歯は痛くなったら治すではなく、失わないように守っていく
「歳を取ったら歯が抜けるのは仕方ないですよね」
歯科医院で働いていると、そう言われることがある。
たしかに昔は、“年を取る=歯がなくなる”というイメージが強かったと思う。祖父母世代では、総入れ歯の人も珍しくなかった。
でも今は、80代でも自分の歯でしっかり食事をしている人がいる。
逆に、比較的若い世代でも歯を失ってしまう人もいる。
つまり、歯がなくなる原因は「年齢だけ」ではないということだ。
その中でも特に大きいのが、“歯周病”という病気である。
虫歯は知っていても、歯周病については「歯ぐきの病気」くらいのイメージで止まっている人も多い。
だけど実際には、歯周病は日本人が歯を失う大きな原因のひとつだ。
しかも怖いのは、静かに進むこと。
今日は、その歯周病と、なぜメンテナンスが必要なのかについて書いてみたいと思う。
歯周病は、“静かに進む病気”
歯周病のやっかいなところは、“痛みが少ない”ことだと思う。
虫歯の場合、しみたり、ズキズキしたり、「これはまずい」と感じやすい。
でも歯周病は違う。
最初は、
歯ぐきから少し血が出る
朝起きると口の中がネバつく
歯ぐきが少し腫れている気がする
そんな小さな変化から始まる。
しかも、それが毎日続いていると、人は慣れてしまう。
血が出ても、
「強く磨きすぎたかな」
「疲れてるのかな」
くらいで終わってしまう。
ここが怖い。
歯周病は、“静かな病気”だからだ。
本当に壊されるのは「歯」ではなく「骨」
歯周病で問題になるのは、歯そのものだけではない。
“歯を支えている骨”である。
歯は、骨に支えられている。
イメージとしては、木が地面に根を張って立っている感じに近い。
歯周病になると、歯ぐきだけでなく、その土台である骨が少しずつ壊されていく。
家で例えるなら、壁ではなく“基礎”が崩れていく病気だ。
だから、最初はそこまで大きな変化を感じない。
普通に噛める。
普通に食事できる。
でも、見えないところで支えが減っていく。
そしてある時、
歯が揺れる
硬いものが噛みにくい
違和感がある
そう感じ始める。
ここまで来ると、かなり進行しているケースも少なくない。
さらに進むと、最終的には歯を残せなくなる。
つまり、“歯が悪くなった”というより、“歯を支えられなくなった”状態になるわけだ。
「痛くないから放置」が一番危ない
歯科医院で患者さんと話していると、
「痛くなかったから放置してました」
という言葉を、本当によく聞く。
でも、それは無理もないと思う。
人は痛みがないと、なかなか行動できない。
忙しかったり、疲れていたり、仕事や家のことで頭がいっぱいだったりすると、歯の優先順位はどうしても下がる。
しかも歯医者には、
怖い
痛そう
行きづらい
そんなイメージもある。
だから、
「落ち着いたら行こう」
「そのうち行こう」
となってしまう。
歯周病は、その“後回し”の時間の中で進んでいく病気なんだと思う。
歯周病は「年齢」だけの問題ではない
歯周病というと、
「年配の人の病気」
というイメージを持つ人も多いと思う。
でも実際には、20代や30代でも歯ぐきが腫れていたり、出血していたりする人は珍しくない。
特に最近は、
ストレス
睡眠不足
食生活の乱れ
喫煙
口呼吸
間食の増加
疲労
こういった生活習慣が積み重なって、若い世代でも歯ぐきの状態が悪くなっているケースがある。
歯周病は、“歯だけの病気”というより、生活全体が少しずつ反映される病気なのかもしれない。
例えば、疲れている時に歯ぐきが腫れやすくなる人もいる。
風邪を引いた時、口の中が荒れる人もいる。
口の中って、意外と体調の影響を受けやすい。
だから、歯磨きだけ頑張れば全部解決する、というわけでもない。
もちろん歯磨きは大切。
でも、
睡眠
食事
ストレス管理
定期的なチェック
そういう“生活全体”も、歯周病予防にはかなり関わっている。
歯周病と全身の関係
さらに最近では、歯周病と“全身の健康”との関係も注目されるようになってきている。
例えば、
糖尿病
心臓や血管の病気
誤嚥性肺炎
などとの関連が研究されている。
特に糖尿病とは相互に影響すると言われることも多く、血糖コントロールが悪化すると歯ぐきの炎症が強くなりやすく、逆に歯周病の炎症が続くことで全身にも負担がかかる可能性があると考えられている。
つまり、口の中だけを切り離して考える時代ではなくなってきている。
歯ぐきの状態を見ることが、全身の健康状態を見直すきっかけになることもある。
「口の中は、体の入口」
という言葉があるけれど、本当にその通りなのかもしれない。
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