資本コストとCAPMとWACC
資本コストはかなり難しいテーマです。学習を始めたばかりのころはまったく頭に入ってきませんでした。
でも実は意外とシンプルです。
企業がお金を集めるとき、そのお金には値段がついている
その値段が、資本コストです。
1. 資本コストとは何か
資金にはコストがある
企業は、お金を次の2つから調達します。
債権者(借入・社債)
株主(増資)
このとき、お金を使わせてもらう対価が発生します。
これが資本コストです。
債権者に対する資本コスト
これは簡単です。
債権者に対する資本コストは「金利」です。
借入金に対して支払う利息のことです。
株主に対する資本コスト
株主へのコストは
👉 配当 + 株価の値上がり益(キャピタルゲイン)
です。
「なぜ値上がり益がコストなのか?」
2. なぜ株価上昇が ”コスト” なのか
投資家の立場で考える
投資家は、
配当が欲しい
株価が上がってほしい
と思って株を購入します。
つまり、"投資家は期待収益率を求めている" ということになります。
企業側から見るとどうなるか
企業が増資をするとき、
"投資家が期待する収益率以上の成果を出さなければお金を出してもらえない"
ということになります。
この期待収益率が株主資本コストとなります。
3. CAPM(資本資産評価モデル)とは何か
正体不明の期待収益率を具体的な数字として計算するための道具がCAPMです。
株主資本コスト ▶︎ 株主がどれくらいのリターンを期待しているかという概念
CAPM ▶︎ その期待値を「リスク(β)」を使って論理的に導き出すための計算方程式
期待収益率 = リスクフリーレート + β ×(市場の期待収益率 - リスクフリーレート)リスクフリーレート ▶︎ 国債など「リスクゼロでももらえる金利」のこと。これがベースになります。
市場リスクプレミアム ▶︎ 「リスクのある株式市場全体に投資するなら、国債よりこれくらい上乗せしてくれないと困る」という市場全体の上乗せ分です。
β ▶︎ 「市場全体が1動いたとき、その株がどれくらい激しく動くか」という感度です。
β = 1.5 なら市場より激しく動く(ハイリスク・ハイリターン)
β = 0.5 なら市場より動きがマイルド(ローリスク・ローリターン)
投資家は「リスクが高い株ほど、高いリターンをよこせ」と考えます。CAPMはその「リスクの大きさ(β)に応じて、期待収益率を客観的な数字で算出できるツールとなります。
計算例
リスクフリーレート
正体:10年物の国債の利回りなど
単位:「%」
意味:日本という国が潰れない限り、投資すれば確実にもらえる利息
市場の期待収益率
正体:日本の株式市場全体の平均的な利回り
単位:「%」
意味:市場全体に投資したときに、だいたいこれくらい儲かるだろうという予測値
A社の期待収益率(計算例)
実際にA社の期待収益率を計算してみます。
【前提条件】
リスクフリーレート ▶︎ 1%
市場全体の期待収益率 ▶︎ 6%
A社のβ ▶︎ 1.5
期待収益率 = リスクフリーレート + β ×(市場の期待収益率 - リスクフリーレート)
A社の期待収益率 = 1% + 1.5 ×(6% - 1%)= 1% + 1.5 × 5% = 8.5%結果の意味:
投資家の視点:「A社は市場リスクが高いため、8.5%くらい儲からないと投資する価値がない」
A社の視点:「株主を引き止めるためには、最低でも8.5%以上の利益(リターン)を出さないといけない。これが株主資本コストだ」
4. 企業全体の資本コスト = WACC
企業は、借金だけ、または株式だけで資金調達しているわけではありません。両方を組み合わせています。
そこで登場するのが WACC(加重平均資本コスト)です。
WACCは
👉 企業全体の平均的な資本調達コスト
です。
WACCの考え方
WACC = 負債構成比率 ×(1 - 実効税率)× 負債コスト+ 株主資本比率 × 株主資本コスト(CAPM)で求めます。単位は全て「%」になります。
ポイントは3つあります。
① 時価で計算する
負債も株式も "簿価ではなく時価" を使います。
特に株式は、
👉 発行済株式数 × 株価
で求めます。
② 負債コストは税引後
なぜなら "支払利息は損金になる" からです。
つまり、 "借金には節税効果" があり、
負債コスト ×(1 - 実効税率)となります。
③ 比率は「構成割合」
WACCは、 "企業全体の平均的な資金調達コスト" です。
なので、
負債が多ければ負債コストの影響が大きい
株式が多ければ株主コストの影響が大きい
という構造になります。
負債構成比率 = 負債 ÷ 負債 + 株主資本株主資本構成比率 = 株主資本 ÷ 負債 + 株主資本5. なぜ借入が多いと資本コストは下がるのか
理論上は、 "借金のほうが株主資本より安い" です。
さらに、 "利息は損金に算入できる"。
つまり、
👉 ある程度の借入は資本コストを下げる
という財務レバレッジの考え方です。
6. 資本コストは何に使うのか
資本コストは、 "投資評価の「割引率」" として使われます。
つまり、
👉 WACC以上のリターンが出なければ、企業価値は増えないということです。
7. サステナブル成長率とのつながり
企業が成長するには資金が必要です。
そのとき、"外部から資金を調達せずにどれだけ成長できるか" を示すのが、 "サステナブル成長率" です。
サステナブル成長率 = ROE × 内部留保率ROE ▶︎ 自己資本の収益力
内部留保率 ▶︎ 利益のうち再投資に回す割合
つまり、"自分で稼いだ力で、どこまで成長できるか" を示します。
8. ここまでを一本で整理する
資本コストは、
👉 投資家が求めるリターン
のことです。
企業は、
👉 その期待収益率を超える投資をしなければならない
そして、
借入をどう使うか
内部留保をどう使うか
が成長戦略になります。
✅ 自分用のまとめ
資本にはコストがある
株主資本コストは期待収益率(CAPM)
企業全体の資本コストはWACC
借入は資本コストを下げる効果がある
WACCは投資判断の基準になる
難しい。。。
