【シェアハウス事業者の警鐘】トコジラミが一般住居へ。暮らしへ浸食してくる不可避の現実――心構えと大切なこと(前編)
はじめに:なぜ、今この話をしなければならないのか?

東京都内で20棟以上のシェアハウスを運営し、日々入居者の方々の「安心」を管理している立場として、私は数年前から今に至るまで、強い危機感を抱いてきてます。
弊社が初めてトコジラミと遭遇したのはコロナ禍より数年前、ちょうどインバウンドの増加傾向が強くなり始めた頃です。最初はダニ?かと思いつつ入居者さんからヒアリングして色々調査したところトコジラミ(南京虫)だとわかりました。海外ではベッドバグ(=Bed Bug)とも呼ばれます。
市販のダニ用駆除剤では対応が難しいことが分かったので専門業者へ依頼する事にしました。その時の費用はシェアハウスワンフロアで20万くらいだったと記憶してます。
トコジラミは甘い対応をしていると延々と対応に追われるので、慎重に慎重を期して、半年間専門業者に対応してもらう事で調整しました。
対応してくれた業者のおっちゃんがいい人で、
通常だと何倍も費用が掛かるところを安くしてもらいつつ、都度施工時に立ち会ってトコジラミ駆除についての技術的な現場の知識もいろいろ教えてもらいました。
だからこそ私は警鐘を鳴らします。
~2026年現在、これらはもはや宿泊施設だけの問題ではなく、「一般住宅」という生活領域までも侵食し始めています。私たちの生活圏には、目に見えない「火種」が確実に拡がり続けていて、身近なトラブルになるのは時間の問題だと認識しています。
かつては「不潔な場所に出るもの」という偏見で語られていたこの害虫は、今やその姿を劇的に変えました。インバウンドの爆発的な増加、そして既存の殺虫剤では効果が弱い「スーパートコジラミ」の出現…。
私はこれまで他社シェアハウスを含むシェアハウス界隈で発生したトコジラミ事案を把握し、事業者がどういった対応をしてきたのかを注目してきました。
その経験から断言できるのは、「無知と不作為」こそが、入居者の身体への軽視や、トコジラミ被害からの復旧を数万円のボヤから、数百万円の大炎上へと変えてしまう最大の原因であるということです。
この記事は、現在の日本の実態、各業界での意識レベルを可視化して、不可避の現実を直視し、今後訪れるであろう事柄に対して皆さまの家族、そして大切な資産を守るための「心の準備」にもなるようにお伝えします。
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■ 2026年現在、トコジラミは「日常」になった
1. インバウンドの光が落とす、濃い「影」

