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タイパ至上主義、そろそろ限界です。 〜「ひとり出版社」急増が示す、逆張りの正解〜

こんにちは。
株式会社スプリングボード代表の足立晋平です。

ここ数日、興味深いニュースが話題になっています。
「ひとり出版社」 の急増です。

日本経済新聞によると、たった一人や数人で運営する出版社が、この出版不況の中で 5年で200社以上 も増えているそうです。

彼らは、大手が出さないようなニッチな本を、手間ひまかけて作ります。
紙を選び、装丁にこだわり、採算度外視で著者の熱量をパッケージする。

まさに 「効率化」とは真逆の動き です。

でもこれ、出版業界だけの話ではありません。
世の中を見渡すと、「あえて非効率」を選ぶことで熱狂的な支持を集めている事例が、あちこちで生まれているのです。

今日は、AI全盛の今だからこそ考えたい 「無駄と手間の効用」 について、いくつかの事例を交えてお話しします。



🧖‍♂️ シャワーで済ませば5分、サウナは90分

本題に入る前に、少しだけ私の話をさせてください。

私は出張先のホテル(特にドーミーイン)でのサウナをこよなく愛しているのですが、ふと思ったことがあります。

もし目的が「体の汚れを落としてサッパリする」だけであれば、部屋のシャワーを使えば5分で終わります。
しかし、サウナに入り、水風呂に浸かり、外気浴でぼーっとする……このセットをこなすと90分はかかります。

時間効率だけで見れば、18倍も非効率です。

それでも私が(そして多くのサウナ好きが)時間を費やすのは、その「無駄な時間」の中にこそ、精神的な回復や、新しいアイデアが降りてくる余白があるからです。

ビジネスも同じではないでしょうか。

私たちは長年、「タイパ(タイムパフォーマンス)」を追い求めてきました。
しかし、その揺り戻しが今、起きています。


🤖 AIに任せること、人間が汗をかくこと

実は私、昨日、昨年度の経費精算を完了させました。

例年なら領収書の山と格闘して数日かかっていた作業ですが、今年はAIツールをフル活用したおかげで、なんと昨年の10分の1の時間で終わりました。感動です。

「じゃあ、浮いた時間で何をするか?」

ここが重要です。

浮いた時間で、さらに効率化を進めるのではありません。
「あえて非効率なこと」 に時間を使うのです。

例えば、クライアントとの雑談、部下の悩み相談、あるいは、すぐに役立つかわからない歴史の本を読むこと。

スティーブ・ジョブズもかつて、大学を中退した後にカリグラフィー(文字芸術)の講義に潜り込んでいました。
当時の彼にとって、それは何の役にも立たない「非効率な趣味」でした。
しかし、その時の美的感覚が、後のMacintoshの美しいフォントに繋がったのです。

効率化で生まれた余白を、非効率な「こだわり」に投資する。
これが、個人のブランドを作ります。


🧸 何の役にも立たないロボットが売れる理由

この「非効率への投資」が、ビジネスになっている面白い事例があります。
「LOVOT(ラボット)」 というロボットをご存知でしょうか。

日本のベンチャーが開発したこのロボット、仕事は何もしません
掃除もしなければ、天気も教えてくれない。
それどころか、抱っこをねだったり、嫉妬したりして、めちゃくちゃ手間がかかります。

通常、テクノロジーは「人の手間を減らす(効率化)」ために進化します。
しかしLOVOTは、「愛でる」という情緒的な価値 一点張りで、決して安くない価格にもかかわらず売れています。

ここに、一つのマーケティング理論が当てはまります。

💡ちょこっと理論紹介💡
🎁 サービス・ドミナント・ロジック(S-Dロジック)

従来の「モノ(製品)」の機能に価値があるという考え方に対し、
「モノを使用した時に生まれる経験や文脈」 にこそ価値があるとする理論です。

LOVOTやひとり出版社の本は、単なる「機械」や「紙の束」ではありません。
「世話を焼く体験」や「作り手の物語に参加する体験」という、目に見えない文脈を売っているのです。


⛩️ 伊勢神宮はなぜ「木」で作り直すのか

もう一つ、私の好きな歴史の分野から、究極の「非効率」事例をご紹介します。
伊勢神宮の「式年遷宮」 です。


ご存知の通り、伊勢神宮は20年に一度、社殿を全く同じ仕様で建て替えます。

これ、今の建築技術(コンクリートなど)を使えば、数百年もつ建物を作るのは簡単なはずです。
それをあえて、耐久性の低い木で作り、壊してはまた作る。

なぜこんな非効率なことを、1300年も続けているのでしょうか?

それは、「宮大工の技術(プロセス)」を継承するため です。

長持ちさせすぎると、技術を持った職人が死に絶え、次の世代に技が伝わらなくなります。

💡ちょこっと理論紹介💡
🌀 SECI(セキ)モデル

野中郁次郎氏が提唱したナレッジマネジメントの理論。
マニュアル化できる「形式知」だけでなく、職人の勘やコツといった言語化できない 「暗黙知」 を共有し、新たな知を生み出すプロセスのこと。

伊勢神宮は、あえて「作り続ける」という非効率なプロセスを経ることで、マニュアルでは伝わらない 「暗黙知」 を強制的に次世代へバトンタッチしているのです。


🍵 まとめ:手触りを取り戻す

アウトドアブランドのSnow Peakが人気なのも、スイッチ一つで快適な家がある時代に、わざわざテントを張り火を起こす「不便」を売っているからです。


AIを使えば、経費精算は一瞬です。
でも、「部下と膝を突き合わせて悩みを聴く」とか「あえて非効率な雑談をする」 といった時間は、LOVOTやキャンプと同じで、削ってはいけない「価値ある無駄」なのだと思います。

  • 効率化できる部分は徹底的にAIに任せる

  • その分、人間臭い「こだわり」や「手間」には時間をかける

ひとり出版社や伊勢神宮の事例は、このメリハリこそが、これからの時代の生存戦略だと教えてくれています。

私も、AIで浮いた時間で、歴史の本を読んだり、こうしてnoteを書いたりと、「良い仕事」をするための「良い無駄」 を楽しみたいと思います。

それでは、また。


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効率だけでなく、「ムダ」や「合理性」に人が負けるメカニズムを、行動科学で解き明かした記事です。



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