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【初回解説】価値観ずれまくり!「ウメ星デンカ」との邂逅/藤子Fの未知との遭遇④

「藤子Fの未知との遭遇」というテーマで、地球に突如現れた宇宙人(UFO)との邂逅について描かれている藤子作品を紹介している。

藤子作品における宇宙人は、地球に住む私たちとは全く異なる価値観を持っていて、何を考えているかその言動が今一つ理解できないため、そこにドラマやトラブルが生じることになる。

そうした価値観の違いを日常に持ち込んでギャグ漫画としている作品がある。それが「ウメ星デンカ」である。

藤子Fノートでは、「ウメ星デンカ」についてこれまで12本の記事をアップさせてきたが、地球に初めてデンカたちが降り立った時のお話をきちんと記事化させてこなかった。

そこで本稿では、「藤子Fの未知との遭遇」の範疇として、ウメ星の王国一家と中村家の邂逅の場面をプレイバックしたい。

なお、「ウメ星デンカ」は最大7誌で連載されており、7誌全てで出会いのお話が描かれている。それら前後編の二本の記事に分けて、全て網羅的に取り上げていきたい。



まずは簡単に「ウメ星デンカ」の概略から。

「ウメ星デンカ」は、1968年に「パーマン」の連載を引き継ぐ形で、小学館の学年別学習誌で掲載された。すぐにテレビアニメ化もされて、「週刊少年サンデー」にも連載が拡大された。(*サンデーは「21エモン」の後継となる)

連載は一年半ほど続くのだが、最後の数か月は「ドラえもん」と連載期間が重なったこともあり、藤子先生の盟友であったしのだひでお先生が作画を担当されている作品もある。

連載状況をここに一覧させておく。

「小学二年生」1968年9月号~1970年3月号(全19話)
*1970年1~3月号はしのだ先生の作画
「小学三年生」1968年9月号~1970年2月号(全18話)
*1970年1~2月号はしのだ先生の作画
「小学一年生」1968年9月号~1970年2月号(全19話)
*1970年1~2月号はしのだ先生の作画
「小学四年生」1968年9月号~1969年12月号(全15話)
*初回は「小学三年生」と同時掲載
「よいこ」1968年10月号~1969年12月号(全15話)
「幼稚園」1968年10月号~1969年12月号(全15話)
「週刊少年サンデー」1969年7号~35号(全29話)
「月刊絵本」で3話掲載 
総話数133話

この中で初回(邂逅編)のエピソードが5話あり、さらに遅れて連載が始まったサンデーでは、デンカたちを記者がインタビューするという形式で、ウメ星一家が地球に来る前のお話が紹介されている。

まず本稿では、「てんとう虫コミックス」第1巻の第1話として収録された、「ウメ星デンカ」初回の基本形となるエピソードをしっかりと見ていく。


『デンカがきた夜』(初出:ぼくデンカだよ)
「小学二年生」1968年9月号/大全集1巻

「小学二年生」では、1968年8月号まで「パーマン」を連載していたが、そこで来月から「ウメ星デンカ」が始まるという予告が掲載される。予告では、デンカの両親である王さまとおきさきは、「おとうさん」と「おかあさん」と表記されている。


初回の内容を大枠だけ述べてしまうと、まず前半では、地球に飛来したウメ星デンカたちと最初に遭遇した中村太郎が、友人や家族にデンカたち宇宙人の存在を知らせようとするのだが、まるで信じて貰えないという流れが描かれる。

後半はようやく家族の知るところになり、父親がデンカたちを追い出そうとするのだが、彼らが地球にやってきたやんごとなき事情を知って、一家への居候を認めることになる。

終始ドタバタしたコメディだが、基本線としては異文化ギャップによる笑いがテーマとなっている。

ただし、異文化ギャップと一口に言っても、その中身は「地球人と宇宙人」、「庶民と貴族」という二重のギャップが存在している。デンカたちは宇宙人なので地球(日本)の文化を知る由もなく、加えて世間知らずな王族でもあるので、そこにもズレが生じることになるのだ。



空飛ぶ円盤に興味津々の少年・中村太郎は、夜中に父親の寝相の悪さで起こされてしまい、庭に出てみると、円盤が落下する場面に遭遇する。落下の衝撃で吹っ飛ばされてしまい、庭で気絶して朝になり、寝相が悪いと父親に言われる。

昨晩の円盤の話をしても、家族や友人の誰にも信じて貰えないので、一人落下地点を捜索すると、近くの林の中に円盤が落ちたと思しき穴を発見する。

掘り出してみると、円盤ではなく、ただの甕(カメ)。それを部屋へと持ち帰ってみると、中からデンカと王さまとおきさきの3人が姿を見せる。

ここで、「長い旅だった」「人間の住める星が見つかって良かった」と口にしていて、何か訳があって地球に来たことが示唆される。


デンカは太郎の部屋を見て「それにしても汚い家だ」と感想を述べる。王さまは「贅沢を言ってはいかんぞ」と窘(たしな)め、おきさきは「ここからここが私たちの家でありまする」と、一方的に中村家に住むことを決めてしまう。

