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『その処方,大丈夫ですか? 今さら聞けない薬の常識』より―序

『その処方,大丈夫ですか? 今さら聞けない薬の常識』(著:中西康大)を7月10日に発刊しました! まだ本書をご覧になっていない方々のために「序」をウェブ版として全文公開します.
ぜひ,ご一読ください.(編集部)

本書を手に取っていただき,まことにありがとうございます.

近年,医療現場で疑問点などが生じた場合,多くの医療従事者が,AI や動画配信サービス,検索エンジンなどのインターネットコンテンツを活用し,情報収集を行っていると思います.かくいう私も,ネット検索は手軽で有用な手段として頻繁に利用させていただいております.これからの時代になくてはならないものだと思います.

少々唐突な質問ですが,ネット検索による情報収集と,本やテレビ,新聞といった情報収集による学習方法にはどのような違いがあると思われますか?あまり考えたことはないと思いますが,実は,ネット検索というのは,「能動的な学習」になります.自分が調べようと思って,調べたものを手に入れることができます.

一方で,書籍やテレビ,新聞などによる情報収集には,能動学習にくわえて,「受動的な学習」の機会を与えてくれます.

たとえば,メジャーリーガー大谷翔平選手の活躍を知りたいと思ったとします.ネット検索だと,知りたい結果がダイレクトに表示され,迅速に情報を得ることができます.一方で,テレビで結果を確認するためにスポーツ番組を視聴したとすると,目的とする大谷翔平選手の結果以外にも,ほかのメジャーリーガーや国内外のほかのスポーツを含めた情報も見聞きできます.

さらには,政治や天気予報など,自分が調べようと思った分野以外の情報も見聞きできます.迅速性には欠けるかもしれませんが,求めている情報以外の情報も受動的に得ることができます.これが,「受動的な学習」です.

こうした偶然の出会いによる受動的な学習は,知識の幅を広げ,新たな興味や視点の習得につながります.このような学びは,本書を含む書籍やテレビ,新聞などの特徴と言えるでしょう.
もちろん,どちらが優れているというものではありません.ネット検索には迅速性と効率性があり,書籍には思いがけない学びにつながるものがあります.それぞれに異なる価値があります.

このような違いを十分に意識しないまま,ネット検索への過度な依存は,こうした学びの機会を失ってしまう可能性があり,少々もったいないと思っています.

本書もまた,そのような「受動的な学習」を大切にしてもらいたいという思いを込めて執筆させていただきました.

「抗菌薬について知りたいから」「鎮痛薬について理解を深めたいから」それで手に取っていただけたのかもしれません.しかし,目的とするページ以外の内容にも目を通していただくことで,思いがけない発見や新たな知識を得ていただければ幸いです.

そのような偶然の学びの機会を大切にしていただけるよう,歯科医師の先生方はもちろん,コメディカルの方々にも読みやすくわかりやすい構成を心がけて執筆いたしました.

皆様の今後の診療にお役立ていただければ幸いです.

最後に,本書の執筆にあたり多大なるご指導,ご支援を賜りました諸先生方に深く感謝申し上げます.

大学院においてご指導いただき,博士(医学)取得へ導いてくださいました池上総合病院金子明寛先生,研究の基礎から,理論の構築方法,物事を深く考察する姿勢をご教示くださいました筑波大学 野村暢彦教授に,心より感謝申し上げます.

また,本書執筆の契機となるご縁をいただきました東海大学医学部付属八王子病院故坂本春生先生,そして,現在もご指導をたまわっております東海大学医学部付属病院 青木隆幸教授,東海大学医学部付属八王子病院 唐木田一成教授に厚く御礼申し上げます.

2026年6月
中 西 康 大


関連リンク
『その処方,大丈夫ですか? 今さら聞けない薬の常識』(中西
康大 著)

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