倉庫がないので、恐くて買いつけられない。コメ専用の特殊な倉庫でないとネズミが食ったりかびたりするから、おいそれと管理のいい加減な倉庫に収納するわけにもいかない。

というわけで、2026年産の新米は「売れるかどうか見込みが立たない」ため、前年の2025年には「複数年にわたって高値で買うから!」と約束していたはずの商社が「違約金払うから約束をホゴにさせてくれ」と連絡があった、という農家の報告もある。新米を買いたいところがない、という異常事態。

このままだと、農家はひどい安値でしかコメを売れない、という状況になりかねない。2024年、25年は比較的高値でコメを買ってもらえたとは言え、考えてみると1990年代後半の値に戻しただけのことで、大して儲かっていない。それどころか、肥料も燃料も苗代もみんな高騰しており、高値で買ってもらっても利益がまだ出ているわけではない、という農家も多いという。

そんな状況の中で、2026年産のコメの価格が暴落するとどうなるか。
赤字経営が続いていた農家が大勢コメ生産をやめてしまうだろう。なにせ、ここ30年ほど赤字経営を続けてきて、「もう限界」という声が2024年の春には多く出ていた。恐らく、斜面が多く、一つ一つの田んぼが小さく、効率的に栽培できない中山間地でコメ生産をやめる農家が多く出るだろう。

中山間地でのコメ生産は3割に上る。中山間地が一斉にコメ生産をやめてしまうと、一気にコメ不足に転換しかねない。
「中山間地みたいな非効率な場所でのコメ生産なんかやめてしまって構わない。平地で効率よく栽培している大規模農家にコメを全部作ってもらえばいい」という意見が少なくないが、それは実行可能なのだろうか?

平野部の水田面積は約140万ha。しかし、日本人が食べるコメの量700万トンを生産するために苗を植えている水田の面積(作付け面積)は160万ha。つまり、平野部の水田だけでは日本人が食べるコメを全量供給することは困難。

「平野部の水田ならきっと中山間地の水田よりたくさんコメが獲れるんじゃない?」という人がいるかもしれない。ところが面積当たりのコメのできる量は平野部でも中山間地でもそんなに違いはない。平野部が有利なのは、大きな機械で一気に栽培できるから人手と作業量が少なくて済む、ということであって、生産量に差はない。だから、平野部の水田をフル活用したうえで、それでも20万haは中山間地で栽培してもらわないとコメが足りなくなる、ということになる。

また、厄介なことがある。中山間地でコメ生産をやめてしまうと、獣害と水害がひどくなりかねない、ということ。

テレビでも話題になっているように、全国的にクマの被害が発生するようになっている。田舎はその他に、シカ、イノシシ、サルなどの獣たちに作物を食われて大変な被害が起きている。その上にクマ被害が発生し、人間が食い殺される事態も続出するようになって、中山間地の農家は田畑に耕しに行くのも恐いという状況になっている。

そんな状況でコメ価格が暴落したら、中山間地の人は「怖い思いをして、シカやイノシシの害を防ぎながら儲からないコメを作り続けるのはもうムリだ」と諦めても仕方ない。そうなると、どうなるか。

獣害の防波堤になってくれていた中山間地でコメ生産をやめてしまうと、中山間地に住み続ける理由が失われ、多くの中山間地で人が住まなくなってしまうだろう。そうなると、なんとか中山間地と森林の境界線で踏みとどまっていたクマ、シカ、イノシシ、サルたちが、中山間地を根城にするだけでなく、平野部にまで下りて農作物を荒らすようになるだろう。

ここで皮肉なことに、平野部の大規模農業は、人を減らすことで人件費を減らし、「効率的経営」をしているわけだけれど、これが裏目になる恐れがある。だって、一人で100haもの大水田を管理していたら、シカやイノシシの外からコメを守ることなんて、広すぎてできやしない。電気柵や金網で獣害を防ごうとしても、大規模農業だと面積も広いからものすごく頂戴な柵を設けなければならず、コストがかかる。それでもシカやイノシシは飛び越えたり穴を掘って潜り込んだりする。たった一人で100haの田んぼを守り切るのは困難だろう。

その上に、クマが平野部でも出没し始めている。シカやイノシシはまだ人間の姿を見たら逃げてくれるが、近年、クマは逃げるどころか人間に向かってくる事例が増えている。襲われて食われてしまう事例も出ている。農家は怖くて田んぼに出たくなくなる可能性がある。

となると、
コメ暴落→中山間地でのコメ生産をやめてしまう→中山間地を根城にした獣たちが平野部の水田を襲う→平野部の大規模農家は、クマが恐くて獣害を防ぎきれなくなる→コメ不足
ということが起きてくる恐れがある。

