【プロジェクトストーリー】「ラベラは止まるもの」という業界の常識を覆す。5年半をかけて挑んだ、止まらない次世代アセプティックラインの開発
みなさん、こんにちは!シブヤ公式note編集部です。✨
澁谷工業(シブヤ)の強みは、開発から製造までを一貫して手がける総合エンジニアリング力にあります。しかし時には、これまでの標準や業界の常識が一切通用しない、未知の難題に正面から挑まなければならない局面が訪れます。
それが、深刻化する人手不足という社会課題を見据え、複数の企業がスクラムを組んで挑んだ「トリプルブロック/シュリンクブロックシステム」——通称「止まらないラベラ」の開発プロジェクトです。
💡「トリプルブロック/シュリンクブロックシステム」とは?
大手飲料メーカー、フジシール、澁谷工業の3社による共同開発プロジェクト。約5年半の歳月をかけ、無菌(アセプティック)環境の充填部からラベラまでを、バッファー(貯留ゾーン)なしで直結させるシステムを構築しました。業界の常識を覆す「止まらないラベラ」を開発し、充填システムと一体化(ドッキング)させることで、大幅な省スペース化と省人化を実現した次世代アセプティックラインです。
今回は、このプロジェクトに携わった5名のプロフェッショナルが、それぞれの持ち場でどのような壁に直面し、いかに知見を掛け合わせて突破していったのかをお伝えします。
今までの常識を覆す、未知なる領域への挑戦
顧客から澁谷工業に寄せられたのは、無菌環境の充填部からラベラまでを、バッファーなしで直結させたいという要望でした。毎分830本(830BPM)という処理速度のなかに、資材やノリの要因で停止しやすいラベラを、止めずに組み込む前例のない要件です。
なぜ、それほど高い壁にあえて挑むのか。プロジェクト全体を率いるマネジメントリーダーのY.N.さんは、その背景をこう語ります。

Y.N.さん:「単なる省スペース化やコスト削減の話ではありません。生産現場の人手不足が深刻化するなか、無人化・省人化を進める次世代アセプティックラインを構想する上で、この『機械同士の直結(ブロック化)』はどうしても逃げられない壁だったんです。しかも、アセプティックラインは一度止まると復旧に莫大な時間をロスし、稼働率に多大な影響が生じます。絶対に止まらないラインを構築することが、我々に課せられた至上命題でした。」
しかし、この難題は現場に大きな戸惑いを生みます。「ラベラは資材やノリで頻繁に止まるもの」。それは、メーカーも顧客も共有してきた業界の常識。だからこそ間にバッファを設けるのが当たり前でした。その常識をバッファーレスで覆すと聞いたとき、メカ設計のS.S.さんは、思わず耳を疑ったといいます。

S.S.さん:「現場のメカ設計の視点からすると、ラベラは止まるものというのが、我々もお客様も持っていた共通認識です。だからこそ、間にバッファを設けて停止時のリスクを吸収するのが当たり前だった。それをバッファーレスで直結すると聞いた時は、正直なところ『本当にやるのか、ラインとして成立するのか』と耳を疑いましたし、非常に高い壁を感じました。」
制御の側からも「どこから手をつけるべきか頭を抱えるほどの難易度だった」という声が上がるなか、誰も明確な答えを持たない挑戦が、静かに幕を開けました。
他企業との知見を持ち合わせて、繰り返されたトライ&エラー
プロジェクト初期、フジシール社の設備を澁谷工業の工場に持ち込み、春から冬にかけて合同テストが実施されました。大手飲料メーカー、フジシール、澁谷工業。企業文化も立場も異なる3社が、機密を共有しながら、目指すべき姿を細部まですり合わせていきます。プロジェクトリーダーのK.K.さんは、その地道な日々を振り返ります。

K.K.さん:「あの合同テストの期間は、本当に地道な作業の連続でしたね。3社共同開発であり、目標が『次世代高効率ライン』と非常に高水準に設定されていました。各社それぞれの立場や思いが存在し、初期段階では技術革新に対する認識のすり合わせに苦労しました。実際にフジシール様の設備を持ち込み、春から冬にかけて、目指す姿や課題を細部に至るまで密に検証し続けたんです。」
検証の結果、既存の仕様では要求を満たせないことが判明します。他社のベース機を活かしつつも、ロールラベラは「止まらないラベラ」へと根本から作り直す決断が下されました。メカ設計がデザインを見直せば、制御もまたゼロベースでの構築を迫られる。制御システムのS.S.さんにとっても、常識の通用しない日々が続きます。

