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天は人を助くる者を助く『ぼくをタスケロン』/のび太のちょっとイイ話②

ドラえもんの短編では、ほとんど良いところのない野比のび太。けれども彼の優しさやささやかな勇気が垣間見れる、ちょっとイイ話も少しばかりは存在する。

8月と言えばのび太の誕生月でもあるし、のび太のちょっとイイ話をまとめて読んでみるにはいい機会である。

そこで、まだ記事にしていないイイ話4作品を順次ご紹介していきたい。今回はシリーズ二本目の記事で、一本目は下記で読めるので、是非ともチェック願いたい。


『ぼくをタスケロン』(初出:タスケロン)
「小学五年生」1979年9月/大全集8巻

冒頭、何やら急いでいる様子ののび太。野球場から転がってきたボールを拾わず、迷子で泣いている子供にも「もっと大声で泣けば誰か面倒見てくれるさ」と無責任なことを言って、通過してしまう。

そんなのび太の様子を、遠く野比家の屋根の上から望遠鏡で見ていたドラえもんは、「なんて冷たい奴だ!」と怒る。

のび太が焦っていたのは、朝までかかりそうな宿題がどっちゃりあるのを思い出したからで、人のことなどかまっていられなかったのである。

ドラえもんは世の中は助けあうものだとして、「タスケロン」という薬を出す。錠剤の入ったケースには赤十字が描かれて、助け合いの精神を表している。

この「タスケロン」を飲むと、困っている人を見たら助けずにはいられなくなるという。強制的に人助けをする体質に変えてしまう薬らしい。

ドラえもんは、のび太に人を助ける人間になって欲しいという目的で「タスケロン」を出したのだが、肝心ののび太は自分のことを誰かが助けてくれる薬だと認識する。

ジャイアンやしずちゃんたちに飲まれせれば、自分の宿題を手伝ってくれるにちがいないと、さっそく「飲ませてくる」と言って出て行ってしまう。当然、そんなつもりではないドラえもんだが、それは後の祭り・・。


のび太は下心ミエミエの表情でジャイアンとスネ夫に近づき、「いい薬を飲ませてあげる」と声を掛ける。この感じいかにも怪しいので、とてもそんな薬なんて飲めたものではないが、ジャイアンたちも「ろくな薬じゃないぞ」と見破る。

そして「タスケロン」を奪い取って、逆にのび太に大量に飲ませてしまう。図らずもドラえもんの当初考えていた通り、のび太が人助け体質に変化することに・・。


「タスケロン」は飲んですぐに効果を発揮。のび太はジャイアンに再び近寄って、何か文句の一つでもぶつけるのかと思いきや、「お尻がひどく汚れている」と言って、野球でついた土を払ってあげる。

「タスケロン」は人を助けようという気持ちにさせると言うよりは、強制的に行動を誘発する効能らしく、のび太は「したくないけどせずにはいられない」と、思わず体が動いてしまって困惑している様子。

ジャイアンとスネ夫は、そんなのび太の異変に付け込んで、持っていたバットとグローブを家に届けるようのび太に命じる。ジャイアンたちはちっとも困ってはいないが、「タスケロン」はそういった事情はお構いなし。

どういう状況下でも人の助けをしてしまう薬であるようだ。


また、人を助けている間は利己的な行動がとれなくなっているようで、ジャイアンとスネ夫の家に届ける途中にしずちゃんとすれ違い、宿題を手伝ってほしいと口にしたいのに、体はスネ夫たちの家へと向かってしまう。

何とかお届けを終えて宿題に戻ろうとするのだが、そこで冒頭で迷子で泣いていた子供がまだ泣いているのを見つけてしまう。

タスケロン効果で今度は無視できず、いやいやながらも「どこから来たの」と声を掛けて、はぐれた親を一緒に探してあげることに。なお、その様子をしずちゃんがチラリと見ている部分は要チェック。


無事迷子の親を見つけて感動の再会を演出するのだが、のび太の頭の中は宿題でいっぱいで、「こんなことしている暇ないんだから」と必死の形相で家へ帰ろうとする。

ところがそこへ、今度は大荷物を背負ったおじいさん(モデル:藤子F先生)を目撃してしまい、手助けをすることに・・・。そして今回もしずちゃんがその様子をたまたま見かけている。

こうなったら人が困った姿を見ないように、目をつむって帰ろうとするのだが、自然と引き寄せられるように戸締りをしていない一軒家へと入っていき、病気で寝たきりとなっている男性(モデル:藤子A先生)につまずいて転ぶ。

タスケロンは困っている人を自動的に見つけ出す効能も備わっているようである。

結局病人男性のために、掃除、洗濯、食事の支度を肩代わりし、気が付けば夜も真っ暗。全く帰ってこないのび太をドラえもんも心配している。

ここで薬の効き目が切れてようやく家へと帰れるようになるが、ここからたっぷり残った宿題が終わるとは思えない。のび太が帰りの道すがら「ああ宿題・・宿題・・」とへたり込む。


そんな絶望に打ちひしがれているのび太にそっと近づく女の子。そう、もちろんそれはしずちゃんである。のび太が一日中周囲の困った人を助けている様子をしっかりと目撃していたしずちゃんは、

「知らなかったわ。のび太さんて、本当に優しい人なのね」

と言ってのび太に手を差し伸べる。

しずちゃんは「宿題なら一緒にやりましょ、分からないことは教えてあげると」言って、ハンカチを差し出す。


タスケロンの効果とはいえ、身を粉にして人のために働いたのび太によって、実際に助かった人は大勢いる(迷子・藤子F・藤子A)。そのせいで大いに困ってしまったのび太は、人助けに奔走する姿を見ていたしずちゃんに最後の最後で助けられることになる。

まさに因果応報、禍福は糾える縄の如し。のび太の優しさ(薬の効果)を知ったしずちゃんとは、その後結婚までいくわけだが、今回の件などが心に残っていたのかもしれないと思うと、「タスケロン」は非常に重要な道具なのかもしれない。




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