狐火バーベキュー ①
メモリアルパークは駅から近い方がいい。免許を返納した後も足腰が弱ってからも墓参りや墓掃除に出かける必要はある。問題は若いもんが墓参りを面倒がることだ。自分がそこに入ることをイメージできないしお盆周辺の休日はもう少し自由に過ごしたいだと? 隣駅のファミレスでランチを奢ってやると言っても反応は鈍い。駅名がナントカ霊園前だとマンションの売れ行きもイマイチらしい。都心から乗り換えて三時間なのもネックかも知れないが。レジャーランドとかテーマパークに出かけるのならもう少しテンションが上がるに違いない。そんなこんなの夏の朝刊の片隅に『狐火観察ツアー』の文字が踊っていた。開催地は墓地のそばだ。自由研究にどうだろうと水を向けると、もう一人の孫が「あたしはこっちがいい」と『河原でバーベキュー』を指差す。これも近くじゃないかみんなで行こうや。
(このままの流れだと墓地の狐火でバーベキューを楽しんでいたら三途の河原でしたオチしか、)
410字
山の田線メモリアパーク駅は予想外に威容を誇っていた。駅ビルは巨大な納骨堂で各階へエレベーターと歩く歩道が縦横に走っている。我が家の墓地は旧市街地のさびれた公園エリアだ。隣接する河原公園に着くなりバーベキュー中止のお知らせを目にして落胆する子どもたち。
「ここも随分変わってしまいました」
着流しを引きずった女が嘆く。
「あれです」
見れば駅の改札口の先にグランドピアノ。
自由に弾いて下さいをまに受けて下手な練習を延々と続けるのですね?子どもが玩具にしても親は止めもしないのですね?
女は悲しそうに首を振る。近所の坊やが音大ピアノ科に合格して以来、リスト超絶技巧練習曲「鬼火」が響いていとか。上手い。だが少し煩い。
「人の指でないことがバレる恐怖があるのですわ」
女の着物の裾からシッポが見えた。
孫たちは網と食材を持っていた。私の手には線香に点火するためのチャッカマンがあった。あとは炭? 駅構内には大きな黒い物体がたたずんでいた。
(オチ部分410字)
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