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紫陽花男子 ①

「コイツ蝸牛探してやがる」
背後からさもバカにしたような罵声を浴びた。振り向かなくてもタケシとその一味であることは明白だった。
「ち、違うよ」
校庭の隅で紫陽花の葉を一枚一枚めくっていた私は図星を突かれて口ごもる。
「あっ、そこに!」
「えっ?」
飛び退くと、運動靴の下で何かが壊れる感触があった。


「紫陽花を見ると苦い思いがこみあげるんだ」
「何があったの」
陽花はるかが大きな瞳をぐるりとめぐらせた。小学校の同級生だ。私は結局静香でなく陽花を選んだ。
「ごめんなさいね貴方」
「何が?」
陽花が座敷に臨んだ薮を示すとそこには紫陽花がビッシリと植えられていた。

「始めからあたしを探していたと正直に言えばよかったのに」
浴衣からするりと脱皮するようにあのとき砕けた殻のない姿をあらわにした。

 あのあとクラスメイトと殴りあった。いや殴られて皮膚が紫陽花色に腫れた。性格も消極的になったのだ。

「まだ間に合うわ。静香さんなら教室で待っているから」

410字


教室に戻るとタケシが「御免な」と蝸牛をくれた。


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