皮肉なことに、2026年産のコメが暴落すると、時間差で慢性的なコメ不足が起き、価格が高騰するという、なんとも不思議なことが起きかねない。

「コメが高騰しても構わない、だって、海外から安くコメだってなんだって買えるじゃないか」という人がいるかもしれない。ところが。

日本人が好むジャポニカ米というのを作っている国・地域は、実は限定的。アメリカではカリフォルニアがジャポニカ米を作っているが、日本で食べられているコメの量(約700万トン)の4分の1程度(150-200万トン)。アメリカで生産されるジャポニカ米だけではとてもではないけれど日本人の食べるコメの量を賄えない。

「日本人が買うならカリフォルニアももっとコメを作るようになるでしょ」と思うかもしれない。しかし。
日本人は昔ほどお金持ちでなくなった上に、円安で、コメを昔ほど『好きなだけ買ってくれるお客様』でなくなりつつあることは、アメリカの農家もわかっているだろう。しかも日本のコメに求める品質基準は厳しく(言い換えればやかましく)、ちょっと変色した米粒が混ざっていただけで文句を言うので、アメリカでは「高い金を出さなくなっているうえにうるさい客」になり始めている。それよりは、アメリカでも寿司ブームが起きているから、そちらの方が将来性が高いと見られても仕方ない。

しかも、カリフォルニアは近年、雨が全然降らない干ばつが起きるようになり、水不足が深刻化している。カリフォルニアではコメの優先順位が低いらしく、水の配分が制限されてコメの生産量がガタ落ちになったりしている。もしカリフォルニア米に頼ったとしたら、量的に全然足りないうえにコメが全く手に入らない年が何年かに一度あることを覚悟する必要があるだろう。

ジャポニカ米を大量に作っている国は他に中国がある。しかしご存じの通り中国とは関係が悪化しており、安定的にコメを入手できるか分からない。それにそもそも、中国は普段、ジャポニカ米を10~20万トンしか輸出していない。日本でのコメの消費量は700万トンだから全然足りない。

韓国もジャポニカ米を作っているが、生産量は日本の半分(約370万〜380万トン)でしかない。輸出量は数万トンで、もちろん全然足りない。

そもそもジャポニカ米を食べる国は「珍しい」と言ってよいほど限られており、ジャポニカ米の生産国は1位が中国(約4,000万〜5,000万トン)、2位がなんと日本(約750万〜800万トン)、3位韓国(約370万〜380万トン)、4位アメリカ(約150万〜200万トン。海外に輸出しているのはアメリカが例外的に多いが、どの国も自分の国の中で消費するのが主で、輸出することはジャポニカ米は珍しく、量が少ない。だから「海外から輸入すればいい」と思いたくても、日本人が慣れ親しんでいるジャポニカ米は手に入りにくい。

細長い米粒のインディカ米は、ジャポニカ米と比べてたくさん輸出されているけれど、炊飯器でご飯を炊くやり方には合わない。インディカ米で腹を満たすには、日本食のあり方がだいぶ変わることを余儀なくされるだろう。

小麦ならもっと大量に輸出されている。しかし近年、日本は貧乏になってきている。令和の米騒動が起きた一因に、実は「小麦価格が高騰した」ことが背景にある。2023年ごろに小麦価格が急騰し、パンなどの小麦製品が一気に値上がりした。様々な食品が値上がりする中で、当時、比較的安かったのがコメだった。このため、2023年、2024年と続けてコメの消費が伸び、「コメの消費は毎年減るだろう」と予想した農水省の思惑が完全に外れ、コメ不足に陥ったのが原因だった。

だから、「小麦ならいくらでも買える」と思うと、ちょっと怪しい。ロシアによるウクライナ侵攻をはじめとして、ホルムズ海峡の封鎖も起きている。これも実は小麦価格の高騰が起きる原因になるやもしれぬ。というのも、ホルムズ海峡は尿素という重要な肥料の貿易量の3分の1を占めており、ホルムズ海峡封鎖で尿素が手に入らなくなったため、アメリカでの小麦やトウモロコシの作付けに間に合わず、肥料不足が起きた。

作物の出来は天候にもよるから何とも言えないが、この肥料不足が原因で小麦の生産量が落ちる恐れが残っている。相場が荒れていないところを見ると、それほど心配する必要はないのかもしれないが、アメリカは尿素を全量海外からの輸入に頼っていて、当然ながらホルムズ海峡を通じて尿素を大量に輸入していたので、封鎖により尿素が不足し、アメリカの農家が肥料不足で悲鳴を上げていたのは事実。

今後、世界の各地で戦争が起きるようだと、小麦を思う存分購入できる時代が続くか疑わしい。しかも日本は経済力が落ちているうえに円安が続いている。小麦を安く大量に買えるかどうかは疑問符がつく、ということをわきまえておく必要がある。

