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秘書なし議員のAI活用術|まず任せる下書き仕事ベスト5

会派の控室で、若手の議員がこう言いました。

「これ、AIに下書きさせたんですよ」

見せてくれた活動報告は、A4の裏表がきれいに埋まっている。「15分でできました」と、彼は笑いました。

その夜、帰ってから自分のスマートフォンにも同じアプリを入れてみました。

入力欄が、真っ白に光っている。カーソルだけが点滅している。

……何を打てばいいのか、分からない。

3回打って、3回消しました。

結局アプリを閉じ、いつもどおりWordを開いて、活動報告の1行目から手で書き始める。時計は10時半。書き終わったのは、日付が変わったあとでした。

「なんでも聞いてください」が、いちばん困る

検索なら、まだ打てます。

「◯◯市 空き家 補助金」と入れれば、それらしいページが並ぶ。でもAIは、「なんでも聞いてください」と言ってくる。

この「なんでも」が、いちばん困るのです。

一度だけ、ちゃんと試したことがありました。

「地域の課題について教えてください」

返ってきたのは、少子高齢化と担い手不足と空き家問題を並べた、どこかの教科書のような文章。うちの市の話は、1行もない。

「ああ、こういうものか」と思いました。それきり、アプリを開いていません。

控室でもう一度、「どう使うんですか」と聞ければよかったのでしょう。でも、聞けなかった。

当選3期目にもなって、若手に一から教わるのは、正直ばつが悪い。「勉強しておきます」と笑って流して、その話は終わりました。

そして土曜は3つの行事、日曜は総会。月曜の朝までに後援会報の原稿を出さないと、印刷が間に合わない。

秘書はいません。事務員もいません。

書けるのは自分だけで、書く時間は夜しか残っていない。

便利らしいものが、目の前にある。使えていないのは、自分だけかもしれない。

その居心地の悪さを抱えたまま、今夜もWordを開く——。この繰り返しが、地味に効いてきます。

使えないのは、あなたがITに弱いからではない

ここで、線を引かせてください。

AIが使えないのは、機械に弱いからでも、勉強が足りないからでもありません。

つまずいた原因の一つは、最初に試した仕事が、AIに任せるには難しすぎたことです。

「地域の課題を教えて」は、前提情報が足りないうえ、正解が一つに決まらない問いです。

AIは、あなたの自治体の実情も、現場で聞いた住民の声も、これまでの議会で交わされたやり取りも、自動では知りません。

しかも、問われているのは政策の中身そのものです。何を課題として取り上げ、どの順番で解決しようとするのか。議員が簡単には妥協できない領域です。

そこで期待した答えが返ってこず、「AIは使えない」と結論を出してしまうのは、無理もありません。

順番が逆だったのです。

AIに最初に渡すべきなのは、判断を委ねる仕事ではありません。手元にある素材を並べ替えたり、言い回しの案を出したりする仕事です。

AIに任せやすい仕事には、次の3つの条件があります。

  1. 素材と目的が、自分の手元にある

  2. 正解が一つに決まらず、最後に自分で編集できる

  3. 公開や判断の前に、自分の目で確認して誤りを止められる

活動報告の文章、SNSの投稿案、挨拶の言い回しなどは、この条件を満たしやすい仕事です。

つまり、原則はこれです。

判断は渡さない。下書きだけ任せる。

5つ全部を、今日から始める必要はありません。最初の一つは、活動報告の下書きだけで十分です。

議員向けの道具なら、そもそも「何を打つか」を考えなくていい

とはいえ、いちばん最初の関門は、「白い入力欄に何を打つか」でした。

原則が分かっても、毎回その一文をひねり出すのは、それ自体がひと仕事です。

私たちがつくっている「センタイ」は、地方議員・候補予定者のためのクラウド上の仕事場です。

名簿の管理、住民相談の記録、原稿づくり、選挙準備までを一つにまとめておく道具だと思ってください。

汎用のAIサービスとの違いは、地方議員の仕事に合わせて、あらかじめ使い方の形が用意されていることです。

活動内容や政策案をもとに、活動報告、SNS投稿、チラシなどの下書きをつくれます。「どう頼めばよいか」を、毎回ゼロから考える必要がありません。

