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「心理的安全性」は「ぬるま湯」のことではない —健全な衝突を避ける組織は、静かに腐っていく

会議室で誰かが提案をしたとき、
本当は「それだと上手くいかないんじゃないか?」と思っているのに、
「いいですね」と頷いてしまう。

そんな経験はないでしょうか。

反対意見を言うと空気が悪くなる。
せっかく彼が頑張って作った資料なのだから、水を差すのはかわいそうだ。

そうやって飲み込んだ言葉は、どこへ行くのでしょうか。

最近、「心理的安全性」という言葉が、
少し誤解されたまま定着しているように感じることがあります。

それは、
「誰も傷つかないこと」
「波風を立てないこと」
が最優先され、お互いに踏み込まない「優しい関係」が築かれている状態です。

しかし、業務設計者の視点で見ると、
それは安全な組織ではありません。

ただの「無関心」な組織です。

今回は、
優しさが組織を腐らせてしまう構造と、その抜け出し方について考えてみます。

優しさという名の「無関心」

本来の心理的安全性とは、
「対人リスクを取っても大丈夫である」という状態を指します。

バカな質問をしても、
ミスを報告しても、
あるいは厳しい指摘をしても、

それによって人間関係が壊れたり、
不当に評価を下げられたりしないという安心感のことです。

しかし、多くの現場では、
「心理的安全性 = 仲良しクラブ」になってしまっています。

「ここの数字、おかしくないですか?」

その一言が言えないのは、なぜでしょうか。

それは、
コト(課題)とヒト(人格)が癒着しているからです。

アウトプットに対する指摘が、
あたかもその人の人格への攻撃のように受け取られてしまう。

だから、相手を尊重しようとすればするほど、
口をつぐむしかなくなる。

その結果、
クオリティの低い企画が通り、
後工程で炎上し、
全員が疲弊する。

その瞬間、私たちは
「目の前の相手」を守るために、
「チームの未来」や「顧客への価値」を見捨てているのです。

それは、優しさではなく、
未来に対する無関心と言えるかもしれません。

摩擦がないところに、熱は生まれない

私たち業務設計者が「しくみ」を作るとき、
あえて 「摩擦」 を設計することがあります。

すべてがスムーズに、
誰も何も言わずに流れるプロセスは、
一見すると効率的に見えます。

しかし、そこには
「思考」が介在する余地がありません。

違和感に気づき、
足を止め、
問い直す。

その摩擦からしか、
磨かれた価値は生まれないからです。

「心理的安全性」とは、
この摩擦を恐れずに起こせる土壌のことです。

「ぬるま湯」から抜け出すために必要なこと

では、どうすれば「ぬるま湯」から抜け出せるのでしょうか。

精神論で
「厳しく言い合おう」
と決めても、たいていは続きません。

必要なのは、
ヒトとコトを切り離すための「クッション(緩衝材)」としてのしくみです。

例えば、

  • 「誰が言ったか」ではなく
    「基準に合っているか」だけを見るチェックリストを用意する

  • 「批判する時間」を会議のアジェンダとして公式に設け、
    役割として指摘させる

そうやって、
人間関係の直接的な衝突を避けながら、
構造に対して遠慮なく摩擦を起こせるように設計するのです。

衝突を恐れないための処方箋

もしあなたの組織が、

静かで、
優しくて、
でもなぜか仕事がうまくいかないのなら。

それは、人間関係が良すぎるのではなく、
関係の「質」が構造的に間違っているのかもしれません。

まずは、
小さな摩擦を許容することから始めてみませんか。

それが、
組織に再び「熱」を灯すための、最初の一歩になるはずです。

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今のモヤモヤした「優しさ」の正体を、
構造から理解し、具体的な設計に落とし込みたい方へ。
以下の記事がヒントになるはずです。

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コトとヒトを切り離し、
健全な議論を生むための「摩擦」の設計論です。
👉 #しくみのスキマ |摩擦がしくみを磨く

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「あうんの呼吸」や「信頼」に頼りすぎた組織が陥る罠と、
その距離感の直し方について。
👉 動かし方のデザイン #2|関係が近すぎるしくみ

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ただ批判するのではなく、
組織を呼吸させるための「問い」の持ち方について。
👉 #問いの設計 |問いの先にあるしくみの呼吸


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