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隕石の伯父さん 大筒編

 忘れたいことはない。すでにすっかり忘れていたくらいだ。だが何かの拍子に思いがけず開いてしまう記憶の岩戸がある。

「うろたえるでない。ただの隕石じゃ」
わらわの言葉に平静を装っていた顔を引き攣らせる真田をはじめとする者ども。修行が足りぬ。
あの日明智十兵衛を唆して伯父さんのいた寺に隕石を飛ばさせた。弾は惜しくも逸れたがその後の成り行きは周知の通りだ。いや違う。わらわはただ星に祈ってみただけ。父さんの仇を討ちたい。でもできない。せめて空から石でも降ればいいのに。わらわが強く念じたのと夜空にほうき星が尾を引いたののどちらが先だったか。本気ではなかった。伯父さんごめんなさい。事件のあとで手を合わせて再び祈った。

 時代と事態は目まぐるしく変遷した。平穏な日々の訪れはあっただろうか。あの日の後で隕石よ降れと祈ったことはなかった。火の粉はいつも飛び交っていた。

とにかく隕石は落ちてきた。あの日の祈りがようやく叶えられたのだった。


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