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紫陽花男子【毎週ショートショートnote】

僕は『紫陽花男子』として初めてこの場所にきた。

満月に照らされた紫陽花は満開であった。

辺り一面に満月の光がやさしく降りそそいでいる。

光を浴びた紫陽花は自分自身で光り輝いているように感じ、僕は放心してその美しさを見ていた。

それは、まるで生まれたばかりの赤子を見るようでもあった。

やっと生まれてきたねという感謝の気持ちと、これからどうなるのかという不安と緊張がそこにはあったけれど、ふっと空にある満月に目をやって、僕は考えるのをやめた。

夜なのにじとっとした熱い空気が、紫陽花と僕を包む。

夜の土の匂い、紫陽花の葉の匂い、僕は初めての空気の中で、それらを感じている。

そうしているうち、東の空がだんだんと青くなってきた。

僕はハサミを手に取り立ち上がった。

そして、紫陽花の花が傷つかないように茎の部分を丁寧に切って、紫陽花の花を取り、静かにそっとカゴの中に入れた。

切り取られた紫陽花の花は、この紫陽花畑から全国の花屋に出荷されるのだ。


(410字)


たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。

※ショートショートは内容によって、一人称の方がしっくりくることもあれば、三人称の方がしっくりくる場合もある。なんかしらの構造的な法則があるのかもだが、それはまだ理解していない。


*この記事は、以下の企画に参加しております。


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