毎朝の「お仕事行かないで!!」|親も子供から自立せよ 〜安全基地の科学〜
泣いて泣いて、
全力で引き止めたのに。
パパの姿が消えた瞬間、
けろっと遊び始める。
あの涙は、
いったい何だったのか。
拙者も最初は
正直、少しだけ傷ついておった。
朝。
玄関で靴を履こうとした瞬間、
長男坊が足にしがみつく。
「いかないでぇぇぇ!!」
全体重をかけて、
ふくらはぎにぶら下がる。
次男坊も
空気を読んだのか読んでないのか、
便乗して反対の足に取りつく。
両足に子供がぶら下がった状態で
拙者は玄関に立ち尽くした。
控えめに申して、地獄絵図でござる。
「パパ、いっちゃやだ」
長男坊の目は真っ赤。
仕事には行かねばならぬが、
胸が痛い。
嫁殿に子供らを引き剥がしてもらい、
閉まるドアの向こうから
この世の終わりのような泣き声が響く。
罪悪感で足が重い。
「やっぱり今日は休もうか……」
と、ぐるぐる考えながら
駅に着く頃、嫁殿からLINEが来た。
「もう普通に遊んでる笑」
…………え?
写真が添えられておった。
さっきまで
絶望の淵にいたはずの長男坊が、
満面の笑みでブロックを積んでおる。
お主ら、
さっきの涙は何だったのじゃ。
拙者の罪悪感を返してくれ。
しかし、科学を覗いてみたら、
あの涙の正体は
拙者の想像よりずっと、
深いものでござった。
あの泣き声は「信頼の叫び」だった
ジョン・ボウルビィという
精神科医がおる。
「愛着理論(アタッチメント理論)」
の生みの親じゃ。
この人が明らかにしたことが、
拙者の胸をえぐった。
ボウルビィ氏によれば、
子供が親との別れ際に泣くのは
「プロテスト(抗議)」
という、立派な愛着行動だそうじゃ。
泣く。しがみつく。
これらはすべて、
「大好きな人との距離を
縮めようとする本能」なのだと。
つまり、あの玄関での号泣は
わがままでも、演技でもない。
「あなたは、ぼくにとって
絶対的に安全な存在です
だから離れるのが怖いんです」
という、信頼の叫び声だったのでござる。
子供にとって親は
「安全基地(セキュア・ベース)」
であるという概念がある。
安全基地が離れようとすると、
全力で引き止める。
それが生存本能じゃ。
あの涙を翻訳すると、こうなる。
「パパは、ぼくの安全基地なんだよ。
どこにも行かないで」
……泣ける。
拙者を困らせたかったのではなく、
「お主が大事だ」と、
全身で叫んでおったのじゃな。
じゃあ、なぜ「秒」で泣き止むのか
ここで疑問が残る。
あれだけ泣いたのに、
パパが消えた途端に遊ぶのはなぜか。
これにも、
ちゃんと脳の仕組みが関係しておる。
以前の巻物で書いた
「ブレーキがないポルシェ」
の話を思い出してくだされ。
幼児の前頭前野は、まだ基礎工事中。
「過去を引きずる力」も
「未来を心配する力」も未熟じゃ。
あの子たちの脳は、
「今、目の前にある刺激」に
全力で反応するようにできている。
* パパが目の前にいる。
→ 「離れる恐怖」に全力で反応(号泣)。
* パパの姿が消えた。
→ 目の前に「ブロック」がある。
→ 「楽しそうな刺激」に全神経が上書き。
これは「忘れた」のではない。
脳のチャンネルが切り替わっただけ。
テレビのチャンネルを変えたら
前の番組が消えるのと同じ仕組みじゃ。
つまり、
「泣いて引き止めたのに、すぐ泣き止む」
これは矛盾ではない。
どちらも「正常」であり、
どちらの瞬間も「本気」でござる。
親も、子供から「自立」せよ
ここで、最も大事な
「忍術」の話をする。
「ミラーニューロン」の話じゃ。
人間の脳には、
目の前の人の感情を
自動的にコピーする細胞がある。
玄関で「行かないで」と泣かれた時、
親の心に「罪悪感」や「迷い」が生まれる。
「あぁ、かわいそうに」
「やっぱり後ろ髪引かれるな」
この「迷い」が、
親の表情や声に微かに滲む。
すると、子供のミラーニューロンは
それを瞬時にコピーするのじゃ。
「パパが不安そうにしてる。
ということは、
ここは本当に危険な場所なんだ!」
結果、子供のパニックは
さらに激しくなる。
だからこそ、
「親が子供から自立する」
ことが重要になる。
「もう少しだけ抱きしめたい」
という欲求の主語は、
子供ではなく、
自分の不安を解消したい「親」ではないか?
子供は、パパの姿が見えなくなれば
次の世界に飛び込む力を持っておる。
親がすべきは、
子供をコントロールする「彫刻家」ではなく、
環境(園や嫁殿)にバトンタッチする
「庭師」に徹することじゃ。
親が自分の人生(仕事や趣味)へ
迷いなく切り替えられる姿。
その「自立」こそが、
ミラーニューロンを通じて
子供に最高の「安心」を届けるのでござる
玄関のドラマは、100点の証拠
あの「秒で泣き止む」姿は、
拙者への信頼の証でござった。
「パパは必ず帰ってくる」
その確信があるから、
安心して次の遊びに移れる。
もし本当に信頼がなければ、
姿が見えなくなっても
ずっと不安な顔をしておるはずじゃ。
泣いて引き止めて、
でも泣き止んで遊べる。
これは、
「お主の愛情が100点満点で届いている」
という証明書のようなもの。
だから、
明日の朝もしがみつかれたら。
罪悪感は、一旦しまっておけ。
代わりに、穏やかに言え。
「行ってくるね。必ず帰ってくるよ」
迷わず、笑って、ドアを閉めよ。
お主の「迷いのない笑顔」が、
あの子の脳に「安全」の信号を送る。
そして帰宅した時、
全力で抱きしめてやれ。
それが安全基地の「再起動」じゃ。
お主は、あの子にとって
世界でいちばん安全な場所。
胸を張って、自分の戦場へ向かうがよい。
ニンニン!
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#エッセイ #育児エッセイ #パパ育児 #分離不安 #愛着理論 #ミラーニューロン
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