太郎が「僕の部屋だ」と抗議すると、「いいんだ、僕らは構わない」とまるで話にならない。・・・そう、このまるで話にならない感じの出し方が、いかにも藤子的である。

さらにデンカたちは、荷物をカメから取り出して太郎の部屋を王室仕様にしたり、勝手に風呂に入ったり、ご飯を食べたりと、すっかり中村家をわが物にしていく。

太郎は抵抗したり、両親にデンカたちの存在を告げようとするのだが、うまいことすれ違って、気付かれないままに「乗っ取り(パラサイト)」が成立してしまう。

ちょっと面白いのは、太郎が両親への説明を諦めてしまうシーン。デンカたちが部屋を汚したのに、濡れ衣で太郎のせいにされるのだが、太郎は「言い訳はしません」と言って掃除を始めたりしている。


母親がダメなら父親に伝えようと会社に電話をするのだが、「テレビの話なら後にしてね」と相手にされない。ただこの父親が帰宅して、ようやく我が家の異変に気が付いていくことになる。具体的には・・・

・物干しにウメ星の旗が立てられており、不審に思う。
・家に入るとおきさきがいて、人の家に間違えて入ってしまったと勘違いする
・トイレに家族以外の人が入っている気配
・風呂に入ると王さまが先に湯舟に浸かっていて、背中を流すよう命じられる

そして、夕ご飯が何者かに食べられてしまう事態となり、ようやく両親は「宇宙人が来ている」という太郎の言い分を確かめに二階に上がる。

ここで中村家とウメ星王室が正式にご対面。「これでわかったろ」という太郎。太郎の兼ねてからの訴えを認めて、両親は「疑ったりして(ごめん)」と謝るのであった。


ここからが物語後半戦。突然現れた宇宙人が太郎の部屋を王室に変えてしまって、今後も居座ろうとするので、父親が何とかして追い出そうとする。

世間知らずの王族+宇宙人であるデンカたちなので、勝手に押しかけておきながら、「君たちのような家来ができて幸せである」「さっきのご飯美味しかったよ」と、かなり図々しい。

父親が出ていけと凄んでも、「無礼者、下がれっ」とどうにも嚙み合わない。仕方なく警察に電話して「宇宙人が家を占領した」と訴えるのだが、見事に大笑いされるだけ。

太郎は既に経験済みだが、宇宙人やら円盤やらの話題は、一般人にはまるで事実として受け取ってもらえないのである。


仕方なく父親は自分の手で追い出すしかないということで、鍋を被って竹やりを持って二階へと殴り込みに行くと、デンカたちは物干し(ベランダ)に出て、宇宙の星々を眺めている。

そして、デンカたちの会話から、どうして彼らが地球にやってきたのか、その理由が明らかとなる。

「あのあたりが私たちのウメ星があったのですね」
「美しい平和な星だった」
「あれが大爆発を起こすとはな・・・」
「みんな散り散りに宇宙へ逃げ出すのがやっとだった」

「そしてもう二度と帰れないのね」とおきさきが泣き、王さまが「これからは新しい生活が始まるのだ」と励ます。この会話を陰で聞いていた父親は、追い出そうという意欲はすっかり失ってしまう。


人の好い中村家は、彼らに同情して、どこか住むところが見つかるまでうちにいてもいいと王さまたちに告げる。「君はやっぱりいい家来だ」と喜ぶ王さま。

デンカが「大臣にしてあげようよ」と進言し、余っているという勲章を無数に授与される。

中村家だけで終わりにすればよかったのだが、近所の人たちにも挨拶して勲章を上げようということになる。夜中なのに近所中を起こして回り、近所迷惑も甚だしい。

父親は「ほら吹きだと思われるので、星から来たとか王さまとか人に言わない方がいいですよ」と忠告する。

このセリフが全てを物語っているが、デンカたちのおかしい所は、星から来た人(=宇宙人)であることと、このご時世なのに王さまを名乗っていることである。

宇宙人であり王族であるという二点のギャップがテーマですよと、ここで分かり易く整理しているのである。


翌朝。父親の忠告を受けて、「疑われないように地球の服を着た」と言って、デンカたちは太郎や父親の服と自分たちの服を取り換えてしまう。

この騒動で出遅れてしまい、太郎と父親は、学校と会社に間に合わないそうもない。

すると「カメで送ってあげる」とデンカが申し出る。カメの飛行速度はとても早く、光速にもなるという。あっと言う間に、学校と会社に二人を送り届けるのだが・・・。

会社と学校の区別がつかないデンカは、父親を学校に下し、太郎を会社へと送り届けてしまう。しかも間違えたこともわからぬままパッと帰ってしまったようである。仕方なく太郎は、父親の会社から電話で家の母親に電話して、デンカが戻ったらもう一度迎えに来るよう告げるのであった。


生まれや育ちが異なれば、価値観やコミュニケーションにギャップが生じるのは仕方がない。ある程度は許容できるものである。しかしながら、相手が宇宙人で、しかも庶民の暮らしを知らない王族であったなら・・・。

この二重のコミュニケーションギャップを乗り越えて、中村家とウメ星王室、太郎とデンカがどのようにして、価値観を共有していくことになるのか。

初回はそうしたワクワク感をきちんと醸成させる作品になっていると思う。本作をベースにしつつ、他の掲載誌でも様々な形でデンカたちとの「未知との遭遇」が描かれているので、次稿ではそれらを一気にご紹介していきたい。




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