なぜ、「正解」を実践してもメンバーの目は死んでいくのか
休日に読んだマネジメントの本に書かれていた通り、なるべく相手の話を遮らず、傾聴の姿勢で1on1に臨んでみる。
「最近どう?」「何か困っていることはない?」
けれど、返ってくるのは「特にないです」「大丈夫です」という乾いた言葉だけ。
相手の目はどこか遠くを見ていて、ただこの時間が早く過ぎるのを待っているような空気が流れる。
あるいは、他社で大成功したという最新の評価制度を取り入れてみたものの、現場からは「入力が面倒なだけだ」と冷ややかな反応が返ってきて、結局ただの作業になってしまう。
本で学んだ「正解」を真面目に実践しているはずなのに。
なぜか、やればやるほどチームの空気は冷え、すれ違っていく。
「自分には、リーダーの才能がないのだろうか」と、一人で自分を責めてしまっていませんか。
少しだけ立ち止まって、その奥にある構造を一緒に覗き込んでみましょう。
うまく機能しないのは、あなたが無能だからではありません。
「正しさ」のコピペが生む摩擦
なぜ、教科書通りにやってもうまくいかないのでしょうか。
それは、私たちが本やマニュアルを「絶対的な正解(答え)」として扱おうとしているからです。
ビジネス書やマネジメント手法に書かれているのは、ある特定の環境や前提条件の下でうまくいった成功体験や、美しく整理された理論です。
そこには、あなたの会社とは異なる文脈や、別の歴史を持った組織の前提が存在しています。
その外部から持ってきた「正しさ」を、そのまま今の現場にコピペしようとすれば、必ずどこかで摩擦が起き、組織は静かに軋みを上げます。
地図を捨て、コンパスを翻訳する
本やマニュアルが無意味だと言いたいわけではありません。
それは、迷ったときに立ち返るためのガイドライン(コンパス)としては非常に有効です。
しかし、コンパスは北の方角を教えてくれても、目の前にある水たまりの避け方や、倒木の乗り越え方は教えてくれません。
私たちに必要なのは、本に書かれた手法をそのまま当てはめることではありません。
そこに書かれた汎用的な「原理原則」を読み取り、自分たちの組織の土壌、メンバーの特性、そして今抱えている制約という「文脈」に合わせて、泥臭くアレンジすることです。
「このフレームワーク、うちのチームの今の状況ならどうカスタマイズすれば機能するだろうか」
「この理論の目的だけを借りて、やり方は現場に合うように変えてみよう」
外部の知見という「地図」をヒントにしながら、目の前の現場という「現実」に合わせて、自分たちだけの道を設計し直す。
つまり、現場の言葉への「翻訳」です。
それこそが、リーダーに求められる本当の業務設計なのだと思います。
正解をそのまま当てはめようとする思考を、ほんの少し「自分たちの環境に合わせて翻訳しよう」と切り替えるだけで、見える景色は変わってくるはずです。
思考を深めるための処方箋
この記事を読んで、自分を責めるのをやめ、組織の構造や自分の立ち位置について少し立ち止まって考えてみたいと思った方へ。
思考のOSをアップデートするための記事を処方します。
・なぜ、他社で成功した手法が自社では機能しないのか(構造の理解)
「標準機能でお願いします」という言葉が、現場に静かな影を落とすとき ── 「導入のしやすさ」と「使いやすさ」のあいだで
・「正解」がない環境で、どうガイドラインを使いこなすか(哲学・思考)
不確実性の航海術 #2|地図を捨てて、コンパスを持て ─ TypeⅠ(正解)とTypeⅡ(仮説)の断絶
・同じ職場でも、見えている前提が違うことについて(視座)
認知の設計図 #6|“視座”が変わると、同じ世界が違って見える
・本やシステムの言葉を、現場の文脈にどう落とし込むか(翻訳の技術)
#業務設計者論|翻訳者はしくみの言葉を編む
