ざまぁとジョジョとゼノブレ2と、悪役に対する自問自答
異世界とざまぁ系
自分はあんまり「異世界もの」を読まないんですが、別に異世界に転生・転移するのが嫌いなわけでもハーレムがそこまで嫌いなわけでもありません。
どちらかと言うと現代舞台の作品の方が好きだなという感覚はあるのですが、別に特別異世界は嫌なんてことは無いわけです。
ただまあアニメ作品に関しては元々そんなに見ないのもありまして、ちゃんと完走した作品はかなり限られていますね。
記憶にある限りだと、「この素晴らしい世界に祝福を!1期」、「骸骨騎士様 只今異世界へお出掛け中」、「神無き世界のカミサマ活動」辺りが確かちゃんと最後まで見ることの出来た異世界ものだったと思います。
あと「魔王様、リトライ!」の1期も確か見てたかな…?
まあ割とどれもニコニコのコメントでのツッコミありきみたいなところはあった気がしますけども。
で、珍しく完走しているこれらの作品の中から逆に「なんで自分が異世界モノにあまり乗り切れないことが多いのか」と理由の1つを見つけました。
間違いなく、「ざまぁ」がその一端になっています。
「ざまぁ展開」とは、物語の中で主人公が不当な扱いや困難な状況に陥った後、成功や逆転劇を通じて加害者や見下していた人々に報復する、またはその立場を覆す展開を指します。
この要素は特にライトノベルや異世界ファンタジー作品などで人気があり、読者に強い爽快感を与える特徴があります。
このすばって多分、当時の異世界転生モノのテンプレートにある程度逆張りして出来上がった作品だと思うんです。別にそれもとっくにありふれてたりはするんでしょうけど。
でも多分、自分やもしくは他のファンの方が「異世界モノ別に好きじゃないけどこのすばは面白い」って感じた理由のある程度はそこだと思うんです。
で、まあ基本的に楽しく見られてたんですけど。
唯一?だったかは忘れましたが、アニメ範囲の作中で明確にあんまり気に入らない展開がありました。

この人。ミツルギくんの初登場時のシーンですね。
滅茶苦茶テンプレートっぽい異世界転生勇者みたいな設定で、唐突に突っかかってきて、主人公のカズマさんにバカにされながら撃退される、みたいな。
この作品がテンプレートへの逆張り要素を含んでいることがわかりやすいシーンではあると思うのですが、この展開自体も滅茶苦茶テンプレート的ざまぁなんですよね。そもそもこのすば自体なんだかんだでハーレムではありますしね。別にそれ自体がダメってわけじゃないんですが。
ミツルギくん自体はただざまぁされるだけで終わらせずにかなり良い具合のポジションのキャラになってった記憶があるので、作品通して見れば別に特別悪かったわけじゃないとも思うんですけど。
それでもやっぱり、この初登場シーンは少なくともアニメ見てるだけの範疇で考えると自分の中での作品に対する理想とズレを感じたシーンだったと思います。
多分それは自分だけでは無くて、結構同じ感想を抱いた人はそこそこ居るっぽくはありますが。
それはさておき、じゃあ今度はなんで「ざまぁ」が嫌なんだろう?って話なんですけども。
ざまぁ展開の人気の理由
1. 不遇からの逆転劇への共感主人公が理不尽な扱いを受ける展開は、多くの読者にとって共感しやすいものです
現実でも不当な扱いや困難を経験した人々は、主人公の成功や復讐を通じて自分自身の希望や救済を感じることがあります
2. 爽快感とカタルシスざまぁ展開は、「悪役が報いを受ける」「主人公が勝利する」という構造によって読者に強い爽快感を提供します
特にストレス解消や現実逃避として、このジャンルは支持されています
3. 因果応報という普遍的テーマ「悪事には罰が下る」という因果応報のテーマは古くから物語で扱われており、人々にとって納得しやすく魅力的です
このテーマは道徳的な満足感も与えます
4. 多様な展開パターンざまぁ展開は単なる復讐だけでなく、「主人公が無関心でいる間に敵役が自滅する」「敵役が後悔して謝罪する」など、多様な形で描かれるため飽きられにくい点も人気の理由です
うん、まあこれも別に書いてあることは納得できるんですよね。
4の「主人公が無関心でいる間に敵役が自滅する」は別にあんま面白くなりそうだとは思わないんですけど。逆に言うとそれ以外は別に面白い要素だよね、と思います。
要素を説明されたら面白そうだと思うのに、実際読んであんま面白くないなぁと感じることが多いわけです。何故でしょうか。
多分、「悪役に説得力が無い」んですよね。
悪役の説得力
「ざまぁされるためだけに生まれてきたかのようなキャラ」が予想通りにざまぁされて終わることに不快感を抱いているのだと思います。
不必要に性格の悪いNPCが不必要に主人公を虐げて主人公がやり返す、みたいな。
そこに至る背景を感じられないと納得できないんでしょうね。
あんまり知らない異世界モノではなく、今まで知ってる創作全ジャンルから考えてみます。
例えば大ヒット作品鬼滅の刃ですが、自分は世間ほどドハマり出来ているわけでは無いものの、明確に面白い作品だとも思っています。
その理由として自分の中で大きいのは悪役が面白いことなんですよね、絶対に。
鬼滅って悲しき悪役と根っからの悪役の2パターンに分かり易く別れがちだと思いますが、その両方の扱いが非常に上手いですよね。
結局負けて死ぬという結果は変わらないのですが、その描き方は全く違います。
そして、ざまぁされるのは基本後者なんですよね。
いやそんな露骨に炭治郎達がざまぁ見ろ!とかは言ってないとは思うんですけど。似たようなことは言ってたかな…?
終盤で言うと、多分童磨と無惨とあとオマケで兄弟子のクズでしょうか。

