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旋律は、やがて押し花になる。

音の波にたゆたう。
心地よいBGMに身体をあずけて、
ゆらゆらと揺れる葉っぱのように。

僕の世界からは、音楽は切り離せない。
ロックにバラード、歌謡曲にクラシック。
最近はギターやサックスのインストゥルメンタルなんかにもハマっている。

気づけば、いつもの日常に音楽は溶け込んでいる。
当たり前のように、朝起きれば、夜にベッドに寝転べばそこで僕は揺れている。

音楽は自由だ。
きれいな旋律を聴くと、どこまでも泳いでゆける。

今聴いているのは、
中島美嘉さんの『雪の華』
めぐる季節は違うけれど仕事終わりに聴くと、昂った感情が静まってゆく。

スマートフォンで、繰り返し再生しながら、
リビングの窓を少しだけ開ける。
湿った空気が鼻を覆う。
夏の匂いってやつだろうか、なんだか息苦しい。
舞い落ちる雪に、思いを馳せている。

フフンフフン。
心地よいメロディーを鼻唄にのせて、夜の空気にふんわりと溶かしてみる。
まるで呼応するかのように、信号が手拍子をはじめる。
車のヘッドライトが、センターステージを照らすかのように伸びている。

あぁ、やっぱり音楽は自由みたいだ───。

高校生の頃、ロックバンドに憧れて、
一度だけアコースティックギターを手にしたことがある。
いつかはソロギターを弾けるようにと、一人浮かれていたけれど、魔のFコードに挫折して呆気なく手放してしまった。

それ以来、僕はエアギターをしながら、
頭を縦に振って過ごしているわけだけれど、
この歳になって、楽器を一つまた練習したいと思うようになった。
駅の構内で、優雅に演奏するストリートピアニストを見て、あんな風に鍵盤が叩けたらなと、、いやピアノは難しいか。

何なら根気強く続けられるだろう。
今話題のオタマトーンとか良いんじゃないか。
拍子抜けするような可愛げのある音だから、僕の下手くそな演奏でも、しばらくは許してくれるかもしれない。

音楽は自由であるべきだから───。

あの時代によく聴いていた曲。
久しぶりに再生してみると、心がくすぐったい。
足がムズムズとしてくる。

一年、また一年と歳を重ねる日々に、音楽はいつも寄り添ってくれていた。
まるで押し花のように、その頃の温度が挟み込まれている。

ページをめくれば、色褪せた花から、あの日の匂いがふわっと立ちのぼる。
だから今聴いているこの曲も、いつか季節が巡った頃には、
どこかのページで、そっと乾いているのだろう。

そんな音楽に支えられている───。

さて、ゆっくり晩酌でもしようか。
透明なグラスにシードルをコポコポと注ぐ。
リンゴの爽やかな香りが、すうっと鼻に広がる。

気分が少しいい。
一日がゆっくり沈んでゆく時間に、
『雪の華』を再生する。

「もう!何回目〜?」
あまりにも、同じ曲を聴いてばかりだから、妻が小さく笑っている。

なんでだろう。
いつも繰り返し聴いてしまうのは、今の僕が変わらないものを求めているから。
そして、一歩前の景色を知っているから。

だから同じ曲を聴いても、今日は違う光に見えるのだ。

旋律に身を任せて、どこまでも泳いでいく。
種目は『自由形』
がむしゃらに水をかいてもいいし、
空を仰いでプカプカと浮かんでいてもいい。

今日はどこまでいってみようか。
雲の隙間から、月が見えてくるまで。
そんな日々が愛おしい。


音楽は僕を自由にさせてくれる───。




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