#474 三陸で漁業がさかんなのはなぜ?
リアス海岸として有名な三陸海岸。
三陸では、
サンマ
サケ
マグロ
カツオ
イカ
ウニ
アワビ
など、さまざまな魚介類が水揚げされます。
では、なぜ三陸ではこれほど漁業が盛んなのでしょうか。
その秘密は、
「リアス海岸」と「三陸沖」
という二つの自然条件にあります。
「三陸」とはどこのこと?
まず、「三陸」という名前について見てみましょう。
三陸とは、現在の
青森県東部
岩手県沿岸部
宮城県北部沿岸
に広がる地域を指します。
「三陸」という名前は、明治時代以前の行政区分である
陸奥国(むつのくに)
陸中国(りくちゅうのくに)
陸前国(りくぜんのくに)
という三つの「陸」の国からきています。
つまり、
「三つの陸の国」
が「三陸」の語源なのです。
現在では行政区分ではありませんが、三陸海岸や三陸沖などの名前として今でも広く使われています。
リアス海岸とは?
三陸海岸は、日本を代表するリアス海岸です。
リアス海岸とは、山地が沈み込んでできた海岸地形のことです。
もともと谷だった場所に海水が入り込み、細長い湾がいくつも連なる独特の海岸線になりました。
岩手県から宮城県にかけての海岸は、入り江と岬が複雑に入り組んでいます。
この地形には、大きな特徴があります。
それは、
天然の良港になりやすい
ということです。
入り江が外海からの波を弱めるため、漁船が安全に出入りしやすく、昔から多くの漁港が発達しました。
現在でも宮古港・釜石港・大船渡港など、多くの重要な漁港があります。
リアス海岸は養殖にも向いている
リアス海岸の入り江は、波が穏やかで潮の流れも適度にあります。
そのため、
カキ
ワカメ
ホタテ
などを育てる養殖漁業に非常に適しています。
新鮮な海水が湾の中を循環するため、生き物が育ちやすい環境になっているのです。
つまり、リアス海岸は「魚を育てる海」としても優れていると言えます。
三陸沖は日本有数の豊かな漁場
しかし、三陸地方の漁業が盛んな理由は、リアス海岸だけではありません。
もう一つ重要なのが、沖合に広がる三陸沖です。
三陸沖は、日本有数の豊かな漁場として知られています。
その理由は、
暖流の黒潮(日本海流)
寒流の親潮(千島海流)
という二つの海流が交わる場所だからです。
この海域では、深い海にある栄養豊富な海水が混ざり合い、植物プランクトンが大量に増えます。
それを動物プランクトンが食べ、小魚が集まり、さらに大型の魚が集まるという豊かな食物連鎖が生まれます。
そのため、
サンマ
サケ
マグロ
カツオ
サバ
イワシ
など、多くの回遊魚が三陸沖に集まるのです。
世界にはニューファンドランド沖やペルー沖など豊かな漁場がありますが、三陸沖もそれらに匹敵するほど魚が集まる海域として知られています。
「獲る漁業」と「育てる漁業」の両方が盛ん
三陸地方の特徴は、
「獲る漁業」と「育てる漁業」の両方が発達していること
です。
沖合では、三陸沖の豊かな漁場を利用して、
マグロ
カツオ
サンマ
サケ
などを漁獲する「獲る漁業」が行われています。
一方、リアス海岸の入り江では、
カキ
ワカメ
ホタテ
などを育てる養殖漁業が盛んです。
つまり、
沖では魚を獲り、湾では魚介類を育てる。
この二つの漁業が同じ地域で発達していることが、三陸地方最大の特徴なのです。
東日本大震災と三陸海岸
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、三陸沿岸は特に大きな被害を受けました。
その理由の一つが、リアス海岸という地形です。
リアス海岸は、細長い湾が内陸まで深く入り込んでいます。そのため、沖から押し寄せた津波は湾の奥へ進むにつれて幅が狭まり、波の高さがさらに増す性質があります。
このため、三陸沿岸では場所によって10メートルを超える津波が押し寄せ、多くの住宅や漁港、養殖施設、漁船が大きな被害を受けました。
一方で、三陸地方の人々は古くから津波とともに暮らしてきた歴史があります。過去にも明治三陸地震津波(1896年)や昭和三陸地震津波(1933年)など、何度も大きな津波を経験してきました。
震災後は、防潮堤の整備だけでなく、高台への住宅移転や避難道路の整備、防災教育の充実など、さまざまな防災対策が進められています。
また、全国からの支援を受けながら漁港や養殖施設も少しずつ復旧し、現在では三陸ブランドのカキやワカメ、ホタテなどが再び全国へ出荷されるようになりました。
豊かな海の恵みを生かしながら、災害と向き合い、防災と復興を両立させていることも、現在の三陸地方の大きな特徴と言えるでしょう。
おわりに
「三陸で漁業がさかんなのはなぜ?」
その答えは、
リアス海岸という養殖に適した海岸地形
黒潮と親潮が交わる三陸沖という豊かな漁場
という二つの自然条件がそろっているからです。
さらに三陸地方では、
沖で魚を獲る「獲る漁業」
入り江で魚介類を育てる「養殖漁業」
の両方が発達しています。
私たちは地図で三陸海岸を見ると、ギザギザした海岸線という印象を受けます。
しかし、その複雑な地形こそが、三陸地方の豊かな漁業を支えてきた大きな理由だったのです。
社会科では、「リアス海岸」や「海流」という言葉を覚えるだけでなく、「なぜその自然条件が人々の産業につながるのか」まで考えてみると、地理の学びがぐっと深まります。
【目次】
