Photo by
suzukiyutaka
額に入った夕焼け ②
「ただいま姉さん。足の具合はどう?」
数年ぶりに会った姉はさほど不自由そうではないものの疲労感を漂わせている。
「途中で会わなかった? あの人有名なクリエイターよ」
三脚を手にした男が実家の玄関から出てきたのは見間違えでなかったのか。
何それ。地元だけで知られた文化人だろうか。逆に都会で多少活躍しても故郷で温かく迎えられるとは限らない、自分のように。言葉を飲みこんだ。
「悪いんだけど、あんたを泊める布団の用意がないから新しくできた宿を紹介するね」
絶句した。何のために半日かけて帰郷したんだろう。庭の物干しには姉一人ぶんにしては多い洗濯物が風に揺れている。
新しい宿とは高層マンションのごとく夕日を遮っているあれだろうか。予想は再び裏切られる。リノベートされた母校は往時の姿をとどめていた。廊下にぎっしり展示されたフレームが張り出された作品をしのばせた。私が揮った永吉くんの永とか。
「やあ来たね」
アイツだった。この人がカメラマンのはずがない。指が震えてシャッターも押せないはずだ。「夕日がキレイに見えたのに。ビルが建つ前は」
展示された写真にビルはなかった。
「いつ撮ったのですか」
「ついさっきです。記憶のなかの風景を念写しました」
「ききましたよ。有名におなりになったそうですね」
「大した儲けになりません。売れないし、オーナーにピンハネされますし」
キレるとすぐに暴れた元夫の小田永吉は淡々と答える。
姉さんを頼みますね。
用が済んだ私は踵を返した。
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