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kuroyuyuyu
哀愁の燻製 【毎週ショートショートnote】裏お題
「母さん、ただいま」
東京で暮らしている息子が帰省で帰ってきた。
「おかえり」
「今日は燻製を作るよ。昔、父さんがよく作っていたからね」
しばらくすると、庭の方から燻製の香りが漂ってきた。
自分の子供が食事を作ってくれるというのはうれしいものだ。
そうして息子が燻製を持ってきた。
「できたよ」
「あら、いい香りね。お父さんのと同じ香り」
ひと口食べて涙がこぼれた。
香りも同じで、味も夫が作った燻製と全く同じだった。
「なんだか過去に戻ったみたい」
「哀愁の燻製になっちゃったかな」
哀愁は哀しみの一つではあるが、一方で喜びになるときもある。
息子が作ってくれた燻製の味は亡き夫を思い出すのに十分だった。
「お父さんが帰ってきたみたいね」
「思い出は燻製色ってか」
「ギャグもお父さんそっくりね」
息子の顔を見るとそこには間違いなく夫がいた。
息子の中に彼は生きているのだ。
私は夫に会えたような気がしてうれしく思った。
私は微笑んで、燻製をまたひと口食べた。
(410字)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
※喫茶店でメモに手書きで執筆しました。後から隣に老夫婦が来たのですが、旦那さんの方が「俺が食べたかったのはこれじゃない」と奥さんに文句を言って騒いでいました。ですが、ちらっと見たら、テーブルにあったのが抹茶パフェだったので、もしかしたら旦那さんが食べたかったのはイチゴパフェだったのかもです。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
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