みんな大好き、サイゼリヤ!値上げせずになぜ絶好調なのか?
どーも、セオドアアカデミーです。
「サイゼリヤだけ値上げしてない」SNSで話題になったこのフレーズ、目にした方も多いのではないでしょうか。
他の外食チェーンが軒並み価格改定に踏み切る中、サイゼリヤは価格を据え置いたまま、2026年8月期第1四半期で連結売上高702.8億円(前年比114.7%)、営業利益46.6億円(同118.9%)という圧倒的な好決算を叩き出しました。
「値上げしないで利益が出るわけがない」そう思った方も少なくないはずです。実際、原材料費は上がり、円安も進み、人件費も高騰している。
それなのに、なぜ、サイゼリヤは値上げせずに好調を維持できているのか。


原価率は悪化しても、利益率が改善する「矛盾」の正体
まず注目すべきは、利益構造の劇的な変化です。国内の営業利益は前年同期の5.1億円から14.5億円へと約2.8倍(284.7%増)に急増しました。
しかし、ここに一つの矛盾があります。実は、売上原価率は46.2%から46.5%へと0.3ポイント悪化しているのです。
つまり、「原材料費は上がっているが、それでも利益は伸びている」という構造が成立している。
このカラクリを解くカギは、販管費率にあります。販管費率は52.5%から50.4%へと2.1ポイントも改善しました。
固定費レバレッジの威力
これは典型的な「固定費レバレッジ」の効果です。
家賃や人件費などの固定費は、売上が増えても大きく変わりません。サイゼリヤは値上げを我慢し、客数を増やすことでトップライン(売上)を伸ばし、固定費率を押し下げることで利益を捻出しました。
国内の客数は前年比116.5%(5,510万人)。他社が値上げで客離れを懸念する中、この伸び率は異常値と言えます。客単価は前年比102.0%(853円)と微増にとどまっていることからも、「価格で稼いだわけではない」ことが明白です。
営業利益の増減要因を見ると、国内では原価面で米・レタス・チーズ等の悪化や物流費増があったものの、メニューミックス効果でプラス4.7億円、そして販管費の改善で10.6億円のプラスを計上しています。まさに「損して得取れ」を財務的に証明した形です。

「値上げしない」ことが最強のブランド資産になる時代
マーケティングの視点から見ると、今のサイゼリヤのポジショニングは競合他社にとって脅威以外の何物でもありません。
消費者心理の変化を捉えた戦略
インフレで消費者の財布の紐が固くなる中、「サイゼリヤに行けば、以前と同じ価格で食べられる」という「安心感」自体が最強のブランド・エクイティ(資産)になっています。
これは、経済学でいう「参照価格」の心理効果です。他店が値上げした結果、消費者の中に「外食の適正価格」の基準値が上がっていきます。その中で、サイゼリヤだけが「変わらない価格」を維持することで、相対的に「お得感」が増幅されるのです。
広告宣伝費ゼロのプロモーション効果
興味深いのは、サイゼリヤが大規模な広告宣伝を行っていないにもかかわらず、「値上げしていない」という事実そのものがSNS等で拡散され、最強のプロモーションとして機能している点です。
これは、マーケティング用語で言えば「アーンドメディア(獲得メディア)」の勝利です。企業が費用を払って発信する「ペイドメディア」ではなく、生活者が自発的に拡散する「アーンドメディア」こそが、今の時代に最も信頼される情報源なのです。
ダウントレード需要の受け皿
また、外食業界全体で「ダウントレード(より低価格な選択肢へのシフト)」が進む中、サイゼリヤは節約志向の受け皿を最も信頼できる形で取り切る設計になっています。
値上げが続くと、消費者は「外食回数を減らす」より先に「外食の単価を下げる」行動に出やすい傾向があります。その時に選ばれるのは、クーポン頼みの一時的安さではなく、「いつ行っても安い」という確実性、つまりEDLP(Every Day Low Price)戦略なのです。
利益を作っているのは"厨房"ではなく「仕組み」
販管費率が改善して利益率が上がっている時点で、現場では何かが変わっています。決算資料には、QRコード+顧客端末の注文方式が2025年12月末で全店導入完了と明記されています。
デジタル化による人件費の構造改革
これが何を意味するかというと、外食の最大コストである「人件費」を、値上げではなく生産性で回収している可能性が高い、ということです。
従来の飲食店では、注文を取る→厨房に伝える→料理を運ぶ→会計をする、という一連の流れに多くの人手が必要でした。しかし、注文のデジタル化により、「注文を取る」「厨房に伝える」という工程が自動化され、スタッフは「料理を運ぶ」「会計をする」に集中できるようになります。
今回の概要まとめ図
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