見出し画像

減っていくものづくりと、増えていくものづくり── 自由丁・小山将平さん対談(前編)

マガジン『ものづくり視点』は、SEVEN THREE.クリエイティブディレクター 尾崎ななみが、ものづくりに携わっている様々な人たちと対談をしていく連載です。

何かをつくって販売するためのツールがたくさん生まれ、「つくり手」と呼ばれる人は以前よりもずっと多くなったように感じます。今後もきっとそれは加速していく。そのなかで、“もの”と“社会”のどんな繋がりを大切にしていくのか?欠かしてはならない想いや視点、あるいは願いのようなものについて、皆さんと一緒に考えてみたい。そんな思いから始まりました。

記念すべき最初の対談相手は、未来の自分へ手紙が送れる場所『自由丁』を立ち上げた小山将平さんです。

小山将平(こやま しょうへい)
詩人、自由丁・封灯オーナー 東京都葛飾区出身。東京理科大学理学部物理学科卒、米国ワシントン州ベルビューカレッジIBPプログラム修了。現在は東京・蔵前に、未来の自分へ手紙が送れるお店「自由丁」「封灯」の二店舗を構える傍ら、詩の創作に勤しむ。NHK WORLDをはじめ各種テレビ番組等、メディアへも精力的に出演。著作に詩集『僕とあなたでようやく世界』『旅する僕らの天体観測』等。
SEVEN THREE.ブランドディレクター 尾崎ななみ

セブンスリーについてのnoteはこちら


「もの」の先にある、届けたい想い

尾崎:小山さん、まずはセブンスリーのマガジン第1回目のゲストとして参加していただき、ありがとうございます。

小山:こちらこそ、お声がけいただいてありがとうございます!

尾崎:私は祖父が真珠養殖をしている背景があって真珠屋さんをしているのですが、小山さんは手紙屋さんになるのでしょうか?

小山:そうですね、詩人兼手紙屋さん、ですかね。僕が東京・蔵前で立ち上げた『自由丁』と『詩的喫茶 封灯(ふうとう)』は、1年後の自分に送る手紙を書けるお店です。封灯は、よりゆったりと詩と喫茶メニューを楽しみながら過ごせる空間になっています。

詩的喫茶 封灯の店内。左の壁一面には1年分の手紙を保管する棚が広がっている

尾崎:なぜ手紙屋さんを始めようと思ったのでしょうか?

小山:自分で書いてきた詩やエッセイを読み返したとき、まるで過去の自分からの手紙のようだと感じたことがあって。自分の言葉だからこそ励まされたり、気がラクになったり。その経験が『自由丁』の原点になりました。

ここで皆さんが書く手紙も、自分のためのものづくりだと思っています。

尾崎:なるほど、手紙は自分のためのものづくり……。そうですよね。

小山:実は1年後届いた時よりも、自分のために手紙を書くという行為がすでに人生を少し変わえているのではないか、と感じたりして。そうであれば、嬉しいですね。

尾崎:売るためだけにサービスやものをつくっているわけではないのは、小山さんも私も同じだと感じています。私は“もの”としては主に真珠のジュエリーをつくっていますが、セブンスリーは今でも現役で真珠養殖をしている88歳の祖父の力になりたいという思いから生まれているので、ただ安く素材を仕入れて大量に売って儲けたいという話ではなくて。

社会的な循環としてお金にすることは大事ですが、ジュエリーとしての役割を越えて、想いを届けることができたらこんなに嬉しいことはないなと思っています。

小山:まだお会いしたことはないけれど、メディアやSNSでも登場されているので尾崎さんのおじいちゃんの顔覚えてますよ(笑)。僕も真珠ってあまり触れたことがないし、様々な色と形の真珠が生まれることは知らなかったです。素敵ですよね、金魚真珠。

右:セブンスリーで取り扱うあこや真珠をつくっている尾崎の祖父

尾崎:嬉しいです!一つひとつ形の違う真珠を扱っているので、例えばお客さまから「誰もが違うそれぞれの個性はそのままでいいし、美しいってことに気付かされました」という言葉をいただいたり。
セミオーダーでは、手に取ってくれた方が「わぁ真珠だ素敵、綺麗」というだけではなく、見て触れて何を感じたかで選んでいただいているので、こういうものづくりができていることはすごく幸せだなと思っています。

小山:きっと「嬉しさ」で「正しさ」を包んであげているから、お客さんにちゃんと届いているんだと思います。

自分だけの真珠を見つけるって、ときめくじゃないですか。シーリングスタンプをつくるのも、楽しい。

例えば環境保全のこととか、自己対話の大切さとか、正しいことを直球で伝えようとすると意外と伝わらなかったりするんですけど、「嬉しいこと」が先にあると、「正しい」も伝わってくれたりする。

どんな物語の登場人物になりたい?