この無惨様なんですが、一般的に好感を抱ける人格かと言われたら絶対に違いますよね。むしろ真逆です。最低最悪なクソカスでしょう。
でも、悪役としては鬼滅のキャラの中だと無惨様がトップクラスに好きです。
キャラクターが徹底しているからですね。
で、最後の最後に全部のツケが回ってきて思いっきり無様に敗北するわけですが、ここはむしろスッキリ気持ちいいざまぁなわけです。
逆に呪術はなんか大体全部スッキリしなかったりしましたね。意図的にやってたのかどうかは知りませんが。
個人的には幼魚と逆罰がピークな作品でした。
まあメロンパンvs芸人のバトルそのものとかは別に好きなんですけど…
さておき結局のところ、自分がダメなのってざまぁ展開そのものと言うよりは悪役の魅力・説得力の不足なのだと思います。
強引な因果応報じゃなくて綺麗で気持ち良い因果応報が見たいのでしょう。
悪役が面白い話を成立させるのに重要な要素だと感じているわけです。
悪役の魅力
パッとわかりやすく別方向に思いつくのが、『ジョジョの奇妙な冒険』と『ゼノブレイド2』です。媒体もジャンルも別物ですが。
鬼滅で分けられる「根っからの悪役」寄りのキャラが魅力的なのがジョジョで、「悲しき悪役」寄りのキャラが魅力的だったのがゼノブレイド2でした。
ジョジョの悪役の魅力
道徳的アライメントでいう所の、悪属性まみれです。
秩序寄りの悪属性なのがプッチや大統領
中立寄りの悪属性なのが吉良やディアボロ
混沌寄りの悪属性なのがDIOでしょう。
他はちょっと解釈が難しい(最初から明確に人間では無い)ので置いとくとして、どれも魅力的な悪役だったと思います。
作者である荒木飛呂彦先生は、「悪いことをする敵」というのは「心に弱さを持った人だ」と過去に書いています。
どのラスボスも基本的に自分の中で強烈な信念を感じさせ、魅力を感じますが、その上で心が弱いから負けるべくして負けたのだ、というのも割と一貫性を感じます。前述した心の弱さ発言は確か4部の頃のものなので、3~5部辺りが特にその辺りがわかりやすい気がしますね。
まあ大統領はかなりそこの基準からズレていると思いますが。
Fate的なアライメントの当てはめ方をするなら善属性にされててもギリギリおかしくないくらいです。
少なくとも心の弱い部分をあまり描かれなかったラスボスだと思います。
実質並行世界なので色々と描き方を変えたのかなとか勝手に思ってますが。
主人公のキャラクター性も独特だし。
大統領の心がかなり強いのに対してジョニィは漆黒の意思を得るまではむしろかなり弱さを感じさせましたしね。

プッチとかも個人的には別に最初から悪属性ではないという認識ですけども、堕ちた先の結末としては大体他と同じでしたからね。
秩序・中庸→秩序・悪に変化したタイプだと思います。
根本までDIOという悪に染まったという印象。

さておき、徹底した悪役が自分の中ではとても魅力的なキャラクターなのがわかります。
ゼノブレ2の悪役の魅力
キャラクター的な魅力にもなるのですが、大きくシナリオそのものに関わる魅力を生み出すタイプの悪役が多かったです。
具体的には、シン、メツ、マルベーニの三人について。
シンはもうこれでもかってくらいに、悲しき悪役ですよね。
アライメントで言えば、作中の時系列でも悪属性では無いと思います。
中立・善→中立・中庸くらいではないかと。
最期まで仲間想いなのは変わりませんでしたし。

