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七坪買って、国家再建!?『ウメ星建設用地』/夢のマイホーム④

自分たちの帰る場所が欲しいという気持ち、帰巣本能ともいうべき感覚は誰にでもあるように思う。

僕の帰る場所と言えば、自分の家庭・家族であることは間違いないが、今の住まいは持ち家ではないので、今居る場所で根を張って一生暮らすのかというと、そうではないだろう。

田舎にある実家から離れて、都心で借家暮らしをしている自分としては、今の場所が、本当の自分たちの居場所だとは思えないのである。根無し草とは言わないまでも、どこかフワフワした心持ちがあるのだ。


「夢のマイホーム」と題して、藤子Fキャラたちの家を探し求めるお話を集めてきたが、今回取り上げるのは、自分たちの住処(すみか)を強制的に追いやられて、根無し草の生活を余儀なくされている人たちのエピソードである。

そう、本稿での主人公は、ウメ星国の王室の人々、王様・王妃・デンカ(+ベニショーガ+ゴンスケ)である。

彼らはウメ星という宇宙の遥か彼方の星で王族として暮らしてきたが、ある日ウメ星が大爆発を起こしてしまい、命からがら脱出して、そのまま地球へと疎開してきた。

ウメ星の国民たちも、宇宙中の人の住める星に散り散りとなってしまい、王国は事実上崩壊。王室だけは残ったものの、デンカたちは一般家庭の中村家に居候し、内職などをして何とか生活を維持している状況なのだ。

文章で書いていると、あまりに悲惨な体験をしているので、可哀そうに思えてくるが、ウメ星の王族たちはどこか世間離れした性格で、それほど深刻さを感じないのが不思議である。


さて、そんなウメ星の王さまたちは、王国再建を夢見ており、どこかに新しい星(土地)を見つけて、再びウメ星の国民を集結させようと考えている。

本稿では、そんなウメ星の人々がとある地球の土地物件に目をつけたというお話を見ていきたい。

ちなみに、これまで書いた「夢のマイホーム」記事はこちら・・。



「ウメ星デンカ」『ウメ星建設用地』
「週刊少年サンデー」1969年25号/大全集3巻

のんびりしている王様たちと違って、アクセクと動き回る家来のベニショーガが、今日もセカセカと部屋に入ってくるなり「一大事でございます」と声を上げる。

今回の報告は、新ウメ星国の土地が手に入りそうなのだという。詳しく聞くと、ゴンスケが働くようになり貯金が5万円を突破したので、安い土地を探したところ、新聞のチラシに良い物件があったという、

チラシには「投売り!!」と煽りがあり、駅から徒歩三十分、水道完備、ガス見込み、学校・病院・マーケット近し、坪8,000円だと書かれている。この条件、どこかで聞いたことがあるような・・と確認すると、少し前に記事にした「オバQ」の『百坪一万円』と酷似している。


「すぐ買いに行こう」と王さま以下、お妃、デンカも動き出すが、ベニショーガは「土地ほど難しい買い物は無い、下手すると騙される」と注意喚起をする。これまで土地を探している藤子キャラを紹介してきたが、ことごとく悪徳業者に騙されており、今回も嫌な予感はする。

こういう時こそベニショーガの出番だが、内職のフクロを届けなければならず、代わりにゴンスケをお供させることに。ゴンスケは、家来ロボットなのに、デンカたちを全く尊敬していないが、金儲けについては一家言あるので、今回のお供は適役かも知れない。


早速現地案内所までツボで飛んでいくウメ星一家。「土地おくれー」と軽々しい態度のデンカたちに、「ガツガツしてたら足元に付け込まれるぞ」とゴンスケが制止する。そして、いつしかゴンスケが土地買いの隊長となっているのであった。

ゴンスケは土地に関心がないような感じで歩いて、業者から声を掛けさせようという作戦に出る。が、そもそもデンカたちが土地と縁の無さそうな見かけなので、一時間歩いてもまるでお声が掛からない。