小山:何かを始めるにあたって、最近僕は「自分がどんな物語に参加したいか?」という意識がとても大切だと思うようになって。

尾崎:どんな物語に参加したいか?

小山:誰しも人生を物語として捉えることができるけれども、その物語が、社会をより良い方向に向かわせようとしているのか?とか。尾崎さんのように自分のルーツからおじいちゃんの物語があって、自分が加わって新章に突入している、さらにお客さまの手によって物語が繋がっていくのかなと思っていて。

だからこそ、つくったものが受け手の口で語られるものかどうか。「誰かの物語になっていくものづくり」はとても尊い。セブンスリーの真珠は、そういうものなんだと思います。

尾崎:ありがとうございます。未来の自分へ手紙を書く場所をつくっているというのも、まさにたくさんの人の物語に参加していますよね。毎日何かしらの想いを抱えて、自分のために手紙を書きたいと思う人たちが、この場所に集まっているのだから。

小山:本当に。この壁一面、来てくださった皆さんの物語です。

尾崎:すごい景色ですよね……。

小山:世の中にはドラマチックに語られることのない物語が沢山あって、そういう人たちにも素敵な日常があるはずだけど、「みんな頑張ってるよね」って言葉でまとめられてしまったりもする。じゃあ自分は、どんな物語の登場人物として存在していたい?あるいは、どんな人に自分の物語に参加してほしい?ものづくりにおいても、大切な問いだと思っています。

減っていくものづくりと、増えていくものづくり

小山:手紙を届けるサービスは、1年後お客さまの手元に届いてようやく完成するわけですが、真珠もすごく時間を要するものじゃないですか?

尾崎:真珠は、出来るまでに4年くらいです。

小山:4年も!?

尾崎:長いですよね。真珠は、母貝の中に真珠の元となる核を職人が手術のように入れ、その核に真珠層が巻くことでつくられます。

尾崎:まず母貝が手のひらサイズまで育つのに約2年、核を入れてから、真珠ができるまでに1〜2年。全く同じように育てても、自然環境に左右されるので年によって生産量はバラバラで、人間にはコントロールが出来ないんです。

小山:そうか〜、たとえば「今有名になったから一気につくって例年の3倍出荷しよう!」ってことも出来ないんですね。4年後のことを考えてつくり始めなきゃいけないから……。

たしかに今はいろんな人が気軽にものをつくれるようになったかもしれないけど、時間をかけて完成するものづくりは、むしろ減ってるんじゃないかな。簡単にものがつくれるツールは発達しているし、これからもしていくけれど、短縮されるのは結局、短縮でき得る時間だけ。

パワポをAIが自動でつくってくれたり、エクセルの入力を終わらせてくれるって話はあっても、4年かけて育つ真珠を30分で誕生させるって話ではない。1年後の自分へ書いた手紙が、明日届いても意味がないじゃないですか(笑)。

尾崎:間違いないですね(笑)。1年という月日が意味や価値を育ててくれているから。

小山:なんでも時短、簡略化ばかり好まれていくのではなくて、時間をかけてこそ面白くなったり、情緒的価値が生まれるものづくりが、もっともっと増えたら面白いですよね。僕もそういうものづくりが好きだし、大切にしていきたいと思っています。


***


前編では、ものづくりと、先にある人の物語の関係を中心にお話を伺いました。後編では、ブランドがどのように成長してきたか、その過程と社会の繋がりに焦点を当てていきます。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!後編も、楽しんでいただけたら幸いです。

<取材・文章/ほしゆき


自由丁 公式サイト

詩的喫茶 封灯 公式サイト

小山将平さん Instagram:https://www.instagram.com/shoheikoya/


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集