ゼノブレ2のこの三人の特徴としては、どれもどうしようもない、完全な悪人だったわけでは無いことが1つあるのですが。シンは一番オーソドックスなタイプですね。
失敗した過去の主人公チームの一員なわけで。
世界に絶望したけど堕ち切ったわけではないので、最後は主人公のレックスに未来を託して満足して逝けました。
堕ち切ったわけではないので、悪事もあくまで自分の欲を満たすためと言うよりは誰か(主にラウラ)のための義務感によって動いている感じです。
まあ結局それも見方を変えれば独善ではありますが。
シンプルにカッコいいのもあってわかりやすく魅力的な悪役だとは思うのですが、シナリオ上の重要性で言えばかなり明確に中ボスですね。
根っからの悪でもなく堕ち切った悪でも無い関係上、一番レックスに救われた立場の悪役でもありました。
しかしそこに至るまでには、悪と呼べるメツに影響を受けて救われていた部分もあるというのが面白い所だと思います。
生きる意味を失ったのに、ラウラを失わないという義務感だけで抜け殻のように穏やかな絶望の中に生きていた所を、メツの提示した世界を滅ぼすという悪によって満たされていたわけなので。

で、そのメツなんですけど。これもまた非常に素晴らしい悪役でした。
メツブレイドが変な流行り方をしたのも納得できます。
しかし初見でこっちがラスボスだと思った人は居るんですかね…
三人の中だともっとも明確に根っからの悪に近いキャラクターなんですが、その根本自体が人から(マルベーニから)勝手に与えられたものであり、自分の価値観や行動が他者から入力されたものでしかないこと、正確に言えば自分の存在意義に苦悩し続けたというのがこのキャラの肝ですね。
根っこがマルベーニから与えられた悪性であって本当の意味での本質とは違うとは思うのですが、メツというキャラを人物として定義した場合は少なくとも過去編の時点ではまさに混沌・悪属性と呼べるキャラでしょう。
最期まで概ねそのまま突き進んでいるとは思いますが、間違いなく現代の時間軸においては組織の仲間たちから与えられた影響もあり、多少中庸に寄ってたんじゃないかなと思います。

そもそもが人から与えられた悪性なので、ずっと一緒に居た他の人(シン達)から影響を受けて多少変わるのも何らおかしくないですよね。
それでも最期まで、自分の存在意義については悩んでいても、マルベーニから与えられた悪性に対しては文句を言うことなく逝ったというのが凄く繊細で美しい造形をしている悪役だと感じました。

