見出し画像

適応障害で崩壊した私が、30代で「結婚」を選んで幸せになった理由〜田辺聖子に教わった、やわらかく生きる方法〜

仕事、結婚、人生... 迷いの森で疲れ果てたすべての女子へ。

​夜、アイロンをかける時間が好きだ。

​晩ごはんを終え、夫とお茶を飲みながら今日あったことや次の旅行の計画を話す。ほっとひと息ついたら食器を片付け、お風呂までの時間はそれぞれ自由に過ごす。風呂上がりにはアイロンをかけ、少し本を読んで眠る。

​これが、今の私の穏やかな日常だ。

​昔の私がこの文章を読んだら、きっと驚くだろう。もしかしたら、「丁寧な暮らしを気取っている」と、ひねくれた感情を抱いたかもしれない。

​でも、こんな生活を送っていることに、私自身が一番驚いている。

​20代の頃は、人間らしい生活とは程遠かった。プライベートを削り、ひたすら仕事に打ち込む日々。それを「バリバリ働いている」「私、輝いている」なんて、思い込んでいた。

​いや、勘違いと言ってしまうのは、あの頃の自分が可哀想だ。当時は、それが精一杯だったのだから。

​そんな私が、今では愛する人と穏やかな毎日を過ごしている。なぜこんなふうに180度人生が変わったのか。

​そのきっかけは、作家・田辺聖子との出会いだった。

​自分の好きなものを人生で一つでも多く増やすことを、教えてやらないオトナって、何のために年をとっているのだ? 私はこれから、この欄でワルイことばかり、女の子に教えていくつもりである。同じ生きるなら、女とはいいもんだ、と思わせるように教えるつもりである。

​『篭にりんご テーブルにお茶……』

​この一文に、私は心をつかまれた。

「女とはいいもんだ」と思わせようとしてくれる女性に出会ったのは、初めてだった。


​生きるって楽しいことよ。人生はいいもんです。まずはそう信じること(『歳月がくれるもの』)

『歳月がくれるもの』

​田辺がそう言うのなら、私も信じてみたいと思った。


​生きることの楽しさを明るくのびやかに謳う田辺に出会ってから、私も少しずつ変わっていった。そして、2年付き合った彼と結婚した。

​まさか自分が結婚するなんて。20代の頃は、結婚しないと思っていた、というより、する必要がないと思っていたのに。

​だけど今、私は「結婚」という選択をした。この文章は、その理由と、その選択にいたるまでの私の人生の記録だ。


​🖋️ 作家・田辺聖子について

​田辺聖子の詳しい略歴は、Wikipediaを読めば十分だろう。

​大事なことは、彼女が17歳のときに終戦を迎えたということ。それだけで、彼女がどんな時代を生きた人だったか、少しは想像できるのではないだろうか。

​36歳で芥川賞を受賞。エッセイ、小説、古典、評伝、幅広いジャンルの作品を描いたが、中でも恋愛小説で一大ブームを巻き起こした。

​田辺が生涯問い続けたのは、「この時代、女の子はいかに生きるべきか」ということだった。

​たとえば、田辺はこんなふうに語っている。

​当時の頭のかたい愚鈍な男たちが、〈ハイ・ミス〉だとか〈嫁きおくれ〉だとか〈嫁かず後家〉なんて侮蔑的に呼ぶ三十代女性の魅力をのびのびと描いて示したかった。
ハイ・ミスの魅力や人生的腕力を言挙げしたかった。

​『女のイイ顔』

​このひとつひとつの言葉に、彼女の強い意思が宿っている。


​昭和という時代に、女性の生き方を真正面から描き、提示し続けた作家がいた。

​田辺聖子という存在があったからこそ、私たちは今、いまこうして自分の人生を選べているのだと思う。

​田辺聖子の文学は、決して昭和の古いものではない。彼女の言葉は、今も私たちの心に響いてくる。

​だからこそ、今を生きる女性たち、とくに仕事や恋愛、生き方に揺れるアラサー世代にこそ、田辺の言葉に出会ってほしい。それが、私がこの文章を書いている一番の理由だ。

ここから先は

6,436字
この記事のみ ¥ 100

私の有料記事を5本以上お読みいただくのであれば、マガジンの購入の方がお得です!

私が書いた有料記事を、お得に読んでいただけるマガジンです。 個人的な内容を含むので有料にしていますが、紹介する本はどれもすばらしいと自信を…

よろしければ応援お願いします!