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シェアハウスの募集要項「◯歳まで」「◯歳になったら契約解除」──年齢制限がどこまで許されるのか?

他社のシェアハウス募集要項を見ていると

  • 「◯歳までの方限定」

  • 「◯歳以上の方の入居はお断りする場合があります」

といった、年齢による“上限キャップ”を設けている物件をよく見かけます。
弊社への問い合わせ・内覧時などの際にも「年齢制限はありますか?」「よそのシェアハウスは門前払いなんです」といった声も聞くこともあるよう。
(ちなみに弊社では年齢制限は設けてありませんが、ルールを守り、共同生活に適応可能な人物であるかは注視します。全体の年齢構成は20代~30代がメイン、40代以上も一定数います。50代後半~はほぼいません。)

一方で、賃貸借契約は「住まい」に関わる重要な契約です。
"自分では選べない属性"である「年齢」によって、

「あなたはもうこの物件には住めません」

とあるシェアハウス事業者

と線を引いてしまうことは、法的にどこまで可能なのか?
ここでは実務者目線を念頭に置きながら、

  1. 募集要項に年齢の上限キャップを設けること

  2. 入居中に規定の年齢に達したことを理由に、更新拒絶・退去要請を行うこと

この2点に考察を交えて述べていきます。

現在に至るまでの年齢制限による入居拒否・更新拒絶についての判例は探したところ見当たりませんが、似たような判例と弊社顧問弁護士の見解を踏まえたうえで、どういう問題が含まれているのかを説明します




1. 募集要項に「年齢の上限キャップ」を設けるのは黒寄りのグレー

まず、募集の段階

  • 「入居条件:〇歳まで」

と明記しているケースです。

- 年齢は「自分で選べない属性」なのに、一律のフィルターになっている

性別・国籍・障害の有無などと同じく、年齢も本人にはコントロールできない属性です。にもかかわらず、

  • その人の生活態度

  • 収入や支払い能力

  • ハウスルールへの適合性

  • コミュニケーションの取り方

といった要素を一切見ないまま、「◯歳を超えたら問答無用で対象外」とするのは、構造としてはやはり差別性を帯びてしまっています。

もちろん、現時点の日本の法制度では、

  • 「年齢制限付きの募集=即違法」とまでは整理されていません。

  • 実務上も、「若年層向け」「学生向け」といった形でターゲットを絞った募集は広く行われています。

しかし、

  • 設備・サービスが「特定の年齢層のニーズに特化」しているわけでもなく

  • 実態が「高齢層はリスクが高そう」「管理が大変そう」という
    運営側の都合だけになっている場合、その年齢キャップは

「合理的な設計」ではなく
「年齢を口実にした一括排除」

に近づいていきます。この意味で、

募集要項に上限年齢キャップを明記することは、法的には“グレー”だが、倫理的には“黒寄りのグレー”

と現状では位置づけざるをえません。


- 私が業界内で実際に聞いた話

シェアハウス運営者同士で話をしていると、
年齢制限を設ける理由として挙がるのは、だいたい次のようなものです。

  • 「年齢が上がると若い人が集まらなくなるから」

  • 「若い人に比べて、年齢が高い人の方が面倒くさいから」

ただ、ここで重要なのは、

これらはあくまで印象や経験談のレベルの話であって、明確なデータやエビデンスを前提にしているわけではない

という点です。個人的には事業者はせめて説明できる材料を揃えてほしいところです。「若い人が集まらなくなる」というなら、

  • 実際に相関を取ったのか?

  • 偏ったコミュニティ設計が果たして最適解なのか?

といった検証が必要ですし、「年齢が高い方が面倒くさい」というなら、

  • トラブル件数と年齢の関係をきちんと整理できているか?

  • “面倒くささ”の原因は年齢なのか、個人差なのか?

  • そもそも若年層の入居者は何かあっても、何も言わずに退去しているだけではないか?