以上を踏まえると、コメ余りの現状を放置すると、コメ価格の暴落は避けられないだろう。するとコメ農家が大勢廃業してしまうだろう。すると平野部の大規模農業だけではコメ生産を頑張ってもコメが足りなくなるだろう。すると不足する食糧を海外から輸入しなければならなくなるだろう。「当面は」海外の小麦やコメ(ジャポニカ米、インディカ米)は安いから、それが大量に安く国内で販売されるようになると、国内のコメ価格はますます暴落するだろう。そうなると、平野部の大規模コメ農家でも価格で太刀打ちできず、コメ生産をやめてしまうところが続出するだろう。そうなると、日本はコメだけは自給率100%を維持できていたけれど、それが80%、50%へと減っていき、日本は食料の大半を海外に依存するようになるだろう。その食料供給はアメリカが中心になるだろうから、胃袋を握られた状態となり、日本はアメリカにこれまで以上にまったく逆らえない国になるだろう。

多少なりとも自立した国であり続けるには、コメに関しては自給率100%の状態を維持できることが望ましいだろう。カロリーベースだと38%しか自給率はないが、数か月分の食料が日本の田んぼや畑に生えているという状態は、安全保障上も重要な意義がある。数か月をしのげば、戦争中であってもどこかの国から食料を輸入できるタイミングが来るだろうから、その「数か月をしのぐ」ことができる食料を自前で作れている、ということはとても重要。しかし、現状のコメ余りを放置していれば、それさえもできなくなるだろう。2026年は、日本の食料安全保障の底が抜けるかどうかの分岐点になる恐れがある。

この危機的状況を回避するには、どんな方法があるだろうか?
やはり、「コメ余り」の問題をどうにか改善することで、コメの暴落をなんとか防ぐしかないだろう。

コメ余りを改善するには、やはり「備蓄米」として市場からコメを吸い上げるというのが重要な手になるだろう。

2025年に60万トン以上の備蓄米を放出したが、そのうちの15万トンほどの備蓄米が売れ残っているという。これは古くて食味があまりよくないということもあるらしく、今後も売れる見込みが立たないようす。だとしたら、これをもう一度備蓄米として買い戻すというのが一つの手だろう。

しかし、15万トン程度のコメを吸い上げただけでは、コメのだぶつきは解消しないだろう。なにしろ、2025年には備蓄米を60万トン吐き出した上に、2025年産のコメは需要量より44~57万トンも多く作られてしま手散る。合計で100万トン以上もだぶついている計算。15万トンのコメを引き上げただけでは、まだまだコメのだぶつきは改善しないだろう。

解決するには、全部で40-80万トンほどのコメを市場から吸い上げなければならないのではないか。実は、現在の備蓄米は32万トン。普段は備蓄米は100万トン保存することになっているから、不足分は68万トン。これだけの量を市場から引き揚げれば、コメの暴落を防ぎ、コメ農家の経営を救い、日本全体のコメ生産を守ることができるだろう。しかし。

実行は難しいだろう。備蓄米は毎年20万トンずつ買い入れ、5年間で100万トンに達したら20万トンをノリ(糊)などの原料や家畜のエサとして放出する、というルールになっている。つまり、毎年20万トンしか買い入れない、というルールになっている。なのに2026年だけコメを大量に買うなんてことしたら、ルール違反になる。

それに何より、国民感情が許さない恐れが高い。国民は2024年から続くコメ高騰に苦しんできた。特に2025年後半からのコメ価格は5kgで4000円以上にもなり、コメが高根の花になってしまった。コメは何と言っても日本の主食に位置し、これを食べられない苦労を国民は強いられてきた。
ようやくここにきてコメが安くなってきたのに、「コメの価格を下げないために国がコメを買いあげる」なんてことをしたら、国民の9割9分が消費者なのだから、国民感情が爆発し、それを許さない、ということになりかねない。

それが分かっているから、コメ農家やコメ卸売業者、農協などは、「このままコメが暴落するとコメ農家の大部分が消えてなくなり、コメ不足が慢性化してコメが高騰し、コメの食えない国になる」ことを予想できていても、国に「コメを大量に買い取ってくれ」とは言えない立場となっている。ヘタにコメ関係者がそれを発言したら「お前らが大儲けしたいから、あるいは損をしたくないからそんなことを言うのだろう」と題バッシングを受けかねない。だから、言いたくても言えないという状況となっている。

今、ある程度の価格までにコメ価格の下落を抑えることは、コメ農家を救うばかりか、消費者の未来を救い、ひいては日本の食料安全保障を守ることにつながることで、国全体を救うことになるのだけれど、「誰もコメを備蓄米として大量に吸い上げてくれ」とは言いがたい、という、妙な状況が生まれている。

