究極のダブルブッキング?「バケルくん」『かけもちでお花見』/Fキャラお花見騒動②
お花見大好きのFキャラたち(特に子供)。しかし、桜が満開の時期はとても限られているので、親の仕事の事情などによって、楽しみにしているお花見に行けないで悔しい思いをしてしまうことが良くある。
そこで、何とかして子供たちだけでお花見をしようと考えるのだが、これがすんなりとはいかない。そこには当然ドラマが生まれてくる。
前稿では我らがのび太が、急きょお花見に行けなくなって不貞腐れ、それをドラえもんが何とか救ったお話を見てきた。この作品では、のび太だけでなく、仕事で花見に行けなかった両親も最後は桜を楽しめる。とってもいいお話であった。
続けて本稿では、野比家のように、親の事情でお花見に行けなくなってしまったカワルくんが、バケル一家の人形を使って花見に出かけていくというお話を見ていく。
いつもながらの「バケルくん」ならではの、大混乱ストーリーをご堪能いただきたい。
「バケルくん」『かけもちでお花見』
「小学三年生」1975年4月号
バケルくんをご存じない方はいないとは思うが、一応そうではない方向けに過去の代表的な記事を貼っておきたい。
かいつまんで説明すると、「バケルくん」は、主人公カワルが宇宙人からバケルくんの家族などに変身できる人形と、バケルの住む一軒家を譲り受けるところからお話が始まる。
人形の鼻のスイッチを押すとその人形と体を入れ替えることができる。例えばカワルがバケルに変身すると、カワルが人形となる仕掛けである。
最初はカワルは誰か一体の人形に変身していたのだが、5本の指を使って、一気に5人の体になることも可能になる。バケルくん一家は、バケルの他にパパとママ、姉のユメ代と犬がいるのだが、カワルは一気に5人家族全員の姿に変身できるようになる。
ただし、一人の人間が5人の人間に分裂するので、5人の動きは当然同じになる。心は一つなので、体が分かれていても、個別に動かすことはできないのだ。
本作は、カワルがパパの仕事の都合でお花見に行けなくなったので、桜が散る前にバケルくん一家でお花見をしようと考える。しかし、同じ動きをする5人でのお出かけとなるので、行く前から混乱すること請け合いなのである。
ちなみに、「バケルくん」の連載が続いていくと、複数の体を動かすことに慣れてきて、ある程度同時に別行動をすることができるようになる。本作ではまだ、その域に達していない。

かくして、バケル一家で花見へと出発するが、その途中「バケルくん」世界のガキ大将、ゴン太を誘うことになる。ゴン太は野球に行く途中だったが、ゴン太が好きなユメ代(=カワル)に「行きましょう」と言われて、同行してしまうのだ。
そしてこれがドタバタの引き金となる・・。
桜が満開の公園に着くが、お弁当も飲み物も用意していないことが気付き、ゴン太に札束を渡して何か買ってくるようお願いする。バケルのパパはお札がいくらでも出てくる財布を持っているのである。
ゴン太が買い物している間、出掛けていることをママに断っておこうということで、カワルに姿を戻して一度家に帰るのだが、何とパパが予定をやりくりして、花見に行けるようになったという。
かくして、カワルはカワル一家でのお花見と、ゴン太も含めたバケル一家のお花見を掛け持ちすることになるのである。
カワル一家でしばし団らんした後、トイレを口実にその場を離れて、ゴン太の元へと戻る。案の定、待たされたゴン太はイライラしているのだが、この苛立ちは始まりに過ぎない。
この後、待たされてはイライラするという行為が延々と繰り返される羽目となるのだ。(いわば天丼ギャグ)

合流して、ゴン太が調達してきたお弁当やジュースを飲み食いするのだが、家族5人の中身はカワル一人なので、ピッタリ同じ動きとなり、ゴン太には不自然に映る。
バケルは「家族は5人で一人みたいなものだから」と言い訳し、「だからトイレも一緒」と言い出して、5人同時に席を外す。向かうは今度はカワルの両親の元へである。
中々トイレからカワルが戻ってこないので、両親はイライラしている。「どんどん食べなさい」と両親からご馳走を勧められるのだが、先ほどからずっと食べているので、カワルはお腹いっぱい。
そろそろゴン太の元に戻らねばだが、トイレの手は使ってしまったので、次はカメラで両親の写真を撮るということで、ずっと先の桜の木まで移動させて、その間にゴン太の元へと戻ることにする。これで誤魔化しが効くとは思えないのだが・・。

長い間一人で待ちぼうけのゴン太は不服だが、歌でも歌って楽しくやろう、と盛り上がって何とか誤魔化す。しばらくして、そろそろ家族の花見に戻らねばということで、その場から立ち去ろうとするバケル一家。
何度も置いてきぼりにされているゴン太が一緒について行くと言い出すので、それはまずいとそこに留まるバケルたち。そうなると、今度はいつまでもカワルが帰って来ないということで、カワルのパパが腹を立て始める。
パパは「せっかく暇を作って連れてきたのに」と不機嫌になり、カワルを探しに出てしまう。この時、なぜかビール瓶とグラスを手にしているのだが、これが後ほどの事件へと繋がってしまう。
カワルを探していたパパは、ゴン太と盛り上がっているバケル一家を見つけて、「バケ田さんもお揃いで花見ですか」と話しかける。
急にパパから声を掛けられたバケル一家(=カワル)は、「今行こうと思っていたところです」と、少々意味の通らないことを口にしてしまう。
ここで、別々のお花見をしていた二つの家族が一つに合流するという不測の事態が発生。カワルからすれば、カワル本人とバケル一家5人の6人分の掛け持ち状態となってしまうのだ。
パパは「ま、ひとついきましょう」と、ちょうど(?)手にしていたビールをバケルのパパへと注ぐ。「子供がお酒なんて」と思わず答えるが、「あなた大人でしょ」と冷静にパパに突っ込まれてしまう。
そこでビールをグイッと飲み干すバケルのパパ。他の家族も同じ動きをするので、パパは少々驚きの表情を浮かべる。すると、ビールを飲んだパパと他の4人も同時にカーッとアルコールが回り、酔っ払って突然家族全員で踊り出してしまう。
ちなみに、中身は小学生のバケルのパパは、本作の3ヵ月前のお正月でも、お酒の失態を晒している。
酒に飲まれて、急に目の前で変貌したバケル一家を見てドン引いたパパは、「カワルを探していますので」とその場から立ち去る。ゴン太も抜け出すチャンスと見て、「僕も手伝いましょう」と言って、ついて行く。
かくしてバケル一家だけとなった訳だが、こうなるとカワルに戻って家族と合流するのが良かろう。ところが、5人同時にカワルの人形に指を伸ばしたので、ゴチンと頭をぶつけてしまう。
ただでさえ5人同時に人形を動かすのは大変だったのに、お酒で酔っ払っていたため、うまく体を動かせずにバタバタと押し合いへし合いとなって、カワルの人形がどこかへと飛ばされてしまう。
這いつくばってカワルを探すバケルたち。その奇妙な行動を遠巻きに見て、「変わった人たちだなあ」と感想を漏らすゴン太とカワルのパパなのであった。
「体がいくつあっても足りない」なんて言いますが、実際には「体がいくつもあると混乱するだけ」というオチ。
ちなみに掛け持ちと言えば、「オバケのQ太郎」に『かけもちパーティ』(1966年)というお話があり、2つのパーティー(食事会)をQちゃんと正ちゃんが行ったり来たりするドタバタが描かれている。
掛け持ちドタバタ劇は、藤子F先生の大好きなパターンであるようだ。
