心理的安全性の次に来る「組織のウェルビーイング」―― ⑥ あなたの会社は、「組織づくり」に投資していますか?
採用コストは、毎年きちんと予算化されます。
では、組織を育てるための予算は、どうでしょうか。
たとえば、
・離職率が高まっている
・管理職が多忙になりすぎている
・人材育成が進まない
・新しいアイデアが生まれない
など、組織にはさまざまな課題があります。
しかし、
「組織そのものを育てる」という投資は、
十分に議論されているでしょうか。
シリーズのおさらい
このシリーズ、
「心理的安全性の次に来る『組織のウェルビーイング』」
でお伝えしてきたことを、簡単に振り返ってみます。
① みんなで広く深く考えるチーム思考
簡単には答えの出ない、
もやもやした適応課題をチームで考える。
② 効果的なチーム思考のはじめ方
プロセスを見える化して、
課題解決について一緒に対話する。
③ ワイガヤ対話からの経験学習
良いコミュニケーションを、
実践と振り返りによる経験学習につなげる。
④ 計画の見える化と先回りの問題解決
「段取り八分」とは、計画を一人で作り込むことではなく、
見える化して十分に対話すること。
⑤ 自律的革新力と事業継続性
組織のウェルビーイングとは、
良い経験と学習が生まれ続けるプロセス。
各回でご紹介した進め方は、
それぞれ別々のメソッドではありません。
これらは一つの流れとしてつながり、
組織のウェルビーイングを支える、
一連の組織開発プロセスになっています。
階層ごとに異なる組織のウェルビーイング
組織のウェルビーイングとは、
そこで働く人たちが感じる、組織の状態です。
ウェルビーイングは一般に、
身体的、精神的、社会的に“いい状態”であると説明されます。
ただし、何を“いい状態”と感じるかは、立場によって異なります。

図のように
・経営には経営の「いい状態」
・事業責任者には事業責任者の「いい状態」
・管理職には管理職の「いい状態」
・現場には現場の「いい状態」
それぞれ、“いい状態”の意味が違います。
例えば経営者にとっては、
事業が成長し、将来への見通しを持てる状態かもしれません。
管理職にとっては、
メンバーが主体的に動き、
自分一人で抱え込まなくても仕事が進む状態かもしれません。
現場のメンバーにとっては、
安心して意見を言え、成果や成長を実感できる状態かもしれません。
だから、組織のウェルビーイングを考えるとき、
一つの制度、
一つの研修、
一つのコミュニケーション施策だけで、
組織全体のプロセスを変えることは難しいのです。
心理的安全性は出発点、ゴールではない
心理的安全性は、関係の質を整える重要な土台です。
良い関係があるから、率直に話せる。
率直に話せるから、みんなで深く考えられる。
深く考えられるから、より良い行動を選べる。
そして、その行動が成果や成長につながっていきます。
心理的安全性は、この循環を始めるための必要条件です。
しかし、それだけで十分ではありません。
その先には、
「関係の質」から「思考の質」へ、
「思考の質」から「行動の質」へ、
そして「結果の質」へと進む、
4段階のプロセスがあると考えています。

組織づくりへの投資
現場のメンバーから経営者まで、
それぞれが“いい感じ”と思える組織、
ウェルビーイングな組織をつくるうえで、
取り組むべき課題はたくさんあります。
例えば
・離職を減らしたい
・人材を育てたい
・管理職を育てたい
・次世代リーダーを育成したい
・イノベーションを生み出したい
・部門間連携を強くしたい
これらの課題は、一見バラバラに見えます。
でもそこには、共通点があるのです。
どれも、人と人との関係や仕事の進め方、
つまり「組織のプロセス」を育てる課題です。
だから私は、
「組織づくりへの投資」
という考え方が重要だと思っています。
「定着」は、その代表例
企業では、離職が増えると、
・採用費
・求人広告
・人材紹介料
などに予算を付けます。
これらは、もちろん必要です。
しかし、その前に、
人が辞めにくい組織を育てるための投資は、十分でしょうか。
提案したいのは、「定着への投資」です。
ここでいう定着とは、単に辞めないことではありません。
人が働き続けながら、
成果や成長を実感できる状態をつくることです。
その投資は、
・課題や仕事の進め方を見える化し、対話する時間
・仕事を振り返り、経験から学ぶ時間
・計画や課題解決について、一緒に考える時間
つまりこれは、「時間への投資」です。
また、その時間を質の高い対話や学習につなげるためには、
プロセスを設計し、継続的に支援する専門性も必要です。
社内だけで進めることが難しい場合には、
組織開発を支援できるコーチやファシリテーターなど、
外部の専門性を活用することも選択肢になります。
投資対効果を測りにくい。それでも投資判断する
採用費はその効果を比較的測りやすいです。
一方、組織づくりへの投資は、
成果を数字だけで判断しにくいという難しさがあります。
もちろん、離職率やエンゲージメント、管理職の行動変化など、
一定の指標を置くことはできます。
ただし、一つの施策と成果の因果関係を、
明確に切り分けることは簡単ではありません。
しかし、経営とは、
そもそも不確実な未来に対して投資判断を行うことです。
組織づくりも同じ。
成果が測りにくいから投資しないのではなく、
何を成果とするのかを定め、
途中の変化を確認しながら投資を続ける。
そこに、ウェルビーイング経営の重要な意思決定があります。
まとめ
心理的安全性は、とても大切です。
でも、それだけでは組織は変わりません。
本当に必要なのは、
・人が育ち
・チームが育ち
・管理職が育ち
・組織が学び続ける
そのプロセスを、時間をかけて計画的に回し続けることです。
組織づくりは、一つのメソッドを導入すれば、
すぐに成果が出るものではありません。
対話し、試し、振り返り、また試す。
その循環を粘り強く続ける必要があります。
それこそが、ウェルビーイングな組織への投資です。
私は、その意思決定こそが
「ウェルビーイング経営の第一歩」
だと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
皆さんの会社では、
どのような「組織づくりへの投資」を行っていますか。
ご感想や実践例など、ぜひコメントで教えてください。
