#293 イギリスの料理がまずいと言われるのはなぜ?
「大英帝国が発展したのは、イギリス料理がまずいので海外においしい食べ物をもとめたからだ」・・・イギリスの政治家チャーチルが発言したジョークである。
たしかに、「フランス料理」「中華料理」「イタリア料理」などはよく聞くが、「イギリス料理」というとピンとこない。
ちなみに、ローストビーフやスコーン、フィッシュアンドチップスなどがイギリスの有名な料理だ。
しかし、イギリス料理は食材の種類が少なく、調理法も単純で、素材そのものを煮たり焼いたり、揚げたりしたものに好みの調味料をかけて食べるとい
うのが一般的だ。
イタリア料理やフランス料理では、出された料理に調味料をかけて食べると言うのは「料理がまずい」というメッセージになってしまうためマナー違反となる。イギリスとは対照的だ。
では、イギリスの料理はまずいという風潮はどこから来たのだろうか。
①地理的要因
イギリスは西岸海洋性気候の国だが、高緯度で南ヨーロッパ諸国と比べると冷涼な気候だ。そのため、穀物の栽培や酪農はさかんだが、野菜や果実類が乏しく、そもそも食材が限られていた。
②宗教的要因
イギリスはプロテスタントの国。
南ヨーロッパのカトリックの国々には、「食事を楽しむ」という美食文化の伝統があったが、禁欲を重視するプロテスタントは、質素な食事こそが大事という文化をつくった。
とくに市民革命後は贅沢な食事は罪悪とされた。
③産業革命の影響
産業革命によって労働者の人口が増え、19世紀末には国民の4分の3が都市に住むようになった。
労働者階級住居には劣悪で、水道や台所がない住居も多く、まともな料理をつくることができなかった。パンとジャガイモが当時の労働者の食事で、肉は贅沢品だったという。
1870年代に北海でタラの漁獲量が増えると、タラをフライにしてジャガイモに添えるという料理が労働者の間で広まった。これが現在のフィッシュアンドチップスの誕生だと言われている。
④二度の世界大戦の影響
20世紀に入ると、労働者の生活環境が改善され、食料の保存技術も上がったことから、食文化の発展が期待された。
そんなイギリスを待ち構えていたのが2度の世界大戦である。
戦争によってイギリスは食料不足に陥り、料理の質が著しく低下してしまったことは容易に想像できる。
このような地理的・歴史的要因から、現在のイギリスの食文化が形成された。「イギリス料理はまずい」というのは傲慢な固定観念だが、料理を通してイギリスの歴史や文化を知ることができる。
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【参考】
