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SS#071_白い壁 / The White Wall
Zさんは懲役150,000年を言い渡された犯罪者だった。
罪状は巨額投資詐欺。
何万人もの人生を壊した男は、被害者からの追求が激化するなか、
自首する形で捕まり、いまは、独房で白い壁を見続けている。
のっぺりとした壁に飽き飽きしていたZさんは
景観療法プログラムの緑地空間サービスを利用することにした。
「お好きな緑地空間はありますか?
草原、山、森林、その他、ご希望のタイプを選択ください。」
かざされたディスプレイで、Zさんは森林を選んだ。
すると、画面が変わり、壁一面に森が広がった。
小鳥が鳴き、
風が吹き、
木漏れ日が揺れる。
一週間後。
Zさんはサービスを変更した。
「理由をお聞かせください。」
「誰かが来る気がして落ち着かない。」
次に選んだのは草原だった。
牛が鳴き、
みずみずしい草むらが広がる。
遠くで木々が風に揺れている。
さらに一週間後。
Zさんは再びサービスを変更した。
「理由をお聞かせください。」
「誰かに見られている気がする」
次に選んだのは「その他」
色、植生密度、葉の揺らぎ、鳥の種類、風の強さ……など、選択肢に沿って生態系を選んでいく。
「完成です」
映し出されたのは、迷彩柄になった壁だった。
「生態系を抽象化した標準パターンです。」
だが、それも長くは続かず、
一週間後、Zさんはサービスを終了した。
「理由をお聞かせください。」
「自然には、必ず誰かの暮らしがある。」
鳥の向こうにも、
森の向こうにも、
草原の向こうにも。
人がいる。
白い壁だけが、
誰もいない景色だった。

