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#しくみのスキマ|共創とアジャイルが生む設計の本質

みなさまは、しくみをつくる際、まず何から始められるでしょうか。
おそらく多くの方が、「何をつくるのか」をデザインすること、つまり要件定義から始めると思います。

しかし、実際に取りかかってみると、なかなか進まない。
関係者が多く、前提が曖昧で、言葉の定義すらズレている。
気づけば、設計そのものではなく、その手前の調整や、決まらないことへの弁明に時間を費やしてしまっている。

そんな経験、ありませんか。
その背景には、しくみのスキマが潜んでいます。
業務と業務の間、制度と制度の間、部門と部門の間。
こうした間には、言語化されない前提や、誰のものでもない責任が眠っています。

そして、そこにこそ、設計の余白があり、共創の可能性があるのです。
今日は、要件定義という名の迷路を抜け出し、生きたしくみを作るための、静かな設計論についてお話しします。

要件定義は幻想である

要件を定義してから設計に入る。
そう言われ続けてきた開発の常識は、いまや限界を迎えつつあります。

業務部門に要件定義をお願いしますと依頼しても、出てくるのは理想論か、過去の延長か、あるいは抽象的な「いい感じで」という要望であることが多い。
一方で、設計者が描く構成もまた、技術的な正解や理想に偏りがちです。

どちらも、それぞれの立場では正しいことを言っています。
しかし、それが合わさったときに「現場で使われるもの」になるとは限りません。
なぜなら、机上の空論には、現場の「肌感覚(文脈)」が抜け落ちているからです。

設計とは、紙の上で完結するものではなく、現場で納得されて初めて意味を持ちます。
そのためには、要件定義という「完成形の約束」を交わすのではなく、そこに至るまでの「共創のプロセス」を設計する必要があるのです。

→ 関連:なぜ、正論だけでは現場は動かないのか
動くしくみ、止まるしくみ#1|熱はあるのに、流れないしくみ

現場 × 業務 × しくみ の三位一体

よい設計とは、単にきれいな図面を整えることではありません。
それは、現場・業務・しくみという三つの視点をつなぐ営みです。

現場:実際に手を動かす人の感覚と制約
業務:目的と流れの設計
しくみ:制度・システム・ルールの構造

この三者のどれか一つでも欠けると、しくみは形だけのものになります。
逆に、この三つが有機的に結びつくと、そこに納得感のある設計が生まれます。

そして、この三つの接点こそが、私たちが立つべき「しくみのスキマ」です。
誰も正確に定義できないグレーな領域を、設計者がつなぐ。
それが本来の設計の仕事であり、共創が必要とされる理由なのです。

共創型アジャイル設計のすすめ

では、具体的にどうすればいいのでしょうか。
私が提案したいのは、見せる、募る、共創するというアプローチです。

設計を完璧な要件定義から始める時代は終わりました。
むしろ、ラフな段階で見せることから始める。そして募る。最後に共創する。
これが、私たちが提唱する共創型アジャイル設計の基本です。

① 見せる — 未完成のまま提示する勇気

仮説ベースで構いません。20%の完成度の設計案を出してください。
目的は完成品を見せることではなく、対話の起点をつくることです。

たとえ粗削りでも、目の前に具体的なモノ(たたき台)があることで、人は初めて「いや、そうじゃなくて」という具体的な言葉を持てるようになります。
設計とは、まず見えることから始まるのです。

② 募る — 多様な視点を引き出す

現場、業務、制度、それぞれの視点からフィードバックを募ります。
「ここが動かない」
「こうしたら楽になる」
「実はこの手順がネックなんだ」

こうした声の断片が、スキマに潜む本質的な課題を浮かび上がらせます。
重要なのは、意見を集めることよりも、その背景にある「なぜ、そう思うのか」という思考の流れを共有することです。

③ 共創する — 納得で磨き上げる

集まったフィードバックをもとに設計思想を磨き、優先順位を整理しながら再設計します。
現場で動くか。制度として通るか。しくみとして持続するか。
この三つが交差する地点を探りながら、プロトタイプを育てていく。

この「未完成のループ」を回し続けることで、
結果的に早く良いものができるだけでなく、自分たちが作ったという所有感が生まれ、長く愛されるしくみになります。

→ 関連:未完成のループをどう回し始めるか
#しくみのスキマ |「一点突破」がしくみを広げる法則

完璧な要件定義も、理想的なアーキテクチャも、それだけでは機能しません。
現場の納得がなければ、どんなに美しい設計も図面上のアートに過ぎない。

設計者の美学とは、完璧な資料を作ることではありません。
未完成の段階で見せる勇気と、他者の意見を募る柔軟さ、そして、共に磨き上げていく覚悟の中に宿ります。

見せる・募る・共創するというこの循環は、しくみづくりを単なる業務設計ではなく、文化設計へと変えていきます。
それこそが、私たちが「しくみのスキマ」と呼ぶ領域の本質なのです。

🍵 読後の処方箋:共創の場に立つあなたへ

共創を始めようとすると、様々な「壁」にぶつかるかもしれません。
その壁を乗り越えるための、いくつかの視点を置いておきます。

■ 現場の意見がバラバラでまとまらない時

それぞれの意見は違っても、その奥にある「構造的な正しさ(時間軸など)」は共通しているかもしれません。
意見の対立を構造で解くヒントはこちら。
📎 「仕事が速い雑な人」が出世して、「丁寧な完璧主義者」が損をする理由

■ 「つなぐ」ための設計図が描けない時

バラバラな意見やツールを、どうやって一つの「しくみ」として縫い合わせるか。
その具体的な構造設計のヒントです。

📎 #しくみのスキマ |ハブとスポークでしくみを動かす

■ 現場の言葉がシステム用語と噛み合わない時

「共創」の鍵は、お互いの言葉を通じ合わせる「翻訳」にあります。
間に立つ設計者が持つべき、言葉の技術について。

📎 #業務設計者論|翻訳者はしくみの言葉を編む

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