彼が憎んでいるのはこの世界と自分を生み出した神であってこの世界を生きる人達では無いんですよね。だからって別にそれらに対して甘かったわけでもありませんが。

このメツの強烈なキャラクター性が全開になる最終決戦は敵味方ともに名言ラッシュで、最もこの作品のシナリオ性を象徴するラスボスでした。
名言塗れの中にある、「言葉は呪いだ」というセリフも凄く良いですね。
端的に、この世界で表現されたテーマの本質を突いていました。
そういえば呪術廻戦でも似たようなセリフがありましたっけ。
メツ自身の正式名称である『ロゴス』が「言葉」という意味を持っているのもなんともまた…という感じで。
元々明確に目的があったわけでは無くメツの意思に付き従っていた部分が強いシンと違って、自分の目標であった世界を滅ぼすことには普通に失敗しており、概ね完全敗北しています。
しかし本人の本質的な欲求はやはり自分の存在意義を見つけることにあり、そこに関しては戦闘中、そして最後のレックスとの対話で自分が納得できるような答えを見つけられたのか、失敗したにも関わらず何やら満足げに消滅していました。
最後のプネウマに対する「生まれてみてどうだった?」という優しい問いかけからも様々な物が感じ取れます。
ゼノブレ2どころか全創作の中でも屈指に、味がする悪役でしたね。
そしてこの作品において一番がっつり最後の最後まで悪役なマルベーニなんですけど。
個人的にはこういう悪役が居ることが更にこの作品の一貫性を高めてて良いな、と思います。
マジで徹底して大体こいつのせいだしやってることもすげえクソなんですけど。
「そうなるに至る過程」に非常に説得力がありました。
根本に近い所まで堕ち切った悪でありながらも、悲しき悪でもあります。
シンが中立・善から中立・中庸に、悪に寄った形だとすればマルベーニは秩序・善から秩序・悪まで段階的に堕ち切った形になるでしょう。
マジでクソ野郎なんですけど、そうなってしまったこと自体には全然マルベーニの落ち度は無いんですよね。
ジョジョの悪役で言えばプッチ神父が非常に近い部分を持っているとは思うんですが、プッチ神父よりもわかりやすく、更に深刻だと思います。
幼少期に母親の理不尽な死を経験してまず軽く世界に絶望。そのまま人殺しも経験します。
それでもある程度真っ当に育ち、青年期に自分が善意の元に助けた相手がその後普通に野盗堕ちして強盗殺人を行っていたのを目撃して追い絶望。
ここでもう十二分に絶望しきるに相応しいことになっていますが、ここから更に何故こんな世界を作ったのかと神に答えを直接求めに行くのが凄いですよね。
ここは特にプッチ神父の過去とも被りますが、あっちは結局神というものは作中に登場しない("運命"が実質的な神のような役割ではあるが)のでずっと一人で悩んでいたところをDIOに歪んだ答えを与えられています。
それに対して、マルベーニは実在する神に会いに行った結果として何の答えも貰えなかったことで、完全に歪んでしましました。酷いですよね。
やってることは間違いなくド外道悪役なのにその上でそうなるに至る説得力のある過去も描かれ、そしてちゃんと悪役として敗北しました。
シンやメツと違って救いもほんのわずかです。最後の最後のギリギリまで、神に対しての疑問を投げかけ続けていました。
本質的には全く救われていないと言えるでしょう。
しかしそれでも本当に最後の最後では、歪み始める前から愛していた母親の幻覚を見て逝ったというのが非常に丁度いいバランスの救いだったと思います。
世界に絶望した悲しき悪役ではあるものの、主人公の足を引っ張り続けて世界に迷惑をかけまくっていたド悪人でもあるために、普通に満足して死ぬといまいち釈然としなかったでしょう。しかし何の救いも与えられずに死ぬのも悲惨すぎるので、このほんのわずかな救いが良い味を出しています。
まさにメツの、「酷い世界だろ」という叫びを象徴するキャラクターであり、これがメツという存在を生み出したことにも説得力がありました。
そして彼が死んだ後のジークの回想からのセリフがまた素晴らしくて、マルベーニは人の悪意に触れ続けた結果として間違いなく世界に絶望し、滅ぼそうとしていたのにも関わらず、心のどこかでは過去確かに存在していた人の善性というものをほんの少しだけ信じてしまっていた事が端的に伝わってくる名シーンです。

あとほぼ諸悪の根源みたいな存在が別に悪役では無いというのも、象徴的ですね。

ゼノブレイド2はとにかくこれらの悪役が素晴らしい出来をしていることで、非常にゲーム内の世界とシナリオに深みを感じることが出来ました。
だからRPGの中でもトップクラスに好きなんだと思います。
単品のキャラクターとして魅力的だったジョジョの悪役と違って、シナリオを魅力的にする悪役という印象です。
勿論それはキャラとしても魅力的ではあるんですが。大前提がシナリオ・世界観ありきなんですよね。
結論
多分別に絶対的な価値基準では無いんですけど、自分の中でシナリオを深く楽しむ際には悪役の魅力が必要不可欠なのだと思います。
悪役、というか敵対者ってシナリオ上本来とても重要であるべきじゃないですか。
別にただ倒されるためのキャラでも面白くできるようなシナリオはそれはそれで凄いと思うのでいいんですけど、本当にただサンドバッグとして出して殴り終えたら使い捨て~みたいなのは、シナリオを見る目線だとどうしても耐え難いものに感じるんだと思います。
別にこれは悪役に限らないんですけど、キャラに生き様が感じられると凄い加点になります。
逆に言えば、やられるためだけのキャラに生き様が全く感じられないのがきついんでしょうね。
多分逆ご都合主義への不快感と近いですね。別に人間そんな善人ばっかじゃないだろうけど言うほど頭のおかしい悪人ばっかなわけもないだろ、みたいな。
全てじゃ無いでしょうがそういう要素が「ざまぁ」には安易に含まれがちなので、あんま上手く呑み込めないんだろうなと理解しました。
別にやられるためだけに出てきた悪役でも強烈なキャラクター性があればそれはそれで良いわけですけども。
根本的にキャラの語り口が濃いジョジョなどはそういうのを割とポンポン出せるんでしょうが、普通はそういうキャラはもうちょい肝心なポジに置きますしね。
作品の感想を含めた自問自答でした。