S.S.さん:「メカ側がデザインを根本から見直すということは、我々システム制御側もゼロベースでの構築を意味します。バッファーレス環境では、貯留で稼げる時間がなく、極端に短い距離の中でボトルが到着する。その前に、完璧にコントロールされたコンベア制御を組まなければなりません。現地試運転では私たちも現場に張り付き、動きを見ながらプログラムを細かく修正していく。既存の制御の常識が通用しないなかで、ひたすら検証を繰り返す日々でした。」
妥協なく仕様変更とテストに向き合い続ける先輩たちの姿は、当時まだ若手だったメンバーの意識をも、確かに変えていきました。
全員でゴールを目指す、横のつながりの強さがシブヤの真骨頂
実機設計フェーズへ移ると、社内の別部署から数十名のメンバーがプロジェクトに合流します。新規要素の塊のような、複雑で前例のない構成図。プロジェクトリーダーは当初、「こんなの実現できるわけがない」という現場からの強い反発を、内心警戒していました。
ところが、フタを開けてみれば反応は正反対。合流した各部門のプロたちは、システム構想図を見た瞬間に顔つきを変え、「ここはこう組めばいける」「この制御ならうちの技術が使える」と即座に手を動かし始めたのです。その熱気を最前線で浴びたのが、若手のY.O.さんでした。

Y.O.さん:「あの時の現場の空気感は凄まじかったです。普段は関わりの薄い部署の壁などは一切なくて、数十人の技術者が『どうすればこの常識外れの要件をクリアできるか』という一点だけで繋がっている。誰も『自分の担当外だ』なんて素振りを見せない雰囲気に、私自身も『ただの若手として傍観者でいる場合じゃない』と、完全に当事者としてのスイッチが入りました。必死で先輩たちに食らいついていきましたね。」
要求が難解であるほど、部署間の壁が消え、まるで一つの生き物のように動き出すチーム。社内に留まらず、パートナー企業ともその熱量を共有できたこと。この境界を越えたスクラム体制こそが、シブヤの真骨頂であり、最強の武器でした。
「止まらないインフラ」が切り拓く新しい未来
約5年半の開発期間を経て、「止まらないラベラ」を組み込んだシステムがついに稼働を開始しました。実現したのは、従来比20〜30%の省スペース化。そして、数年前は15人体制だったオペレーションを、3人相当へと大幅に省人化する成果です。
やり切ったプロジェクトリーダーは「どんなに前例のない難題でも、仲間と実直に向き合い続ければ絶対に形にできる、揺るぎない自信になった」と語り、若手のメンバーもまた「次は自分が中心となって、次世代の技術の壁に挑みたい」と前を見据えます。そして5年半の歩みの意味を、マネジメントリーダーのY.N.さんがこう締めくくりました。

Y.N.さん:「『ラベラは止めるもの』という業界の常識を、我々は5年半かけて『止まらないもの』へと進化させました。これは単なる一製品の開発成功ではありません。深刻な人手不足という社会課題に対し、今後の供給インフラの『次世代無人化・省人化』を牽引していくための、当社の揺るぎない技術資産と組織のDNAになったと確信しています。」
📝 編集部のあとがき
「ラベラは止まるもの」
メーカーも顧客も当たり前に共有してきた業界の常識を、バッファーレス直結という真っ向勝負で覆す、5年半におよぶ前例のない挑戦の記録でした。
企業文化も立場も異なる3社が、機密を共有しながら手探りで重ねたトライ&エラー。そして実機フェーズで数十名が合流した瞬間、部署の壁が消え、一つの生き物のように動き出したチーム。その熱量が、無謀にも思えた難題を、確かな成果へと変えていきました。
20〜30%の省スペース化、15人から3人相当への省人化。これは一製品の成功にとどまらず、深刻な人手不足という社会課題に立ち向かう、次世代の供給インフラそのものです。「止まらないラベラ」が切り拓くこれからの未来に、どうぞご期待ください。