日本を訪れる外国人観光客が過去最高を更新し続ける今、インバウンド関係のGDP割合は上昇しています。それに伴ってトコジラミにとって「国境」は何の意味も持たなくなってきました。それは、人の衣類やカバン、靴底に付着して移動する「最強のヒッチハイカー」だからです。
これまでにパリやソウルで起きたトコジラミによるパニックを覚えているでしょうか。地下鉄の座席や映画館の椅子にまで広がり、社会問題化しました。
《2023年の事例》
・パリ(フランス):2024年五輪を前にした「国家レベルのパニック」(AFPBB News)
2023年後半、地下鉄や映画館での目撃情報がSNSで拡散され、政府が緊急対策会議を開くまでの事態となりました。
・ソウル(韓国):政府が「トコジラミとの戦争」を宣言(産経新聞)
2023年末、それまで「根絶された」と思われていた韓国で被害が再燃。政府が強力な介入を行った事例です。
JNTO調べでは訪日インバウンドの人口はコロナ禍を除き増加傾向であり、日本も対岸の火事ではなくなってきているのが実態です。
2. ネットカフェ業界の衰退と「ハブ化」
ここで一つ、見落とされがちな事実があります。それはネットカフェ業界の衰退です。インバウンド需要が伸びるにつれホテル代が高騰する中、インバウンドの低予算旅行者や国内の移動者がネットカフェを宿代わりに使うケースが増えて業績は良いのだと私は思っていました。
ですが実際はそうでなく、その要因としてネットカフェならではの構造的リスクが集中していたのです。
ネットカフェがトコジラミにとって「五つ星」の好環境になっている要因
●24時間365日の「快適な気候」
トコジラミは20〜30℃の環境で最も活発に繁殖しますが、ネットカフェは常にエアコンが効いており、冬でも繁殖が止まりません。彼らにとっての「冬眠」がなく、年中無休で増殖し続けられるバイオドームのような環境です。
● 暗闇だからこその「ステルス機能」
トコジラミは強い「負の走光性(光を嫌って逃げる性質)」を持ちます。
活動の活性化: ネットカフェの薄暗さは、彼らに「今は夜だ」と誤認させ、日中でも活発に活動します。
検知の回避: 特徴的な「血糞(黒い点)」は、明るい場所なら一目でわかりますが、ネットカフェの間接照明や暖色系のライトの下では、ただの汚れや影に紛れて完全に見失われます。
● 無数にある「戦略的な隠れ家」
トコジラミは「暗くて狭い隙間」を好みます。ネットカフェには以下のような潜伏ポイントが無限にあります。
・パーティションの継ぎ目や壁紙の裏
・リクライニングチェアのクッションの隙間や縫い目
・床のカーペットの繊維や端
・大量にある漫画本の間や棚の裏 一度入り込むと、目視ですべてを見つけ出すのはほぼ不可能です。
● 効率的な「エサ(人間)」の供給
トコジラミは二酸化炭素や体温を感知して近寄ります。
・高密度の獲物: 狭いブースが密集しており、常に誰かが座って(あるいは寝て)います。
・無防備な睡眠: ネットカフェを宿代わりに使う利用者は、長時間、無防備に横たわります。これはトコジラミにとって、「逃げないエサ」が定期的に供給される最高級のレストランです。
● 物理的に「掃除ができない」という運営の限界
ホテルのように、チェックアウト後に部屋を空けて徹底的に清掃・点検する時間がありません。
・24時間稼働: 常に入客があるため、薬剤を撒いて数時間部屋を封鎖するような本格的な駆除が困難です。
・清掃の簡易化: バイトスタッフによる短時間の清掃では、クッションの隙間の「血糞」までチェックするのは不可能です。
持ち込みリスクの増大から始まり、近年ではSNSの普及もあって今やXなどのSNSやGoogleマップの口コミで瞬時に「トコジラミの出る店」として情報が拡散していき、店舗のブランドが崩壊するという完全に負のスパイラル構造になってしまっています。
市場規模が縮小し、店舗数がピーク時の7割程度まで減少しているというのは業界の過渡期だからというような簡単な要因だけではなく、
トコジラミが衰退の直接的な主因ではないが、追い打ちをかける『加速装置』になっているのは否めないのではないでしょうか?
24時間営業で、不特定多数が滞在し、暗くて狭い隙間が無限にある空間。管理が行き届かなくなった店舗は、インバウンド客や国内移動者を介してトコジラミが持ち込まれ、次なる場所へと拡散される「ハブ化」している可能性は十分にあり得ます。
私個人的にはネットカフェは大好き派だったのですが、こういった情報を目にするようになってからは全く行かなくなってしまいましたね….。
弊社ではシェアハウスの入居者さんへこういった情報を共有する事で、不作為にもシェアハウスへトコジラミを「持ち込むリスク」が減らせるよう意識して頂く事をお願いしています。
3. 「点」から「面」へ。経路の複雑化という罠

これまでは「ホテルや民泊、一部の施設(点)」で発生し、そこまでで被害は終わっていたかのように思われますが、昨今はもはや別のフェーズへと移行していると私は推測しています。なぜならその動線上で関わった日本人間でも移動するからです。
電車の座席やタクシーを介して、トコジラミを一見関連のない環境へと持ち込んでしまい、生活圏(面)へと拡がる事になっています。
さらに拍車をかけているのが、フリマアプリでの中古衣類や家具の流通・物流経路です。荷物や段ボールの隙間に卵が微量付着しているだけで数ヶ月後には住居はトコジラミの巣へと変貌してしまうのです。
対岸の火事とは言えず、しっかりと気をつけておく必要があると思っています。
■ 私がシェアハウス運営の実体験の中で経験したことをお話します。
弊社のシェアハウスは日本人と外国人比率でいうと、都内の他社とは圧倒的に比率が異なります。
弊社|外国人入居率は全体の1.6%程度(片手で数えられるくらい)
他社|3割~多くて8割越えが外国人居住の物件も
理由としてはコロナ禍当時、感染症を警戒して日本人の需要がかなり落ち込んでいました。実際にシェアハウス検索ボリュームも当時は5割近く落ち込んだと記憶しています。
この時期、シェアハウス事業者の廃業はよく耳にしました。
コロナ以降は日本人のシェアハウス需要が徐々に復調していましたが、既に収益が悪化していた事業者は外国人の取り込みを積極的に行わざるを得ない状況とインバウンドの再開もあって、結果的に現在の外国人入居者の比率に至っているというわけです。
かつて弊社でトコジラミが発見された時は、珍しく外国人の入居があったので流入経路が非常にわかりやすかったのですが、しばらくしてから全員日本人のシェアハウスで発生するケースが出たのです。入居者の方々へ近々の海外渡航歴を確認しましたが全員国内旅行にも行っていませんでした。
つまり日常生活の中から持ち込んでしまった事例がついに発生してしまったのです。
この時から私は日本国内でトコジラミの制御はもはや不可能かもしれない、持ち込ませない事と同時に、持ち込んだ場合は早急に対応していかないと取り返しがつかない事になってしまうという危機感を感じるようになりました
。
《後編へ続く》

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