【TMR新書】アクティビストの存在意義とその先にあるもの
(TMR新書はメンバーシップ会員との共同創作物です)
A:前回のTMR新書において、元東京高裁判事の鬼頭季郎氏のコメントを引き合いに対話を行いました。
鬼頭氏は「アクティビストが会社の価値を向上させる事例はほとんどみられない。会社の利益は従業員や取引先、株主など各ステークホルダーに分配されるべきで、株主が総取りできるものではない。株主価値は企業価値の一要素に過ぎない」と述べられていました。
B:本日は、自民党の経済産業部会長を務める小林史明氏の発言から。
「大前提としてアクティビストの存在を悪とはみていない。企業の経営者に対して市場から一定の緊張感を与える重要な存在だ。アクティビストらとのコミュニケーションを通して、日本企業の業績は過去10年間で大きく改善した」
A:アクティビストの存在を、経営を強くする「緊張感」としてポジティブに捉えているのですね。
B:ミネベアミツミの会長であり、M&A巧者として知られる貝沼由久氏も以下のように述べられています。
「企業経営に間違いなく緊張感が生まれた。緊張感が会社組織を強くし、業界再編の動きも加速している。これは良いことだ」
――過度な提案はないでしょうか。
「法律やルールの範囲であれば何の問題もない。アクティビストが嫌なら、資本効率や株価、利益を上げるしかない」
「一方で経営には不確実性がある。経営側が急速なリストラを進めるのは危険だ。リスクに備えた資産や現預金を保有せねばならない。資産がないとそれを担保にして借金すらできなくなる」
G(ハンドルネーム=お仕事さん):足元では、とりあえずPBR1倍を達成するための過度な株主還元が目立つ印象です。
B:小林氏もその弊害を指摘されています。
――足元で弊害も出てきているようです。
「アクティビストが短期的な株主還元を求める動きが非常に活発になっている。日本は成長のどのステージの企業も株主還元が多い。手元資金をもっと設備投資や研究開発、賃上げに回すのが望ましい」
B:小林氏はさらに日本の規制が弱い点や経済安全保障についても発言。
「企業は株式持ち合いによって守られてきたが、持ち合い解消の動きが広がり『ヨロイ』がなくなってきた。世界的にみて日本の規制は弱く、経営側がノーガードの状態となり、アクティビストに攻め込まれている」
「世界からの投資マネーの呼び込みは重要だが、日本の経済安保が大前提で、個別企業でも技術流出リスクへの対応力を強化することでサプライチェーン(供給網)が安定して競争力が高まっていく。経済安保の強化と企業への投資マネーの呼び込みは相反しない」
A:欧州や米国には持合いとは異なるヨロイが実はいろいろとありますね。
G:メタでは、創業者マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏の強い議決権支配が続いていますし、アルファベットも複数議決権株を通じてラリー・ペイジ(Larry Page)、セルゲイ・ブリン(Sergey Brin)両氏が議決権の大半を握っています。米国の主要企業では似たようなケースが多いです。
B:貝沼氏も国益を踏まえた議論の必要性を述べられています。
「アクティビストは神様ではなく、どこまで提案を受け入れるかの判断は難しい。その線引きは国益になるかで考えるべきだが、この議論が足りていない」
「日本企業が資本効率を意識して相次いで撤退した事例として防衛産業がある。足元では防衛予算の拡大とともに需要が伸び、事業を続けてきた企業の株価は急騰している。もっと撤退していたら、日本の安全保障へのリスクが大きくなっていたのではないか」
A:日本では国益や公益に関する議論が圧倒的に不足していると思います。
G:文化面でも忌々しき事態があります。オアシス(Oasis Management Company)によるDIC川村記念美術館のケースなどは本当に残念です。
B:貝沼氏は「法律やルールの範囲であれば何の問題もない」と述べられていた一方で、以下を発言されています。
「良いか悪いかは別としてトランプ米大統領は自国第一主義を掲げ、海外からの投資を呼び込んだり、追加関税をかけたりしている。こうした国際情勢のなか、海外企業や海外投資家に対し、日本として『会社法の通りに好きにやってください』でいいのかと問いたい」
G:経営者が判断すべき事項にまで株主が介在できる点は、グローバルで見ても異質であると、かねてから問題視されてきたと思います。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?