という問いが本来はつきまといます。十数年シェアハウス運営をしている私の実感としては、

なんとなくのイメージから募集要項の年齢キャップを設けているにすぎない

気がしてなりません。

この“データに裏打ちされていないなんとなくの年齢フィルター”という構造そのものが、年齢制限をより「黒寄りのグレー」に押し上げている要因のひとつだと感じています。


- 「学生限定」「シニア向け住宅」のケースとは、前提が違う

ここでよく引き合いに出されるのが、

  • 学生限定物件

  • シニア向け住宅(高齢者向け住宅・サ高住など)

です。これらは、

  • 「学生」という身分を、自己の選択や進路に紐づく立場に着目した住宅

  • バリアフリー設計や見守りサービスなど、高齢期特有のニーズに応えた配慮型住宅

であり、

誰かを排除するための条件というより、
「特定のライフステージ・身体状況に対応した枠組み」

として理解されています。

一方で、多くの年齢キャップ付きシェアハウスは、

  • 設備は一般的な賃貸とほとんど変わらない

  • 「若い人の方が雰囲気がいい」「トラブルが少なそう」といった、
    イメージベースのリスク回避が主な理由になっている

という構造を持ちがちです。この違いを無視して

「学生限定もある」「シニア向けもある」
だからシェアハウスも◯歳までで切ってよい

と短絡的に考えるのは、本来の趣旨は違っていてかなり無理のあるロジックです。


2. 入居中に規定の年齢に達したことを理由に更新拒絶・退去要請するのはアウト

次に、より深刻なのがこちらです。

「募集要項は20〜35歳まで。
入居中に35歳に達した場合は、更新を認めず退去してもらう」

という発想です。

これは、年齢キャップの中でも最も問題が大きい運用だと言ってよいと思います。

- 賃貸借契約は「一度入れたら、簡単には追い出せない」仕組み

日本の普通借家契約(※定期借家契約とは別)において、貸主から終了させるには

  • 借地借家法に基づく「正当事由」が必要とされます。

この正当事由は、

  • 貸主側の事情(建替え・滅失など)

  • 借主側の事情(賃料滞納・重大な契約違反など)

  • 周辺事情を含めた公平なバランス

によって判断されます。

ここに「借主が◯歳に達した」という事実を加えたとしても、

「年齢が増えたこと」と
「その人がその物件に住み続けることの支障」

の間には、基本的に因果関係がありません。

  • ◯歳になったからといって、突然家賃を払えなくなるわけでもない

  • ◯歳になったからといって、突然トラブルメーカーになるわけでもない

そうである以上、

「規定の年齢に達した」という理由だけで更新拒絶・退去を正当化するのは、法的なロジックとしても非常に苦しい

と言わざるをえません。


- 「居住の継続」を、後から属性で切る残酷さ

もうひとつ大きいのは、入口と出口の重みの違いです。

  • 募集段階の年齢制限は、あくまで「入口の話」

  • これに対して、更新拒絶・退去要請は「出口の話」であり、
    既に認められた居住の継続を打ち切る行為です。

数年暮らして生活の基盤ができた入居者に対して、

「あなた自身の行動ではなく、時間経過によって年齢条件を満たさなくなったから」

というだけの理由で退去を求めるのは、

  • 本人にはどうしようもない属性(年齢)を理由に、既得の地位を奪う行為

であり、入口以上に差別性が強くなります。


- 生活設計への打撃に見合う合理性がない

退去要請は、入居者の生活設計を根本から揺るがします。

  • 通勤・通学・通院の動線が変わる

  • コミュニティや友人関係がリセットされる

  • 引っ越し費用や手間がかかる

こうした負担に見合うだけの合理的理由が、

「誕生日が来たから」「規定の年齢になったから」

だけで本当にあるのか?と言われれば、正直ほとんど説明のしようがありません。この意味で、

入居中に規定年齢に達したことを理由に、更新拒絶・退去要請を行う運用は、法的にも倫理的にもほぼアウト

と考えるのが妥当だと思います。


3. もし退去トラブルになってしまったら?

「合理的でない理由で契約更新を拒否された」などで、困った場合は、抱え込まずに専門機関へ相談するのも手です。

- 消費生活センター(局番なしの「188」

入居中は契約関係にありますので、消費者契約法の適用範囲になります。
消費者契約法10条は、

民法その他の法令の規定の適用による場合と比べて信義則に反し、消費者の利益を一方的に害する条項は無効

とあります。
消費生活センターでは、契約書の内容が法的に有効かどうかの助言や、場合によっては事業者との間に立って「あっせん(話し合いの仲介)」をしてくれることもあります。
相談件数が増えていかないと問題がクローズアップされていかない実態もあるので、他の消費者の為にも契約問題は相談した方がよいと思います。


4. 裁判になったら、事業者はどのくらいの支払いになるのか?

