見出し画像

観光協会が「情報発信屋さん」で終わる時代は終わった

長らく観光協会の主な役割は、パンフレットやポスターの制作、観光サイトの更新など「情報発信」にとどまっていた。地域の魅力を外部に伝えることは確かに重要であるが、それだけでは観光客の行動変容や地域経済への還元に直結しにくい。今日、観光を取り巻く環境は大きく変化し、単なる発信だけでは選ばれる地域にはなり得ない。観光協会には「情報発信屋さん」から脱却し、地域づくりのハブとしての新たな役割が強く求められている。本稿では、その転換を考えるために三つの視点を提示したい。

1.「情報発信」から「体験設計」への転換
第一に、観光協会は情報を発信するだけでなく、地域の観光素材を組み合わせて体験プログラムを設計する主体となるべきである。観光客はインターネットやSNSを通じて自ら情報を得る時代であり、発信のみでは差別化できない。重要なのは、素材をどう編集し、旅行者に「体験」として提供できるかという視点だ。例えば、地元ガイドや農家と協力して「農泊+収穫体験+郷土料理」のパッケージを造成すれば、観光客は単なる訪問者から参加者へと変わる。観光協会が体験の編集者となることで、地域観光は次の段階へ進化する。

2.「受け身」から「コーディネーター」への進化
第二に、観光協会は地域内外のステークホルダーを結びつけるコーディネーターとしての機能を担う必要がある。従来のように観光客を受け入れる窓口にとどまらず、行政、事業者、住民、教育機関など多様な主体を巻き込み、協働のプラットフォームを形成することが求められる。例えば、アウトドア事業者と宿泊施設、交通機関をつなぎ合わせることで、広域的なアドベンチャーツーリズムルートを創出することが可能になる。観光協会はそのハブとなり、地域全体で観光を育てる「共創の仕掛け人」として機能すべきである。

3.「成果指標」を意識した観光経営
第三に、観光協会は活動を「数値化」し、成果を検証する観光経営の視点を導入すべきである。かつては観光パンフレットの発行部数やイベント来場者数が成果の目安とされたが、これからは観光消費額、滞在時間、リピーター率、地域雇用など、地域経済や社会的価値に直結する指標が重要となる。観光協会がデータに基づき戦略を立案すれば、行政や事業者との連携も強化され、持続可能な観光地域づくりが実現する。単なる「情報発信屋」から、観光の効果を可視化し、戦略的に運営する「観光経営主体」への進化が求められている。

観光協会が「情報発信屋さん」で終わる時代は確かに終わった。これからは、①観光素材を体験に編集する力、②地域内外の主体を結びつける調整力、③成果を数値化して戦略的に運営する経営力が必要である。観光協会がこれらを実践することで、地域は観光を通じて持続的な発展を遂げることができるだろう。観光協会はもはや「発信者」ではなく、「地域観光をデザインし、推進するエンジン」であり、その存在意義が今まさに問われているのである。

文責:林恒宏(岡山理科大学経営学部教授)


観光庁アドベンチャーツーリズム関連ページはこちら

(一社)吉備オープンイノベーション協会のサイトはこちら

(一社)瀬戸内市観光協会のサイトはこちら

(一社)日本アドベンチャーツーリズム協議会サイトはこちら

いいなと思ったら応援しよう!