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【事業再生#14】代表者自宅持ち家を守るには?|印刷・看板制作会社の再生プロジェクトVol.1

破産寸前の会社に、希望の道は残されているのか──。実際に再生支援の現場に立ち会った私が、再建に挑んだ企業の「リアル」を記録します。

今回のクライアントは印刷・看板制作会社の事例です。

その事業再生事例を5話に渡って綴ります。"机上の空論ではない"事業再生の記録です。

経営に悩む方、再建を模索する方、支援を仕事にする方にとって、現場感のあるヒントとなれば幸いです。

▼過去の事業再生事例はマガジンからご覧ください▼


【第1話】老舗印刷会社に訪れた静かな終わりの足音


「昔は看板もポスターも、全部うちに頼めば一式そろったもんや」

創業40年を超える近畿地方の印刷・看板制作会社。

代表であるA氏が、古びた工場の一角でそう語った。

工場の片隅には、今ではめったに動かさなくなったシルクスクリーン印刷機が鎮座していた。

かつてこの地域の広告印刷を一手に引き受けてきた名門だが、技術革新と業界再編の波には抗えなかった。

インクの匂いとともに、その栄光の記憶だけが残っていた。

■ 売上は減り、経費は固定──


ここ数年で売上は大きく落ち込み、全盛期の半分以下。

それでも、社員10名ほどの人件費と工場の維持費は変わらない。

「まだ大丈夫」と思っていた矢先、コロナが直撃。

展示会や地域イベントが軒並み中止となり、大口の販促案件が一気に消えた。

このタイミングで受注が減ったのは、同業者でもよくある話だ。

ただ、この会社の場合、そこからの“回復”がなかった。

元来、デジタル対応に消極的で、ECや小ロット対応といった新しい形に乗り遅れていた。
そのため、コロナ後の需要回復が起きても、顧客は他社に流れたままだった。

■ 見えてきた“破綻”の構図


依頼を受けて最初に見せられたのは、直近3期分の正規の決算書だった。

金融機関の借入残高は、約1.5億円。これに未払金や買掛金などを加え、総負債は約1.8億円に及んでいた。

一方、売上は年間約2億円。

年々少しずつ売上は下がっているものの、それより問題はキャッシュの回り方と費用構造だった。

支払いサイトは短く、回収サイトは長い。

そこに、毎月100万円以上の借入返済がのしかかってくる。

当然、資金繰り表は真っ赤だった。

■ 税・社保の滞納:すでに督促フェーズへ


さらに深刻だったのは、税金と社会保険の滞納。

滞納額は約2,000万円に達し、すでに数回、督促状が届いていた。

「税務署から郵便が来ても、妻にはバレないよう先にポストから回収してるんです…」

代表のA氏は、苦笑いを浮かべながらそう漏らした。

話を聞くと、コロナ特例による納付猶予を繰り返し利用していたが、度重なる支払い遅延により、すでに一部は分納の再延長すら難しい状況だった。

■ 問題は資金だけではなかった


私は、第二会社方式による再建を提案した。

社員との関係もぎくしゃくしていた。

代表自身が現場に立つ時間が長く、経営判断や数字の把握が後回しにされていた。

「いつの間にか、社員にとって“未来のない会社”になっていたのかもしれません」

経理処理も属人化しており、原価管理も十分に機能していなかった。

赤字案件を請け負っていることすら、誰も気づいていなかったのだ。

■ 再建案:第二会社方式+不動産の流動化。


いまの会社のままでは、もはや資金繰りも立ち行かず、金融機関との交渉も難航することが明白だったからだ。

ただし、もう一つの大きな課題があった。

それが、代表者個人の住宅ローン延滞である。

会社の資金繰りが苦しくなる中で、代表者も個人資金を注ぎ込んでいた。

その結果、自宅ローンの返済が2ヶ月滞っていたのだ。

このままだと数か月後には差押え、競売にかけられることになる。

この場合はリースバックを検討することになる。

※リースバックとは

自宅など所有不動産を売却、買い主が売買代金を一括で支払う。

売主は売却と同時に買い主と賃貸借契約を締結することにより、売却した自宅にそのまま住み続けることができる。

その後、売主は買い主に毎月の家賃を支払いすればそのまま自宅に住み続けることができるスキーム。

事業再生で代表者の自宅に金融機関の抵当権が設定されており、事業に行き詰り、返済ができなくなり、その結果競売になってしまうことが多くある。

これを免れる方法としてリースバックは有効な手段の一つである。

とはいえ、いきなり代表にその話をしても、心理的な抵抗が強いのは目に見えていた。

だからまずは、不動産の査定を実施。

リースバック案件として現実的に組成できる条件かどうかを検討した。

■ それでも、再起への意志があった


何度も面談を重ねる中で、代表の口からこんな言葉が出た。

「…まだ、やりたいことがあるんです」

この一言で、私は最終的にサポートを決めた。

条件付きで物件のリースバックも進め、第二会社設立に向けてスキームを組み始めることになる。



次回は、自宅を手放さず、再起を支援するリースバックの具体的な取り組みを中心にお伝えします。


🙌終わりに


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