ほぼ絶望的ではあるが、唯一、この状況を打開できる人がいるとすれば、それは消費者。
消費者自らが「コメ価格が暴落したら日本の食料安全保障の底が抜ける」と懸念し、政治に対し「コメを市場からある程度引き上げ、コメの不必要なほどの価格低下を抑えるように」と提案したとしたら、政治家も恐くて言い出せなかったことを消費者が言ってくれるものだから「あなたたちがそう言ってくれるのなら」と、政治家もようやく動き出すことができるだろう。

しかし、そんな奇跡的なことが起こせるだろうか。繰り返すが、消費者はここ2年ほど、コメ価格の高騰で苦しんできた。そうでなくても諸物価の値上げが相次いで生活が苦しかったのに、主食のコメが高くなったことで、まさしく「食うに困る」状況が続いてきた。特に貧困で苦しむご家庭では、食べることもままならない、という状況になっていたことを、貧困支援の団体の方からうかがっている。とてもではないが、そんな苦しい思いをしてきた人たちに「コメ価格の暴落を防いでほしい」などと言えるものではない。

一つ、妥協点があるとしたら、次のようにしてみるのはどうだろうか。「備蓄米として、ルールで決まっている年20万トン以上でも買い上げることとする。ただし、買い上げの価格は(小売価格にして)5kg3000円相当までとする」。小売価格で5kg3000円というのは、農家が農協に売る金額に置き換えると玄米60kgで15000円程度。そこで、玄米60kg15000円を条件として政府が備蓄米として買い取る、という約束でコメを吸い上げたら、コメの価格は5kg3000円程度の小売価格で落ち着くのではないだろうか。

5kg3000円というのは、農家にしたら、肥料代などの諸物価値上がりの中でもどうにか利益を出せる水準。また、その価格は2024年後半の価格で、この価格は消費者も「農家の生活を思うと」と、まだしも許容する発言の多かった価格。5kg3000円の小売価格、農家が手にする金額に置き換えれば玄米60kg15000円は、生産者もコメ生産を継続でき、消費者もなんとかコメを買い続けることができる落としどころではないか、と推測している。もちろん、根拠らしい根拠はないのだけれど、テレビや新聞などで、農家の生活のため、として理解のある発言が多かったのが、この価格帯だった、ということだけを根拠にして申し上げているに過ぎない。

でも、コメ農家がコメ生産を継続するうえでも、この5kg3000円の小売価格(玄米60kg15000円の生産者価格)は、ギリギリの線ではないか、と思われる。もちろん、コメ生産者でも規模の大きいところ小さいところがあり、5kg3000円の小売価格なら大儲けできるというところがあるのは承知なのだけれど、「主食のコメ(主食用米)700万トンの生産を維持できるコメの価格」ということで考えると、あくまで私の推測でしかないが、やはり5kg3000円の小売価格あたりが目安になるだろう。

今後、諸物価の値上がりでこの目安も動く可能性があるが、現時点ではそのあたりが落としどころのように思う。この価格で政府が備蓄米としてコメを買いあげるよう、消費者が声を上げてくれれば、少なからずのコメ農家がコメ生産を諦めずに済み、なんとかコメだけは100%自給が可能な体制を維持できるだろう。

しかし、2026年のこのタイミングでコメの吸い上げができなければ、手遅れとなる。中山間地のコメ農家が廃業に追い込まれ、中山間地は森林に飲み込まれ、コメ生産を復活させることは困難な場所になるだろう。「コメだけは好きなだけ食べられる」国であり続けられるかどうかは、2026年の今年、コメを市場から5kg3000円の小売価格相当で吸い上げられるかどうかにかかっている。私はそのように考えている。

今年2026年は、日本の食料安全保障の底が割れるか、かろうじて維持できるかの分水嶺になるだろう。そしてその運命を決めるのは、実は農家ではなく、消費者。消費者自らが農政に提案することができなければ、この問題は解決できない。国民の99%以上が農業を知らない消費者となっていて、農業政策をどうするかの決定権は消費者にある。その消費者が、コメ価格の暴落が起きるとどうなってしまうかを理解し、その対策を提案しなければならない、という、非常に難しい状況に置かれている。

私は、この危機の深刻さを文章にすることで、消費者のみなさんに事態の深刻さをお伝えすることしかできない。私の文章を読んでもらえるかもわからない。読んでもらったところで私とは判断を異にする可能性もあるだろう。私にできることは限られている。しかし渾身の力を込めて、この文章を消費者のみなさんにお届けする。どうか、ご賢慮あらんことを。

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