全社員向け/小さな配慮と空気づくりに気づく/コラム素材/社内報掲載可(約1800字)
使用シーン
・「小さな配慮が職場の空気を整える」という気づきを伝える社内報コラムとして
・新年度や異動時期の会報・掲示物で、“一緒に働く感覚”をやわらかく共有する読み物として
・求人誌や社内ポータルで、「人間関係の温度感」を自然に伝えるコンテンツとして
朝のエレベーターで交わされる、ほんの数秒の気遣い。
名前も知らない相手との小さなやり取りが、不思議と一日の空気をやわらかくしてくれることがあります。
忙しい毎日の中で、“同じ空間を心地よく使う感覚”を描いた短編コラムです。
朝のエレベーターは、まだ一日の輪郭がやわらかい時間に動き出す。
一階で扉が開くと、誰からともなく小さな会釈が交わされ、言葉の代わりに静かな空気が乗り込んでくる。
冬の朝はコートの擦れる音が重なり、雨の日は傘のしずくが床に小さな輪をつくる。
私はこの時間がけっこう好きだ。
もちろん、満員電車の延長みたいにぎゅうぎゅうの日は、「好き」とか言っている余裕はない。知らない人のバッグの金具が、なぜかずっと私の肘に当たり続ける日もある。
朝から人体に“カチ、カチ”と小刻みなダメージを受けると、人はわりと簡単に無になる。
それでも、エレベーターには不思議な連帯感がある。
階数ボタンの前に立った人が、後ろを振り返って軽くうなずく。
押しましょうか、の合図だ。
私は毎回、小さく会釈を返しながら、「この短時間だけ結成されるチーム感、なんなんだろう」と思う。
ある朝、閉まりかけた扉の外から、バタバタッと急ぐ足音がした。すると前にいた男性が、さっと手を伸ばして扉を押さえた。
駆け込んできた女性が息を切らしながら、
「すみません、助かりました」
と言うと、その男性は、
「いえ、今日たぶん私、これしか社会貢献してないので」
と真顔で言った。
私は危うく吹き出しそうになった。
朝のエレベーターで突然の自虐の切れ味が鋭い。
でも、その場の空気は少しやわらかくなった。
知らない人同士なのに、一瞬だけ「同じ朝をやってる仲間」みたいになる。
名前も肩書きも知らない。
それでも毎朝、同じ箱の中で数十秒を共有していると、なんとなく“顔見知り未満”みたいな感覚が育っていく。
私は勝手に、「いつも端で小さく会釈する人」とか、「絶対に七階で降りる人」とか、心の中であだ名をつけている。
以前、その“七階で降りる人”が珍しく十階まで乗っていたことがあった。
私は内心、「今日はどうした」とざわついた。
完全に野生動物の観察である。
すると隣の人も、ちらっと七階の表示を見ていた。
たぶん同じことを思っていたのだろう。
人間は意外と、静かな共通認識で生きている。
混み合う朝、誰かが半歩だけ体をずらすと、もう一人分の空間が生まれる。
その動きは、示し合わせたわけでもないのに自然で、少しだけ見事だ。
言葉がないぶん、互いの気配に耳を澄ませているのかもしれない。
「お先にどうぞ」と言う代わりに扉を押さえる手。
降りる人の背中に、少しだけ道をあける足の動き。
そんな小さな仕草が、朝の空気をゆっくり整えていく。
ここから先は有料記事です。
この記事は、非営利の会報・社内報などに
そのまま掲載してご利用いただけます(クレジット表記のみでOKです)。
「使えそうだな」と思っていただけたら、
応援の意味も込めて、手に取っていただけると嬉しいです。
ここから先は
¥ 980
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
