郷内心瞳 for fans only #24 怪談「晒し首たち」「獅子舞」「少女時代の終わり」
お願い。
今後の執筆活動における実質的な製作費捻出、並び健康維持に要する医療費のためにnoteの有料記事で得られる収益は、大変大きな力となります。
ご協力をいただければ幸いです。
書き下ろしの怪談3話をお楽しみください。
郷内心瞳
〇晒し首たち
7月の初め頃、迫田さんが暮らすアパートの近所で、夏祭りが催されることになった。
会場は半ばシャッター通りと化した商店街。細い道路の上にはドームがかかっているので、雨天でも決行することができる。
七夕と地域おこしをテーマに企画された夏祭りは3日連続で催され、地元の青年会や有志が空き店舗を利用して様々な店をやったり、路上で余興を披露したりする。迫田さんは祭り自体に大した興味はなかったが、通勤路だったので、祭りの準備と片づけに勤しむ関係者の姿は見ていた。
祭りが始まり、2日目の夜のことである。
遅めの仕事を終えて商店街に入り、人気が絶えて薄暗くなったドームの中を歩いていく。
道の両側に並ぶ店の前には、祭りで使う雑多な道具が並び、頭上には七夕飾りなどがぶらさがっている。昨日の夜と同じ光景だったが、そこから少し進んでいったところで、迫田さんは思わずびくりとなってしまう。
シャッターが閉まった店の前に、晒し首が並んでいたからである。
2段になった木製のひな壇に、髷を解かれた男の生首が6つ、上下の段に分かれて並んでいる。
お化け屋敷にでも使うディスプレイだろうか。とはいえ、今朝の出勤時にこんな物が並んでいた記憶はない。生首たちの作りはいやにリアルで、今にも目を見開きそうなほどだった。
気味が悪いので視線を前に向け直し、心持ち足取りを速めて歩く。だが、少し歩いたところでなんとなく気になり、背後に視線を戻してみる。
ひな壇の上には盆栽の植木鉢が整然と並び、生首はひとつ残らず消えていた。
とたんに気味の悪さが恐怖に変わる。ひな壇の上には間違いなく生首が並んでいたはずである。自分は何を見たのかと思うと、一刻も早くこの場を立ち去りたい衝動に駆られた。出口へ向かい、薄暗い商店街の中を走りだす。
まもなく出口へ差しかかる頃だった。頭上で「ざざ」と音がした。
反射的に見あげると、空き店舗の入口に掛けられた庇テントの上に、先ほど見かけた生首たちがずらりと並んで、迫田さんを見おろしていた。
「ぎゃっ!」と叫んだとたん、首たちはずりずりと乾いた音を鳴らしてテントの上を這いだし、隣の店との間に開く細い隙間の中へ姿を消していった。
翌日以降、迫田さんはしばらくの間、通勤路を変えたそうである。

ここから先は
¥ 100
よろしければサポートをいただければ幸いです。たくさん応援をいただければ、こちらの更新を含め、紙媒体の新刊を円滑に執筆できる環境も整えることができます。
