【展評】聶経緯「漢 タツノオトシゴ」(2026.3.25-2026.3.30|GALLERY 2511)
東京ビジュアルアーツ写真学科2025年度卒業制作グランプリを受賞した、聶経緯(ショウケイイ)による写真展「漢 タツノオトシゴ」。展示は、パープルに染まった筋肉質な男性の彫像から始まる。タイトルの「漢(おとこ)」という語は、旧来の男らしさを想起させる、強さや気概、根性といったニュアンスを帯びている。その漢字一文字に対して、「タツノオトシゴ」というルビが振られている。
一般に、男性性は戦うことや競争、感情を抑え優位に立つことと結びつけて語られてきた。一方、タツノオトシゴは、生物の中でも珍しくオスが卵を受け取り、育て、出産まで担う。そこでは強さは支配ではなく、育てることや守ることの中に見出される。壁面と床で展開される写真もまた、「男らしさ」とは何か?という問いかけを視覚的に示していた。被写体の男性たちは強さを誇示するのではなく、どこか不安定で曖昧な気配をまとっている。手を写した写真が繰り返し差し込まれていたことが印象的だった。手は何かをつかみ支える一方で、ひどく無防備でもある。そのかたちを見ていると、力強さと脆さが同時に立ち上がる。
現在、「男性であること」は以前ほど自明ではなくなっている。タツノオトシゴ的なあり方は、いまを生きる世代の感覚とどこか地続きにあるようにも思える。本展は、男性であることの生きづらさやジェンダーの問題を声高に主張するのではなく、写真を通して同時代的な違和感をうまく提示していた。DMに使用された、男性がピンク色のクッションを抱えた印象的な写真が展示されていなかった。理由を聞くと「DMで使ったから展示しなかった」とのことで、そうした初々しさも含めて、この作家の魅力のように感じられた。
レビュアー:村上仁一

聶経緯 「漢 タツノオトシゴ」
会期:2026年3月25日(水)~3月30日(月)
会場:GALLERY 2511
関連リンク:https://gallery.2511.jp/exh/tatsunootoshigo/
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