そこで痺れを切らしたデンカが二人組の業者に話しかけてしまうのだが、この二人は客の寄り付かない酷い土地を売り逃げしようとしている、悪徳業者であった。

ちなみに彼らが売りさばきたい土地は、天気が良い日には埃が舞い、雨が降ったら水の底、隣が火葬場とゴミ焼き場という立地であるという。


デンカたちは、この業者に「運のいい人たちだ、あと一足遅ければ売り切れになるところだった」と言われて気分が良くなり、さっそく契約書に印鑑を押そうとするので、ゴンスケがちょっと待てと、ハンコを取り上げる。

「まず土地を見るダ」という至極最もな指摘をするが、業者は「ただの地面ですよ」と消極的な姿勢。しぶしぶ、車に王さまたちを乗せて物件見学に向かう。ゴンスケは「ロボットはお呼びでない」とバカにされて、乗せてもらえない。

ちなみに「およびでない」のセリフは、「しゃぼん玉ホリデー」で植木等が発したギャグで、1960年代に大流行した言葉である。「およびでない」の後には、「こりゃまた失礼しました」がセットとなっている。


物件へは、舗装されていない道を走ることになり、揺れる車中でデンカたちは文字通りに痛い目に遭う。これは「オバQ」の『百坪一万円』でも出てきたギャグである。

ゴンスケも到着していよいよ押印となりかけるのだが、ここまで車で30分かかっており、徒歩30分という触れ込みとはだいぶ違う。(このあたりも『百坪一万円』と似たような展開)

ゴンスケが王さまたちに信用できないと言い出し、その様子を見ていた業者二人組は、このグループのボスはロボットだと気がつく。そこで方針を変えて、ゴンスケを誉め殺す作戦に出る。


まずゴンスケがここまで歩いて20分で来たことをベタ褒めし、タバコやコーラを差し出してサービス開始。ゴンスケは「21エモン」時代から露骨なお世辞に弱いのだが、ここでもそうした性格が出てしまい、「歩いて20分だったので大した距離ではない」と、徒歩圏内の表記を肯定してしまう。

デンカが「チラシには駅前と書いてあった」と指摘すると、不動産屋の男がゴンスケに「あなたみたいに頭が良い人にはわかるはずだが、ここまでは駅から前へ前と来たのだ」と、妙な耳打ちをして、ゴンスケは「少なくとも駅の後ろではない」とこっちも認めてしまう。


すっかり悪徳業者の褒め殺し作戦に引っ掛かったゴンスケ。「おだてて誤魔化そうとしても無駄だ」と言うものの、「水道完備」には水筒を渡されて納得し、「マーケットや病院近し」に対しては「外国へ行くより近い」という屁理屈で万事OKとなってしまう。

全然頼りにならないゴンスケは、結局この土地7坪を五万円で購入してしまう。「お前ら地主になったぞ」と得意満面なゴンスケ。何も知らず、「買い物がうまいや」と喜ぶデンカたち。

しかし、良い買い物をしたと思えたのはここまで。この七坪の土地は、風が吹くと埃が舞って前が見えなくなるほどで、雨が降り出すと水捌けが悪く、まるで洪水のように水浸しになってしまう。


インチキな土地を買わされたと気付いても、契約書に押印済みなので、もうお金は返って来ない。

ここで合流したベニショーガが、ゴンスケにブチ切れると、「貯金から弁償する、5万くらいのはした金」とゴンスケはお札を投げだし、「これであの土地はオラのもんだ」と言ってどこかへ行ってしまう。

王さまと王妃は「せっかくの貯金を可哀そうだ、悪気でやったことでもない」とゴンスケを擁護し、ゴンスケに五万円を戻すことにする。

ところが、ただでは転ばないゴンスケ。高速道路があの辺ぴな7坪を通ることになり、用地買業者がゴンスケに土地を売って欲しいと札束を提示してくる。いきなりの転売で大儲けとなるゴンスケは、「もう一声」とさらなる上乗せを狙うのであった。


国が破壊され、国民が離散するという悲惨な状況の中、7坪の土地を買って国を再建しようとするウメ星国王一家。バカバカしさに笑えるが、何か切ないものがこみ上げてくるのは僕だけだろうか・・。

ちなみに藤子F先生晩年の作品「チンプイ」の中でも、引き続きウメ星一家は中村家に居候していたので、彼らの国家再建はかなり先のことになりそうである。




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