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【将棋】西山朋佳女流、プロ編入なるか

昨日、女流将棋棋士の西山朋佳女流三冠が、プロ編入試験の第一局目に臨み、勝利をもぎ取ったというニュースが流れた。

将棋ファンであれば、いよいよ始まったかとワクワクする思いで対局を観ることができたが、あまり将棋のことを知らない人には、よくわからないことだらけだったのではないだろうか。

まずそもそも、女流棋士とは何なのかという点が理解しずらい。そして女流とはいえ、プロのはずなのに、なぜプロ編入試験を受けるのかという疑問も湧く。

本稿では、女流とは何か、そして西山さんの何が凄くて、何を期待されているのか、そのあたりをざっと解説していきたいと思う。


将棋のプロ棋士になるためには、奨励会という組織に入会し、そこで研鑽を積んで「三段」まで昇段して「三段リーグ」に参加しなくてはならない。この三段リーグは半年かけて行われ、上位2名だけが四段に昇段することができる。

三段と四段がプロと奨励会員の境界線となっていて、四段以上がプロ棋士と呼ばれることになる。

相撲でいうところの、幕下から十両に昇進すると、関取と呼ばれて給料が貰えるようになることによく似ている。


四段以上がプロとなるわけだが、ここには制度上、男女の差はない。女性であっても、奨励会に入れるし、三段リーグを抜ければ四段プロデビューが可能である。

ところが、元来将棋愛好家は男性の方が圧倒的に多く、将棋を指す男性の方がすそ野が広い。将棋人口の違いから、そもそも奨励会に所属する女性の数が少なく、現在は1~2名しか存在していない。(なぜ1~2名とぼやかしたかは、ややこしいので今回の説明は割愛)

そういうことで、プロ棋士になろうという女性の人数が少ないこともあって、これまでプロ入りすることの出来た女性の棋士は一人もいないのである。


ところが、プロ一歩手前(三段リーグ)までたどり着いた女性の棋士が3人いる。その一人が今回ニュースとなった西山朋佳さんである。

西山さんは三段リーグでもかなりの好成績を残していて、過去には14勝4敗という、普通ではプロ入り十分の成績を出して、3位(次点)を獲得したこともある。

すなわち、プロと寸分違わない実力の持ち主ということなのだ。

しかし西山さんはプロ入りの条件である年齢制限の少し前に奨励会を退会し、女流棋士への転向を図ることになる。


ここで女流棋士制度についても簡単に触れておかねばならない。

プロ棋士の制度とは別に、女流棋士という全く別の制度が存在している。女流棋士だけが参加できる棋戦があり、独自の昇段(昇級)システムがある。女流になるには条件がいくつもあるが、それらは「奨励会」制度とは全く異なるものである。

これが囲碁の世界になると、女流棋士だけ参加できる棋戦がある一方で、通常の一般棋戦は男女関係なく参加することができる。つまり同じ制度の中に、男女が分け隔てなく暮らしているのが将棋とは異なる部分である。


西山さんは、女流棋士の世界では最強クラスの実力を発揮していて、もう一人奨励会三段リーグまで駆け上った里見香奈(現在は福間香奈)と女流棋戦8タイトルを分け合う形になっている。

女性棋戦で結果を残すと、女流枠という形で本来のプロの将棋の棋戦に参加することができる。西山さんは、女流トップクラスの成績を残すことで、ほとんどのプロ棋戦に出場しているという状況にある。


そしてここでもう一点押さえておきたいのが、プロ編入試験のことである。実は二か月ほどの前に、昨年プロ編入試験を経てプロとなった小山怜央四段についての記事を書いているので、こちらもご参照いただきたい。

西山さんは男性ばかりの棋戦にこの数年参加を続けて、ついに直近10勝以上勝率6割5分というプロ編入試験の受験資格を獲得した。女性でプロ編入試験の資格を得たのは、福間香奈さんに次いで二人目となる。

プロ編入試験は、最近プロの仲間入りをした棋士5人が試験官となって、彼らから3勝すれば晴れてプロ入りすることができる。

しかし若手で勢いに乗った猛者どもを相手にすることになるので、この3勝という数字は言う程簡単なハードルではない。

例えば、編入試験を受けたことのある福間女流は、西山さんと女流タイトルを分け合うライバル関係にあるが、西山さんに対して対戦成績が上回っている強豪である。しかしそんな福間さんも、編入試験では3連敗を喫して、プロ入りは叶わなかった。

西山さんはプロ顔負けの強豪だが、簡単に結果が出せるとは限らないのである。


しかし、西山さんは「剛腕」と呼ばれる力強い将棋が特徴的で、圧倒的な攻撃力を備えている。センスも抜群で読みも鋭く、将棋ファンの中では、プロになっても全くおかしくないと考えられている。

そして、そんな注目のプロ編入試験第1局目が、一昨日行われたのである。

結果は先述したように、西山さんの見事な勝利であった。対局相手は今年の4月に四段に昇段した高橋佑二郎さんで、居飛車を得意とするやや受け将棋の方である。


振り飛車党の西山さんが三間飛車を選択し、高橋さんが持久戦の構えで受けて立つという流れであった。

AI研究全盛の将棋界では振り飛車は評価値的に不利とされていて、本局も先手の高橋四段が少しリードを保つ形で進行していった。

中央近辺で押したり引いたりの折衝が続き、先に高橋四段が馬を作る。ところがすぐにその馬を盤上から消すことができて、評価値は西山女流に傾く。

やや模様の悪くなった高橋四段は、端攻めを絡ませながら、再度作った馬を切って勝負に挑む。

攻め将棋の西山女流は、97角という驚愕の捨て駒を繰り出して、ほとんど受け無しの状態まで追い込んでいく。

ここから高橋四段は様々な罠を張り巡らせながら、西山玉を討ち取ろうと攻撃を仕掛けていくが、西山女流は巧みにその罠を回避していく。

一手西山さんに緩手があって、評価値的には五分五分に戻る瞬間もあったが、高橋さんはそのチャンスを逃して、再び劣勢へ。

最後は打ち歩詰めという禁じ手を利用した受けで西山玉はとうとう捕まらず、高橋四段の投了、西山さんの初勝利となった。

まさに手に汗握る展開で、西山さんの歴史を彩る一局になったと思う。


プロ編入試験は、今月から月に一局のペースで戦われていく。次戦は10月2日、相手は高橋佑二郎さんと一緒に今年の4月にプロとなった山川泰熙四段である。こちらも居飛車党の強豪で、再び対抗形のバトルが期待される。

西山さんが史上初の女性プロ棋士の資格を得ることができるのか。ここまで来たら、是非とも突破して欲しい。

大きなる期待を持って、今後の編入試験を見届けていきたいと思う。



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