相談記録をAIで要約するときは、氏名・住所・電話番号をAIに送る前に自動で伏せ字に置き換える設計です。

もちろん、出てくるのはあくまで下書きです。最後に自分の言葉へ直し、事実を確認するところは、どの道具を使っても変わりません。

センタイの原稿づくり機能を見る

手持ちのAIで始めるなら|まず任せる下書き仕事ベスト5

道具を増やさず、いまスマートフォンに入っているAIから始めたい方へ。

失敗しにくい順に、5つ並べます。頼み方の文例は、そのまま打ち込んで構いません。

どの文例にも、「書かれていない事実は足さない」という条件を入れています。

1位|活動報告の下書き

これが最初の一本に向いているのは、素材がすでに自分の中にあるからです。

しかも、毎月のように発生する仕事です。箇条書きの事実を文章に整えるところだけでもAIに任せられれば、白紙から書き始める負担を減らせます。

渡す素材は、箇条書き3行でも構いません。

私は地方議員です。次の3つの出来事を、後援会向けの活動報告として400字程度でまとめてください。硬すぎず、自慢に聞こえない調子にしてください。書かれていない事実は足さず、不明な点は推測しないでください。

・◯◯地区の側溝清掃について担当課に要望し、9月中に実施する予定との  回答があった
・6月議会で子どもの医療費助成について質問した
・地区の防災訓練に参加した

コツは、出てきた文章をそのまま公開しないことです。

一文だけでもよいので、自分の記憶や実感を加えます。

たとえば、

「側溝の水が跳ねて困る、という声を最初に聞いたのは3月でした」

という一行が入るだけで、文章はあなたのものになります。

最後に、日付、地区名、担当課名、実施状況が正しいかを確認してください。

2位|SNSの投稿文

一つの出来事を、AIは複数の切り口に分けられます。

「投稿するネタがない」のではなく、出来事のどこを切り出せばよいか思いついていないだけ、ということもあります。

次の出来事を、切り口を変えて3本のSNS投稿案にしてください。1本140字以内。宣伝くさくならないようにし、書かれていない事実や感想は足さないでください。

防災訓練なら、たとえば次のように分けられます。

  • 実際に参加して気づいたこと

  • 住民から聞いた声

  • 次の議会で確認したいこと

同じ一日から、3本の投稿案ができます。

ただし、AIに「住民の声」を創作させてはいけません。発言を引用するときは、実際に聞いた内容だけを自分で入力してください。

3位|挨拶文・祝辞

ここには、効くコツが一つあります。

過去の自分の挨拶を渡して、「この書き方に合わせて」と頼むことです。

使うのは、公開済みで、個人情報や未公開情報を含まない原稿にしてください。

以下は、私が昨年の敬老会で話した挨拶です。

(過去の原稿を貼る) この文章の長さ、言葉遣い、話すテンポに合わせて、今回は地区消防団の出初式に向けた挨拶の下書きを作ってください。行事名や事実関係は、私が入力した内容だけを使ってください。

いきなりゼロから書かせると、どこかで聞いたような借り物の祝辞になりがちです。

自分の書き方を先に渡せば、出てくる文章が自分の声に近づきます。この方法は、活動報告やSNSにも応用できます。

4位|議会資料・議事メモの要約

分厚い計画書や委員会資料を読むとき、最初から最後まで同じ密度で読むのは大変です。

ここでAIは、「どこを重点的に読むべきか」を探す道案内として使えます。

この資料から、次の4点を箇条書きで抜き出してください。

・決まったこと
・出てくる重要な数字
・次の会議までの宿題
・それぞれが書かれているページ
資料に書かれていない内容は推測せず、「記載なし」としてください。

注意点を、正直に書きます。

AIの要約だけを読んで議場に立つのは危険です。

質問で使う数字、制度名、固有名詞、ページ番号は、必ず原本に戻って確かめてください。

要約は、原本の代わりではありません。どこを読むべきかを教えてくれる地図です。

また、汎用のAIサービスへ資料をアップロードするときは、公開資料か、所属組織のルール上入力が認められた資料に限ってください。未公開資料や個人情報を含む資料は、利用サービスのデータ利用条件を確認できないまま入力しないことが原則です。

