天穹
一人の時間が必要になったのは、 いつからだったんだろう。
気がついたら、 誰とも話したくない日が増えていた。
静かな場所に身を置かないと、 自分の輪郭がぼやけてしまうような感覚があった。
昔はもっとすぐに取り戻せたのに、 今は時間がかかるようになった。
私はいったい、 何に押しつぶされそうになっているんだろう。
責任かもしれない。
期待かもしれない。
長い間抱えてきた孤独かもしれない。
誰にも言えない秘密かもしれない。
あるいは、 “ちゃんとしなきゃ”と 自分を追い立て続けてきた年月の重さかもしれない。
■ 私は何を求めて空を見上げているのか
空を見上げるのが好きだ。
何故か。
私は“境界のないもの”を求めているのだと思ってる。
誰の声も届かない場所。
誰の期待も触れない高さ。
私の心が呼吸できる広さ。
空は、 私が私に戻るための 静かな入り口みたいなもの。
■ 私の心の風景の色
私の心の中には、 はっきりした形はないのに、 確かに“そこにある”景色が広がっている。
その風景は、 淡くて、静かで、 ゆっくりと溶け合う色でできている。
● 灰みがかった白
完全な白ではなく、 少しだけ影を含んだ白。 静けさと余白の色。 言葉になる前の気持ちが漂う色。
● くすんだ蒼
夕方の手前の空のような、 少し疲れた蒼。 胸の奥に沈んでいる問いの色。
● 薄い銀色
風の色。 触れられないけれど、 確かにそこにある気配の色。 「ここにいていいよ」と そっと言ってくれるような色。
● かすかな金色
遠くにある光の色。 触れられないけれど、 そこに向かって歩けば いつか自分に戻れる気がする光。
■ 私の心の風景は、色がゆっくりと移ろう
白から蒼へ、 蒼から銀へ、 銀から金へ。
境界はなく、 ただ静かに溶け合っている。
その曖昧さこそが、 今の私の心の状態そのもの。
■ 私は今、何を思っている
「私はどこにいるんだろう」
「私は何を失ったんだろう」
「私は何を求めているんだろう」
そんな問いが、 胸の奥で静かに波のように揺れている。
そしてその奥に、 もっと深くて、もっと静かな願いがある。
私は、私というもの、に戻りたい。
その存在はどこにいる。
すぐ傍にいるようで
途方もなく遠くに感じたりする。
境界線がないものは
空だけじゃなくて私もだ。