では、もし入居希望者や入居者から

「年齢だけを理由に断られたのは不当だ!」

として訴訟を起こされた場合、どの程度の損害賠償を命じられる可能性があるのでしょうか。

- 参考になるのは「国籍差別」などの入居拒否判決

現時点で、日本には

  • 「高齢だからだけを理由に入居拒否され、損害賠償が認められた」

という、年齢単独の差別を正面から扱った有名判例はほとんどありません。

ただ、その代わりに参考になるのが、
外国籍であることを理由に入居拒否されたケースです。
外国籍の人への入居拒否事件では、家主に対して慰謝料支払いを命じた判決をいくつか発見しました。

神戸地方裁判所尼崎支部・平成18年1月24日判決
⇒家主に対して約22万円の損害賠償等の支払いを命じた。
大阪地方裁判所・平成19年3月13日和解
⇒家主が入居差別を認めて謝罪し、解決金100万円を支払うことなどで和解成立。
・さいたま地方裁判所・平成15年1月14日判決
⇒裁判所は、原告の人格的利益を侵害するものだとして、宅建業者に損害賠償の支払いを命じた

いずれも、

  • 「契約が成立していれば得られたであろう利益」よりも、

  • 人格権侵害(差別され、尊厳を傷つけられたこと)に対する慰謝料

としての性格が強い賠償です。年齢差別についても、ロジックとしては同様に

「合理的理由のない属性による入居拒否=人格権侵害」

と評価されれば、年齢差別+消費者契約法違反+借地借家法違反のトッピングマシマシで数十万円〜100万円前後の賠償が認められる可能性は十分にあります。

- 実務的な“痛手”は、金額だけではない

仮に慰謝料:20〜40万円前後、弁護士費用の一部:数万円〜十数万円

といったレベルだとしても、
運営側にとって本当に痛いのは「お金」だけではありません。

  • 訴訟や人権救済申立てを通じて、名前や物件名がネットに残るリスク

  • 「差別的なシェアハウス事業者」といった評判ダメージ

  • オーナー・取引先・紹介会社からの信頼低下

こうしたブランド・信用面の損失は、
慰謝料数十万円では到底カバーできないものになります。

事業者の心情や経営方針は自由ですが、そもそも裁判や人権トラブルに巻き込まれる構造を作っていないか?コンプライアンスの観点から見つめなおす必要があるのではないかということです。


おわりに:その「年齢制限」に法的合理性はあるか?運営者に求められる説明責任

シェアハウスの現場では、

  • 雰囲気を保ちたい

  • トラブルリスクを減らしたい

  • 管理をシンプルにしたい

といった運営側の”心情”から、つい統計やエビデンスに基づかない「年齢」という分かりやすい指標で線を引きたくなる場面があります。

そのとき、

  • 「若い人が集まらなくなるから」

  • 「年齢が高い人の方が面倒くさいから」

という“なんとなくの業界の認識”だけで年齢制限を正当化してしまっているのではないでしょうか?入居者との訴訟リスクを負ってまで私はやろうと思いません。

・「どうせ訴えるまでしてこないから」のユーザー軽視のヤッタレ精神
・ そもそも法的なリスクがありそうだとすら認知していない

このいずれかの理由で行っているとすれば危機意識とユーザーに対する敬意が足りないと言わざるを得ないと思うのですが・・・

現時点では、私は一概に年齢制限を設けてあるシェアハウス運営方針を否定するつもりありません。事業者の経済活動の自由、民法の契約自由の原則もあります。ただ、貸主側からの安易な居住権の侵害は問題だと思っているだけです。

シェアハウス運営の年齢制限に関しておよそ30代で入居できなくなる法的に合理的な説明が今もなおシェアハウス事業者から発信されているようには見られない現状があるのではないか?

実際にそういった経緯で、納得していないながらもシェアハウスを転居しなくてはいけなくなっている人がいる以上、今後大きな問題になる前に"年齢だけ"を理由に契約しない、契約の継続はしないシェアハウス事業者はその法的な正当性(があるなら)をユーザーへしっかり丁寧に説明してほしいものです。


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