5位|チラシの見出し案

ゼロから考えると30分かかるのに、候補から選ぶだけなら3分で終わる。

それが、見出しづくりです。

次の実績を伝えるチラシの見出しを10案出してください。
・3案は、私が入力した数字を使う
・3案は、住民目線の疑問形にする
・残りは、短く端的な表現にする 入力していない数字や住民の発言は作らないでください。

10案のうち、8案がぴんと来なくても構いません。

1案でも「これだ」と思えるものがあれば、ゼロから考える30分を取り戻せています。

つまずきやすいのは、この3つ

1.固有名詞・数字・出典

生成AIは、分からないことに対して、必ず「分かりません」と答えるわけではありません。

部署名をそれらしく書いたり、存在しない条例名をつくったり、数字を取り違えたりすることがあります。文章が自然であるほど、間違いに気づきにくくなります。

次の項目が出てきたら、必ず一次資料へ戻って確認してください。

  • 人名

  • 部署名

  • 条例・制度名

  • 金額

  • 年度・日付

  • 統計や割合

  • 引用や出典

原稿の多くをAIに任せても、この確認だけは手放せません。

2.個人情報・未公開情報

氏名、住所、電話番号を消せば、それだけで安全とは限りません。

小さな地域では、地区名、年齢、家族構成、病歴、相談内容などを組み合わせることで、本人が分かってしまうことがあります。

単に「住民A」と置き換えただけでは、匿名化として不十分な場合もあります。

汎用のAIへ相談内容を渡すときは、本人を特定できる情報を必要最小限まで削り、利用サービスの規約、プライバシーポリシー、学習利用の設定を確認してください。

判断がつかない場合は、入力しないのが安全です。

3.政策判断

何を課題として取り上げるのか。限られた予算を、どこへ優先的に配分するのか。誰の声を、議会で取り上げるのか。

そこは、AIに肩代わりさせる仕事ではありません。

AIは、論点を整理したり、複数案を並べたりする補助には使えます。しかし、最終的にどの立場を選ぶかは、議員本人が決め、説明する必要があります。

下書きは任せる。判断は渡さない。

最初に引いた線を、最後まで守ってください。

よくある質問

Q.無料版で足りますか?

活動報告やSNSの短い下書きなら、まず無料枠から試せるサービスもあります。

ただし、利用回数、ファイルの読み込み、処理できる文章量、入力データの扱いなどは、サービスやプラン、設定によって異なります。

「無料か有料か」だけでなく、業務利用が認められているか、入力内容が学習に使われる設定になっていないか、公式の利用規約とプライバシーポリシーを確認してください。

まずは個人情報や未公開情報を含まない短い文章で試し、必要な機能が分かってから有料版を検討すれば十分です。

Q.AIを使ったと知られたら、まずいでしょうか?

大切なのは、AIを使ったかどうかだけではなく、公開した内容に誰が責任を持つかです。

議会、会派、自治体、掲載媒体などにAI利用のルールや表示基準がある場合は、それに従ってください。

公開前に事実、表現、引用、権利関係を確認し、内容について自分で説明できる状態にしてから出すことが重要です。

Q.一般質問の原稿も任せてよいですか?

たたき台や論点整理には使えます。

ただし、質問テーマの選択、根拠の確認、答弁を想定した構成、再質問の判断は自分で行ってください。

特に、法令、条例、予算額、統計、過去の答弁を使う場合は、必ず自治体の公式資料や議事録などの一次資料で確認します。

AIの文章が自然であっても、根拠まで正しいとは限りません。

公開前の30秒チェック

AIでつくった下書きを公開する前に、次の3点だけは確認してください。

  • 人名、部署名、制度名、金額、年度は正しいか

  • 個人情報や未公開情報が残っていないか

  • 内容について、自分の言葉で説明できるか

この3つに迷いがある場合は、そのまま公開しないことです。

生成AIの業務利用に関するルールは、議会、会派、自治体、利用サービス、契約プランによって異なります。個人情報や未公開資料を扱う前に、それぞれの利用規約、プライバシーポリシー、情報セキュリティルールを確認してください。

出典・確認先

※デジタル庁のガイドラインは政府機関向けのものです。地方議員に直接適用される一律のルールとしてではなく、生成AIの誤情報、個人情報、出力確認に関する実務上の参考として確認しています。


白い入力欄と向き合う時間そのものをなくしたい方は、地方議員の仕事に形を合わせた道具を一度のぞいてみてください。

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