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翻訳者読みという、新たな楽しみを見つけた|完璧主義とほどよく付き合う

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『その女アレックス』をはじめとするヴェルーヴェン警部シリーズがおもしろかったので、ピエール・ルメートルの別作品を読んでみることにした。

ここで書名は出さないが、口コミが良かったので、期待して読みはじめた。しかし、ものの数行で違和感を覚える。同じ作者のはずなのに、文体が別人のように違っている。

もしやと思って表紙を見てみると、翻訳者が違っていた。

そのときの僕は、シリーズを連続して読んだあとで、ヴェルーヴェン警部の世界観にどっぷりと浸かっていた。

だから余計に、違和感が際立ったのかもしれない。結局そのときは、それ以上、本を読み進めることができなかった。

* * *

僕は普段、まったく洋書を読まない。手に取った本の著者名が日本人でないだけで、なんとなく読むのを敬遠してしまうようなところがある。

だから翻訳者を意識する機会もなく、本のおもしろさを決めるのはあくまで原作者であって、翻訳者ではないと思っていた。

そんな僕にとって、この出来事はかなり衝撃的だった。

たとえ同じ原作者であっても、翻訳者が違えば、まるで別の人が書いたような作品になることがある。当たり前のように読んでいた日本語は、誰かが丁寧に選んだ言葉だったんだと気づいた。

僕は、ヴェルーヴェン警部シリーズの翻訳者である橘明美さんのファンになった。著者読みならぬ、翻訳者読みのはじまりだ。橘さんは小説だけでなく教養書も翻訳していて、早速気になるものを予約した。




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